田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

群衆の中の吸血鬼/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-18 15:49:30 | Weblog
群衆の中の吸血鬼


14

百目鬼を交番に訪ねた。
「百目鬼さんは、はパトロールにでかけている」
という交番勤務の巡査の返事だった。
名前をきかれた。
「ぼくたち百目鬼さんとは面識はないから」
と名乗らないで、またきます。と立ち去る。
ふたりは、あやしむ巡査の視線を無視した。
純は翔子を案内した。
翔子の父、勝則と別れた場所に。
「ここではじめて戦った。
先生はぼくにこの鬼切丸をわたした。
素手で戦って先生は傷ついた。
でも家に帰ればその場所を吸血鬼にしられてしまう。それでここで別れた」
「そのあとはだな」
おどろいて、ふたりはふりかえった。
「わるい。わるい。百目鬼だ。
わたしを訪ねてきた若者がいるというので追いかけてきた」

「村上翔子です」
「泉純です」
「翔子ちゃんか。赤ちゃんのときいちど、だっこしたことがある」
「父とはどこで」
「練馬夢道流の道場で互いに鍛錬した同門だ」

そば屋の二階に案内された。
そこで百目鬼が話しだした。
「お父さんは元気に生きている。
そのうち会えるだろう。時機が来ればでてくるさ。
あの日、あそこに倒れていた勝則はおれが助けた。
おれはパトロールしていて勝則をみつけた。
あのころから、ルーマニヤの吸血鬼がこの歌舞伎町をうろつきだした。
いままででは、かんがえられないような凶悪な事件がおきるようになった。
おれたちは外来種の吸血鬼と戦うことを誓いあった。
そのための夢道流だ。
夢道流は人外の者との戦うための剣だ。対鬼系統の技がある」
「父はいまどこに」
「必ず会える。いますこし待ってくれ。
あのころからこの歌舞伎町は外からの侵攻にさらされている」

二階の障子を細めにあけた。
「ふたりしも見てくれ。
バングラディッシュ、パキスタンの西南アジア系。
イランなどのアラブ系。
イスラエル、フィリピン、タイ、台湾、コーリアン、コロンビア、ブラジル。
いまやここは人種のルツボだ。
そしてルーマニヤから吸血鬼まで渡来してきた」

たしかに吸血鬼が平然と人ゴミにまぎれている。



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