田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ずっと好きだったよ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-24 13:35:20 | Weblog
ずっと好きだったよ


19

いまわたしは吸血鬼がチリとなって散っていった地面を踏んでいる。
彼らはパトカーの光におびえて暗闇に逃げこんだ。
わたしはその暗闇をみている。
そうだ。かれらは、伝説通り光に弱いのだ。
胸に杭をさされれば、もちろん金属の剣であっても効果は同じだ。
消えていく。消去することができる。

そして、わたしは、純といっしょに戦えたよろこびにひたっている。
もうわたしは孤独な少女ではない。
これからは、いつも純がそばにいる。
わたしは、不安におびえる少女ではない。
純とともに吸血鬼とたたかえる。
闘う少女だ。
わたしのいままでの剣の修業は吸血鬼と戦うためだった。
ひとの生き血を吸う吸血鬼を滅ぼすためのものだった。
わたしの剣がひとさまの役に立っている。
「翔子、すごくたくましくなったな」
純がほめてくれた。
うれしかった。
でも、
女の子がきれいになった、
ではなく!!
たくましくなったなんてほめられて、
複雑なよろこび、
だ!!!

純のことはずっとすきだった。
小学生のわたしは、はやく大人になりたかった。
そして高校生になったときには、もう純はいなかった。
なになか複雑な事件にまきこまれたらしいとしかわからなかった。

純に会いたかった。
携帯はつうじなかった。
でもインターネットはつうじるだろう。
メールを打てば返事が来るだろう。
でも耐えた。
なにか緊急でないかぎり連絡したら純に迷惑がかかる。

ああこうして純と同じ場所で吸血鬼とたたかえるなんて夢みたいだ。
ああ純といっしょだ。胸がキュンと熱くなった。動悸がはげしくなっている。
それを純にしられまいとして、
かけつけてくれたパトカーのお巡りさんにふかぶかと頭をさげた。
「ありがとうございました」



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コメント
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