田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

藤の花/カミサンの立ち話  麻屋与志夫

2010-05-05 06:08:40 | Weblog
5月4日 火曜日

藤の花が咲きだした。
花房が咲きながら垂れ下がって大きくなっていく。
咲いてからさらにのびて大きな花房になるところがおもしろい。
五月の薫風にふかれてゆらゆらゆれている。

カミサンと買いものにでかける。
トワイライトの中をわが家にもどってきたときに、
鹿沼石(深岩石)の塀の上で咲き誇っている藤の花をみる。
「草臥れて宿かる頃や藤の花」芭蕉の句がいつもこの季節には話題になる。
人間もこの歳まで生きてくると、
年々歳々あまりかわり映えのしない暮らし方をしているものだ。
もっともあまり変化がないのが、
日々是好日、
と平穏でいいのかもしれない。

富山奏校注の芭蕉文集で学んだ。
「頃や」の「や」に、
疲労と旅愁とが極限に達した嘆きが込められ、
「藤の花」は、そうした心情の形象化としての意味を持つ、とある。
たそがれ時の藤の花に託して心情を表白する例は、
古来の歌文に見られる。と解説はつづく。
俳句での「や」にこめる思いの深さ、これほどにはわたしには「や」を理解できない。
だから散文を書いているのだろうな。
これからでも遅くはない。
俳句を学ぼうかな。

そうしたわたしの心情もしらず……薄暮の中で藤の花房がゆれていた。

         

                

福島の帰途、交通渋滞にまきこまれた息子夫妻が夜やってきた。
このまま東京に戻るのは少し無理とのことだった。

月の光で藤の花を見る。

         

塀の外、藤の花の下で、カミサンが、お腹が大きくなりかけている嫁と立ち話をしている。
なにを話しているのだろうか。
カミサンの華やいだうれしそうな声だけがしていた。


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コメント
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