田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ミス吸血鬼の出現/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-27 06:23:31 | Weblog
ミス吸血鬼の出現


3

Virtual Realityの世界にとびこんだ感覚だ。
VR(人工現実)のフイギァではない。
アニメの中の美少女剣士ではない。
翔子は口とは裏腹に、怯えていた。
VRではない。夢の世界にいるようだ。
恐れと、怯えと、畏怖に体が震えている。

火災報知機がまだなっている。
「部活動室で火災が起きました。部活動室で火災が起きました」
新しい報知機だ。場所を特定して避難をうながしている。
翔子はクラスメイト、
仲良しの涼子が副部長をつとめる書道部の部屋のあたりとしってかけつけてきた。
そこで、この災禍を目撃した。

翔子が横にないだ筆先で、
半紙の墨の線が二本になった。

「ナンダコムスメジャンカ……ニホンノショケイニン。タイシタコトナイワヨ」

耳にだけ響いてくる声だ。
翔子の心にだけ伝わってくる言葉だ。
たどたどしい日本語を繋ぎ合わせると何とか理解できる。

「わたしルーマニアからきたね」
「卓球選手なの」
福原愛ちゃんとルーマニヤの選手をテレビで見た。
そんな彼女をイメージしてみた。
「アラチガウザンス。オウエンダンニマジッテキタネ」
「もういいでしょう。悪さはよして退散しなさい」
「退散? 降参とちがうか」
翔子のアタマのコトバを読み取っている。
とんでもない敵だ。
翔子はたしかに、降参したら――とも思っていたのだ。
「敵はここにいる。吸血鬼だ―ヨン」
「ヨンさまのつもりなら、顔見せてよ」
このジョークはつうじなかった。
なに言ってるの。わたし。本人にもわからないジョークだ。
ヤッパ、わたし怯えている。
翔子はじぶんのココロをフルイタタセ、
みえない吸血鬼女の胸のあたりに硯をなげつけた。
バット墨染の姿がうかびあがった。
ギャと絶叫が放たれた。
真っ黒な巨大な蝙蝠に変身して廊下に逃げる。
「マテ!」
「まって!?。翔子なにしてるの??。何いっているの???」
 ゲ。
 ゲ。
 涼子にはなにもみえなかったの。


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