田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

バラが咲いた/麻屋与志夫

2010-05-22 10:38:07 | Weblog
バラが咲いた。

5月22日 土曜日
朝は野鳥の声でめざめる。
もっともけさは真夜中におきたので夜ガラスと蝙蝠の羽ばたきをきいた。
ジャズ、ラウンドミドナイトをきく。
そういえば、
ブラッドベリに「とうに真夜中を過ぎて」? あれ、題がまちがっているかな。
あの短編の内容は――とおもいだそうとした。
ダメだ。
やはりいくらか、いや、だいぶ記憶が曖昧になっているのだろうか。
などと悩みながら「さすらいの塾講師」更新する。

18日(火)には閲覧数が1469PVもあった。
うれしかったな。
わたしのように忘れられてしまった作家にとっては、
読んでいただけるだけでも涙がこぼれるほどうれしい。
面白い作品、
ページを次々とめくりたくなるような作品がかけたらな。
としみじみ思う。
こんかいの作品の舞台は新宿。
よくしりぬいている場所だ。
ただしここ数年はでかけていない。
時代的な誤差があったらごめんなさい。
そのうちゆっくりと取材をかねて夜の歌舞伎町を彷徨したいものだ。

夜明けに庭におりたった。
カミサンがこの一月体調をくずしている。
バラの世話を手伝ったので、
いままでになく開花がまちどおしかった。
ツルバラのアイスバーグが初めて咲いた。
ディンテベスもいっきに咲きだした。
バラにかこまれて朝日を拝んだ。
吸血鬼作家にはバラがよく似合う。
朝の光はまぶしすぎる。
おもえば、いつも夜かいている。
吸血鬼のはなしをかくには夜がふさわしい。
でもたまに拝んだ朝の光のさわやかなこと。
からだが灰にならなくてよかった。


カミサンは家の西の部屋を切って庭にしたいらしい。
庭樹もきって日当たりのいい庭にしたいわ、とはりきっている。
一生……日蔭者のような作家の妻で過ごしてきたカミサンの希望だ。

わたしはまだ完全復帰をあきらめてはいない。
ささやかでもいい。カミサンにバラ園をプレゼントしたい。
年老いた作家の、忘れられた作家の、大きすぎる望みなのだろうか。
カミサンの寝室でめざましがなっている。
ミマーさんのお目覚めの時間です。

        
        ディンティ・ベス
         


        リルケのバラ
         

         

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死なないヤッラ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-22 02:20:09 | Weblog
死なないヤッラ


17

影のような黒服の男たちが、
兇暴な顔でみがまえた。
両眼が赤くさらにひかりだした。
こいつらには人間らしさはない。
ひとの生き血をすっているものだ。
「おれたちがこの歌舞伎町を、
新宿を、
日本を、
制覇するには夢道流のものが邪魔だとわかったのだ。
おれたちを群衆の中から識別できる。
おれたちの悪行を世間にしらせる。
おれたちに反抗して、
おれたちを滅ぼそうとする。
そういうことはしてもらいたくない」
芝原がせせら笑う。

影から巨漢がすすみでた。
赤く光る目だけではない。
肌も爬虫類のようにぬめり、
青黒くなっている。
分厚い唇からはヨダレをたらしている。
乱杭歯をむいてニタニタわらっている。
どうしてこいつらの笑い顔はみにくいのだ。
かくしている獣の飢えが、
むきだしになっている。
おそつてくるな。
翔子をかばった。
純は後手必勝の夢道流の掟をやぶった。
「愛する者を守るためです。
流派の始祖。夢道斉さま。
ゆるしてください」とこころで叫んだ。
純が巨漢の脇をはしりぬけた。
なにがおきたかわからなかったろう。
脇差は鞘におさまったままだ。
巨漢の胴から緑の血がふきあがった。
鬼切丸が音もなくぬかれた。
そして鞘に納められた。
一瞬の技ださった。

「まだ、まだ……」
巨漢がまだニタニタ笑っている。
さっと傷口を手でなであげた。
血の奔流はたちどころに止まっている。
止血テープでもはったようだ。
その回復力の敏速性におどろいた。
純はとんでもないヤッラを敵にまわしている。
 クッククク。くっくくく。巨漢がたからかに哄笑している。
「こちらからいくぞ」
 巨漢が動いた。



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