2007/4/13(金)
★9回目の「アナリーゼ講座>が明後日の15日となりました。
シューベルトの「ピアノソナタ変ロ長調D960」について、つぶさに分析いたしました。
いろいろと新しい発見がありましたので、さわりの部分を一部、ご紹介いたします。
★シューベルトの曲は、次々に美しいメロディーが繰り広げられるため、
骨格の確かさに目が行かず、「思い浮かぶまま、流れるように作曲した」、
「構成が弱い」などという極めて表層的な通説が、幅広く流布しているようです。
大変、嘆かわしいことです。
そのような見方で演奏したり、聴いたりしますと、
シューベルトの世界を、さらに「見誤る」という結果になります。
★20世紀における「調性崩壊」の源流も、実はシューベルトにあるのです。
「思いがけない遠隔調への転調」は、彼の特徴ですが、
これも、思い付きでしているのではなく、緻密な調設計のうえでの作為です。
これを、気付かない人が「思いがけない転調」といっているだけなのです。
これは、バッハに端を発し、ベートーヴェン、シューベルトに受け継がれ、
ショパンへの流れていきます。
★「ピアノソナタ変ロ長調D960」は、シューベルトの最後のピアノソナタです。
ベートーヴェンとは異なる、全く新しい構成が見られました。
第1楽章、第1テーマの後に、通常は「確保」といって、
第1テーマをもう一度、少し形を変えて再度、演奏することが行われます。
その後、ブリッジ(推移)という、第2テーマにつながる橋渡しの部分が現れます。
ところが、シューベルトは「確保」と「推移」の位置を、逆にしてしまいました。
★第1テーマの後、19小節目から直ぐに「推移」が現れ、次々と「変奏」をしていきます。
そして、おもむろに36小節目から、「確保」が現れます。
この≪テーマを変奏していく≫という考え方が、全く新しいのです。
この変奏の考え方は、ブラームスを経て、
20世紀のシェーンベルク、ヴェーベルンへと脈々と、受け継がれていきます。
★また、音響面でも、9小節目のフェルマータのついた休符、112小節目の休符、
同じく331小節目は、オーケストラの総休止(ゲネラルパウゼ)に匹敵する休符です。
ゲネラルパウゼを、日本語は「休」という字を当て、音がなにも無いようなイメージですが、
実際には、空間に、その前のピアノの響きが美しく漂っています。
シューベルトの亡くなる1828年、ベーゼンドルファーが設立されました。
この時代は、ピアノの機能が日に日に進歩しており、
オーケストラに匹敵するような楽器として、成長を遂げています。
★このような休符の使い方は、モーツァルトがピアノソナタで使っていますが、
シューベルトは、モーツァルト研究も密かに深く積み、
最後のソナタで、全く新しい音響を作り上げていたのです。
★シューベルトに関する本は、あまり多くありません。
なぜなら、彼はめぼしいエピソードに乏しいからです。
通常の「音楽論文」は、「楽曲の分析」より、「エピソード」に依存して書くことが多いためです。
音楽は、作曲家の残した楽譜の上にこそあります。
是非、彼の楽譜を基に、研究していただきたいものです。
シューベルトの短い31年の生涯は、ただただ、作曲をするために費やされたのです。
ですから、面白おかしい逸話などは、残っていなくて当然なのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★9回目の「アナリーゼ講座>が明後日の15日となりました。
シューベルトの「ピアノソナタ変ロ長調D960」について、つぶさに分析いたしました。
いろいろと新しい発見がありましたので、さわりの部分を一部、ご紹介いたします。
★シューベルトの曲は、次々に美しいメロディーが繰り広げられるため、
骨格の確かさに目が行かず、「思い浮かぶまま、流れるように作曲した」、
「構成が弱い」などという極めて表層的な通説が、幅広く流布しているようです。
大変、嘆かわしいことです。
そのような見方で演奏したり、聴いたりしますと、
シューベルトの世界を、さらに「見誤る」という結果になります。
★20世紀における「調性崩壊」の源流も、実はシューベルトにあるのです。
「思いがけない遠隔調への転調」は、彼の特徴ですが、
これも、思い付きでしているのではなく、緻密な調設計のうえでの作為です。
これを、気付かない人が「思いがけない転調」といっているだけなのです。
これは、バッハに端を発し、ベートーヴェン、シューベルトに受け継がれ、
ショパンへの流れていきます。
★「ピアノソナタ変ロ長調D960」は、シューベルトの最後のピアノソナタです。
ベートーヴェンとは異なる、全く新しい構成が見られました。
第1楽章、第1テーマの後に、通常は「確保」といって、
第1テーマをもう一度、少し形を変えて再度、演奏することが行われます。
その後、ブリッジ(推移)という、第2テーマにつながる橋渡しの部分が現れます。
ところが、シューベルトは「確保」と「推移」の位置を、逆にしてしまいました。
★第1テーマの後、19小節目から直ぐに「推移」が現れ、次々と「変奏」をしていきます。
そして、おもむろに36小節目から、「確保」が現れます。
この≪テーマを変奏していく≫という考え方が、全く新しいのです。
この変奏の考え方は、ブラームスを経て、
20世紀のシェーンベルク、ヴェーベルンへと脈々と、受け継がれていきます。
★また、音響面でも、9小節目のフェルマータのついた休符、112小節目の休符、
同じく331小節目は、オーケストラの総休止(ゲネラルパウゼ)に匹敵する休符です。
ゲネラルパウゼを、日本語は「休」という字を当て、音がなにも無いようなイメージですが、
実際には、空間に、その前のピアノの響きが美しく漂っています。
シューベルトの亡くなる1828年、ベーゼンドルファーが設立されました。
この時代は、ピアノの機能が日に日に進歩しており、
オーケストラに匹敵するような楽器として、成長を遂げています。
★このような休符の使い方は、モーツァルトがピアノソナタで使っていますが、
シューベルトは、モーツァルト研究も密かに深く積み、
最後のソナタで、全く新しい音響を作り上げていたのです。
★シューベルトに関する本は、あまり多くありません。
なぜなら、彼はめぼしいエピソードに乏しいからです。
通常の「音楽論文」は、「楽曲の分析」より、「エピソード」に依存して書くことが多いためです。
音楽は、作曲家の残した楽譜の上にこそあります。
是非、彼の楽譜を基に、研究していただきたいものです。
シューベルトの短い31年の生涯は、ただただ、作曲をするために費やされたのです。
ですから、面白おかしい逸話などは、残っていなくて当然なのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲