田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

大谷の鬼族/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-17 15:09:29 | Weblog
大谷の鬼族

13

敵もふたりだった。
純ははやくも「鬼切丸」ぬきはなった。
「まて。それは」
後ろからせまってきた男が手を上げた。
なにももっていない。
手を開いた。
なにも武器はもっていないと表示している。
前を遮った男が並ぶ。
ふたりとも同じような顔色だ。
形も似ている。
顔の肉が落ち、頬骨が高い。
ガラスの玉をはめ込んだような眼球は薄赤く、
それでいて金色に光っている。
「あんたら、夢道流の使い手か!?」
「それがどうしたの。わたしは練馬夢道流の村上翔子」
「ぼくは野州夢道流。泉純」
「ならば、われらは争いあう敵ではない」
「なにものだ」
「われらは鬼。日本古来の鬼族。
村上さん。泉さん。
あなたたちをおそっているのはルーマニヤの吸血鬼」
純は刀を鞘に納めた。
鬼はほっとしたように踊り場のベンチに腰をおとした。
目の前にトイレの入り口がみえている。
「ここではなしあっていても、人目にはふれない」
ふたりはおおきな溜息をついた。
「おれたちはついていた。
おふたりにこうして会えるとはおもわなかった。
わたしたちは大谷の赤羽一族の者です。
もちろん夜の一族、吸血鬼と呼ぶ者もいますが。
ルーマニヤの吸血鬼が片腕を斬りおとされたときいて、
こうしてその凄腕のエクスキューターを探していたのです。
ついていたな、直人。おれは兄の直也です」
ふたりはごくあたりまえの人間になっている。
「くわしいことを知りたい」
純がいった。
「歌舞伎町のマンモス交番に百目鬼という刑事がいます。
そのひとも処刑人です。その刑事にきいてください」


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コメント
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