2006/11/24(金)
★「音楽と音楽家」シューマン著 吉田秀和訳(岩波文庫 ¥600)で、
シューマンの評論を読むことが出来ます。
音楽の基礎を理解しない訳者による、日本語になっていない音楽翻訳本が、
氾濫していますが、
この岩波文庫は、(ベルリーズの交響曲のアナリーゼの部分で、訳に首を傾げるところもありますが)
お薦めできます。
シューマンの肉声が聞こえる凄い内容の本だからです。
特に、195ページ「音楽の座右銘」は、わずか9ページですが、音楽を志している人すべてが、
繰り返し読むべき内容です。
この座右銘は、当初、「子供のための小曲集」(ユーゲント・アルバム)Op68に添付されていました。
■【シューマンの珠玉の座右銘のピックアップ(文庫本の訳文通り)】
★やさしい曲を上手に、きれいに、ひくよう努力すること。
その方が、むずかしいものを平凡にひくよりましだ
★小さいときから、昔の音部記号を練習しておくこと。
さもないと、多くの昔の宝をむざむざと逃すことになる
★大きくなったら、名人よりはスコアと交際するように
★よい大家、ことにヨハン・ゼバスチャン・バッハのフーガを熱心にひくように
★≪平均律クラヴィーア曲集≫を毎日のパンとするように。そうすれば、いまにきっと立派な音楽家になる
★いわゆる大演奏家はよくやんやと喝采されるが、あれをみて、思いちがいしないように
★みんなが、大衆の喝采より、芸術家の喝采を重んじるようだといいと思う
★およそはでなばかりで内容のない売物は、時代とともに流れてしまう
★技巧は、より高い目的に奉仕しているときだけ、価値がある
★どんな流行も、結局流行遅れになる
★大きくなったら、流行曲などひかないように。時間は貴重なものだ。
★いまあるだけのよい曲を一通り知ろうと思っただけでも、百人分ぐらい生きなくてはならない。
★小さいときに、和声学の基礎を勉強するように
★理論、ゲネラルバス、対位法等々といった言葉におじけないように。
★こうしたものは、使っていると、段々なれてしまう。
★音楽好きの人たちは何かというと「旋律」という。もちろん旋律のない音楽なぞ、音楽ではない
★しかし、その人々のいう旋律とは、何をさしているかよく考えてみるがいい
★あの人たちはわかりやすい、調子のよいものでなければ、旋律だと思わない
★貧弱な、どれもこれも同じような旋律、ことに近頃のイタリアのオペラの旋律など、
早くおもしろがらなくなるように。
★いつも正しく調律された楽器を扱うこと
■この文章は、いまから150年以上前の言葉ですが、現代にも、完全にそのまま当てはまります。
早く派手に弾く名人芸だけで喝采を浴びるピアニスト、
オペラの甘ったるく耳に慣れた旋律にブラボーを叫び、それしか喜ばない多くの聴衆、
バッハの美しい対位法を、努力して聴こうとせず、“難しい、頭が痛くなる”と耳を塞いでしまう
音楽ファン、調律が狂っていても平気な、楽器に無関心なピアノの先生、などなど。
★シューマンの言葉の分かりやすさはどうでしょう!!!
一度読むだけで完全に理解できます。
シェーンベルクの評論も、同じくらい分かりやすく、含蓄に富んだものです。
第一級の音楽家は、決して、難しい言葉で、難解なことは言いません。
もし、皆さんが理論書や音楽書をお読みになって、<分かりにくい>、
<どうしても理解できない>と感じられた場合、往々にして、
本の内容や訳文に問題がある場合が多いのです。
※■中村注「理論、ゲネラルバス、対位法等々といった言葉」の【ゲネラルバス】という語は、
【通奏低音】の訳がいいと思います。
「マタイ受難曲」や「パッヘルベルのカノン」のスコアで、和音の下に
数字が書いてあるのを、ご覧になったことがあると思います。
チェンバロなどの鍵盤楽器奏者は、その数字によって指定される和音を、即興的に演奏します。
例えば、「5」は和音の基本形、「6」は第一転回形、
「4、6」(しろくの和音)は第二転回形を意味します。
ドミソの和音の5はドミソ、6はミソド、4、6は、ソドミを意味します。
≪子供のころから、数字付低音を見て、初見で、鍵盤上で和音をつくれるように、慣れなさい≫と
シューマンは薦めているのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★「音楽と音楽家」シューマン著 吉田秀和訳(岩波文庫 ¥600)で、
シューマンの評論を読むことが出来ます。
音楽の基礎を理解しない訳者による、日本語になっていない音楽翻訳本が、
氾濫していますが、
この岩波文庫は、(ベルリーズの交響曲のアナリーゼの部分で、訳に首を傾げるところもありますが)
お薦めできます。
シューマンの肉声が聞こえる凄い内容の本だからです。
特に、195ページ「音楽の座右銘」は、わずか9ページですが、音楽を志している人すべてが、
繰り返し読むべき内容です。
この座右銘は、当初、「子供のための小曲集」(ユーゲント・アルバム)Op68に添付されていました。
■【シューマンの珠玉の座右銘のピックアップ(文庫本の訳文通り)】
★やさしい曲を上手に、きれいに、ひくよう努力すること。
その方が、むずかしいものを平凡にひくよりましだ
★小さいときから、昔の音部記号を練習しておくこと。
さもないと、多くの昔の宝をむざむざと逃すことになる
★大きくなったら、名人よりはスコアと交際するように
★よい大家、ことにヨハン・ゼバスチャン・バッハのフーガを熱心にひくように
★≪平均律クラヴィーア曲集≫を毎日のパンとするように。そうすれば、いまにきっと立派な音楽家になる
★いわゆる大演奏家はよくやんやと喝采されるが、あれをみて、思いちがいしないように
★みんなが、大衆の喝采より、芸術家の喝采を重んじるようだといいと思う
★およそはでなばかりで内容のない売物は、時代とともに流れてしまう
★技巧は、より高い目的に奉仕しているときだけ、価値がある
★どんな流行も、結局流行遅れになる
★大きくなったら、流行曲などひかないように。時間は貴重なものだ。
★いまあるだけのよい曲を一通り知ろうと思っただけでも、百人分ぐらい生きなくてはならない。
★小さいときに、和声学の基礎を勉強するように
★理論、ゲネラルバス、対位法等々といった言葉におじけないように。
★こうしたものは、使っていると、段々なれてしまう。
★音楽好きの人たちは何かというと「旋律」という。もちろん旋律のない音楽なぞ、音楽ではない
★しかし、その人々のいう旋律とは、何をさしているかよく考えてみるがいい
★あの人たちはわかりやすい、調子のよいものでなければ、旋律だと思わない
★貧弱な、どれもこれも同じような旋律、ことに近頃のイタリアのオペラの旋律など、
早くおもしろがらなくなるように。
★いつも正しく調律された楽器を扱うこと
■この文章は、いまから150年以上前の言葉ですが、現代にも、完全にそのまま当てはまります。
早く派手に弾く名人芸だけで喝采を浴びるピアニスト、
オペラの甘ったるく耳に慣れた旋律にブラボーを叫び、それしか喜ばない多くの聴衆、
バッハの美しい対位法を、努力して聴こうとせず、“難しい、頭が痛くなる”と耳を塞いでしまう
音楽ファン、調律が狂っていても平気な、楽器に無関心なピアノの先生、などなど。
★シューマンの言葉の分かりやすさはどうでしょう!!!
一度読むだけで完全に理解できます。
シェーンベルクの評論も、同じくらい分かりやすく、含蓄に富んだものです。
第一級の音楽家は、決して、難しい言葉で、難解なことは言いません。
もし、皆さんが理論書や音楽書をお読みになって、<分かりにくい>、
<どうしても理解できない>と感じられた場合、往々にして、
本の内容や訳文に問題がある場合が多いのです。
※■中村注「理論、ゲネラルバス、対位法等々といった言葉」の【ゲネラルバス】という語は、
【通奏低音】の訳がいいと思います。
「マタイ受難曲」や「パッヘルベルのカノン」のスコアで、和音の下に
数字が書いてあるのを、ご覧になったことがあると思います。
チェンバロなどの鍵盤楽器奏者は、その数字によって指定される和音を、即興的に演奏します。
例えば、「5」は和音の基本形、「6」は第一転回形、
「4、6」(しろくの和音)は第二転回形を意味します。
ドミソの和音の5はドミソ、6はミソド、4、6は、ソドミを意味します。
≪子供のころから、数字付低音を見て、初見で、鍵盤上で和音をつくれるように、慣れなさい≫と
シューマンは薦めているのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲