音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■シューマンの「子供の情景」について■■ ~音にされない音を聴く~

2007-12-24 15:34:37 | ★旧・私のアナリーゼ講座

2006/10/25(水)

★シューマン「子供の情景」の最後の曲は、第13番「詩人のお話」です。

冒頭の6小節は、コラールのように4声体で書かれています。

ソプラノ、アルト、テノール、バスの4声です。

ところが、6小節目の一番最後のテノールの音が、

ぽっかりと欠けています。

そこは、イ短調の「導音ソ♯」が、「主音のラ」へと進行する所です。

肝心の一番大事な「主音ラ」が、穴が開いたように欠けているのです。

その「ラ」がないために、耳は、「ラ」を期待していたので、

心の中に、あたかも「ラ」を聴いたかのような強い印象が、残ります。

生の音を聴く以上に、強い効果が生まれます。

この効果は、シューマンの“大発明”であると、思います。

さすがのクララも、このシューマンの意図を理解したのでしょう。

その「ラ」は、クララ版でも、原典どおり、欠けたままにしてあります。


★ところが、大作曲家フォーレは、“ラ”を作曲してしまいました。

6小節目と同じ音型が、18小節目にも再現されますが、

原典にはない「ラ」を、ここでも、フォーレは、書き込んでいます。

私の大好きな作曲家フォーレ!!!

本当にフォーレが、「ラ」を望んで書き入れたのか、

出版社の暴走なのか、それ以外の事情なのか・・・・・・

よく分りません。



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