音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■シューマン「子供の情景」■■その4

2007-12-24 15:39:30 | ★旧・私のアナリーゼ講座
■■シューマン「子供の情景」■■その4
2006/11/12(日)


★木枯らしが吹き、寒くなりました。

前回は、ロシアの作曲家・ボロディン(1833~1887)とシューマンとの関係でしたが、

意外なことにシューマンは、ロシアに旅をしたことがありました。

クララとの結婚3年後の1843年、シューマンが33歳のときです。

そのクララの演奏旅行に、半年ほど同行したのでした。

あちこちでクララの演奏は、熱狂的に歓迎されました。

シューマンは、「著名なピアニスト・クララの夫」という肩身の狭い立場でした。

彼の作品も若干、演奏されましたが、ほとんど無視されました。

ロシア滞在中は、寒さから健康も損ない「作曲する時間も、心のゆとりもない」という状態でした。

当時、ボロディンは、まだ10歳でした。

もしその時、ロシアで彼の作品が広く受け入れられていたならば、

ボロディンが後年、ドイツ留学でやっとシューマンを発見するということにはならなかったでしょう。

歴史の皮肉ですね。


★「子供の情景」第十番<きまじめ>では、シューマンは、曲頭に、ペダル記号を一つポツンと書いたきりです。

7小節目まで、なにもペダル記号を書いていません。

ペダルは各奏者が、工夫して踏むように、というシューマンの意図ですが、フォーレの校訂版では、

1~6の各小節の冒頭でペダルを踏み、2拍目でペダルを離す記号を付けています。

この記号通りに演奏しますと、一拍目が「掛留音」である2,3,4,5小節では、音が濁ります。

第5番「満足」の曲頭に、GisとGとを順に奏し、音を濁らせる手法がありますが、

それをさらに、敷衍して使い、音が一瞬濁ることを狙っているのです。

第11番「怖いぞ」の12小節目一番最後のアクセント「H音」も、怖がらせるように、

「C音」から短2度下がって、「H音」に到達するのと、すこし似ています。

このように、フォーレは、この曲集全体の設計を見て、ペダル記号を付したのです。

大作曲家の素晴らしい校訂です。


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