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 僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

耳鳴り 奇跡の90分

2013年10月28日 | 心と体と健康と

先週の水曜日に一通の葉書が届いた。肉筆でギッシリと隙間なく文章が書かれていたが、要するに「いい酒があるので貴兄に振舞いたい」というお誘いであった。差し出し主は日本ウダウダ会の会長さんである。翌日さっそく電話があり、「明日の金曜日はどうや?」との問いあわせ。夕方にモミィをダンスに連れて行く日だが、それは妻に任せることにして、「僕は大丈夫です」と返事した。


翌日、電車に揺られて15分、河内天美という駅から歩いて5分程度のところにある、メンバーの一人が所有する狭い作業小屋で、鍋を囲み酒を飲んだ。皆はここを「避難小屋」と呼んでいる。男性5人、女性1人がまさに膝を突き合わせるように固まって飲んだ。ひとり、料理が上手な人がいて、その人が鍋の加減をみはからって、僕らの器においしいところを入れてくれる。骨付きの鶏肉が絶品であった。そんなことでビールやコップ酒が、かなり進んだ。


家に帰って布団に潜るとすぐ寝てしまったようだが、眠りの浅い僕は夜中に何度も目が覚めた。深酒をしたときは、ごくたまに耳鳴りが聞こえなくなるときがある。「あ、聞こえない」とボケた頭が一瞬冴えるのだが、意識するともうだめで、そのあとすぐ「キーン」という耳鳴りがしてくるのである。1日24時間、決して消えない耳鳴りの唯一の例外が、その瞬間なのである。しかし日常飲んでいる程度では消えてくれない。むしろ大きくなる。ところが…その小屋で酒を飲んだ翌日のことであるが…


土曜日だったので、いつもより長くベッドの中にいた。時計を見ると7時。モミィも妻も、学校が休みなのでまだ寝ている。ごそごそひとり起き出した僕は、とんでもないことに気がついた。なんと、耳鳴りが消えているのだ。夢ではないかと思った。6年間、消えたことのない耳鳴りが、今、起きてうろうろしていても聞こえてこないのである。なんだこれは!


しかし、耳鳴りは意識するとすぐにやってくる。一瞬の油断もならない。僕は気を紛らわすために、故障中のTCI(音響療法用治療器)の代わりに最近使っているipodを耳鳴りの左耳にはめて雑音のスイッチを入れてまず防衛策を取った。ひょっとして、うまくいけば、このまま消えてくれるかもしれない…と、自分でも楽観的過ぎるとは思ったが、そう信じたかった。死ぬまで逃れられない(と思っていた)耳鳴りから、開放されるなんて、…いや、これは一時的なものだ。昨日の酒が残っていて、頭がまだ麻痺しているに違いない。もう間もなく「キーン」という音が右の耳から聞こえてくるのだろう。


でもひょっとして奇跡が…いやいや、今だけだろ。


自問自答を繰り返しながら、30分ほど経ったけれど、耳にはめているipodの雑音から、キーンといういつもの耳鳴りは聞こえてこない。間違いなく、この6年間で30分以上も聞こえてこなかったのは、これが初めてである。そわそわドキドキしながら、お茶をわかしたり、洗濯機に衣類を放り込んだり、とにかく身体を動かして、用事をして、意識を耳鳴から遠ざけようと必死だった。


1時間経ってもまだ聞こえてこなかった。本当に喜んでいいのか…? 今喜んだら、また元に戻ったときの反動があまりに口惜しい。…そのうち、少しずつだけど、左耳の騒音から突き抜けてくるように「キーン」という音が、小さいながらも聞こえてきた。ああ、やっぱりなぁ。


「キーン音」は徐々に通常のボリュームに戻ってきたので、ipodを外すと、やれやれ、いつものとおり、高温のキーンという馴染みのイヤな音が響いていたのである。やはり、酒を沢山飲んだことによって脳がボケていたせいで、耳鳴りもボケていたのだろうか。脳が戻れば耳鳴りも戻る…と、まあ、こういうことか。(といっても、これまではもっと酔っていても耳鳴りは続いていたのだ)


6年ぶりに起きた耳鳴りの奇跡も、わずか90分程度で終わってしまった。


でも、まあ、耳鳴りのない時間を少しでも過ごせたことは幸せだったかも。

 

 

 

 

 

コメント (2)
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