僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

「くびちょう」 ってナンだ?

2012年10月29日 | 雑記

ひと口に地方自治体…といっても、さまざまである。
僕が勤めていたのは市だけれど、都道府県も町も村もみんな地方自治体である。

そして地方自治体の長は、それぞれ知事、市長、町長、村長などと呼ばれるのだが、
これらを総称したのが 「首長」 という言葉である。

読んで字の如く、「しゅちょう」 だけれど、
このところ、橋下大阪市長らが記者会見などの場で、
しきりに 「くびちょう」 という言葉を使っているのが耳に障る。
これは 「首長」 つまり「 しゅちょう」 のことなんだけれども、
「くびちょう」 と言われたら何のことやらわからぬ人もいるのではないか? 

「くびちょう…? くみちょう…? 組長…?」 
と聞き間違える人もいるかも知れない。

(地方自治体の 「組長」 って、どんなんや~)

これは、「首長(しゅちょう)」 と言えば、
「市長」 や 「首相」 などとまぎらわしいこともあるので、
言葉に出すときは、あえて 「首長(くびちょう)」 とわかるように言う、
いわゆる業界用語みたいなものである。 

しかし、わかるように言う言葉なんだけれども、
一般の人たちにはわかりにくい言葉である。 
お茶の間に流れるテレビの記者会見で、 
「くびちょう」 と言われても、ピンと来ない視聴者は多いはずだ。 

市立と私立を区別するため、私立を 「わたくしりつ」 と言ったり、
私道を市道と混同しないように 「わたくしどう」 と言ったりするのと、
まあ、同じようなものなのだろう。

とにかくこれらは業界用語なので、TVなどのニュースでは、
「わたくしりつ」 とは呼ばないし、「くびちょう」 とも言わないそうだ。 
「しりつ」 「しゅちょう」 と、正規の呼び方を使う…
…というのは、まあ、当り前のことでしょうけど。

そんななわけで、「くびちょう」 という言い方は公共放送にはなじまない…
ということを、テレビ番組出身の橋下サンなら自覚できるはずだけど、
どうもそういうことには鈍感なのか、あるいはわざと使っているのか…
とにかく、一筋縄ではいかない人だからね、橋下サンは。

ところで、広辞苑で 「くびちょう」 と引いても 「首長」 は出てこない。 
ひとつだけ、「首帳」 というのが出てくる。 

「首帳」 とは何か…?
戦場で討ち取った敵の首と、それを討ち取った者との氏名を記した帳簿…
のことだそうである。 昔々の話である。

僕が勤務していた市の議会などでは、たいていの議員は、
「しゅちょう」 とも 「くびちょう」 とも言わなかった。
ほとんど、「自治体の長」 という言い方をしていた。
これが本来の、わかりやすい呼び方であろう。

ただ、昔に一人だけ首長のことを 「しゅうちょう」 と言う議員がいた。
しょうちょう…といえば、「酋長」 を連想する。
その人はず~っと 「しゅうちょう」 と言い続けていた。
しかし 「しゅうちょうではありません。 しゅちょうです」
と訂正してあげる人は、まわりに誰もいなかった。 
ベテラン議員だったので、顔をつぶすようなことは言えない
…という遠慮があったのだろう。 

先輩に当たる人に間違いを指摘するのは、むずかしいことだ。 

ま、それはそれとして、地方自治体の首長…
…という言葉自体を、別の言葉に改めたほうがいいのではないかと思う。

そんなことを思っていた矢先に、あるTV局のアナウンサーが、
「くびちょう」 という表現について、

「公の席で 『くびちょう』 を連発するのは考えものだ」 
と言ったので、わが意を得た思いだった。

そのアナウンサーはさらに、「首長」 というまぎらわしい語句は使わず、
たとえば 「自治体のトップ」 とかいう表現に変えたらどうか…と提言していた。

その意見には、大賛成である。

とにかく、「くびちょう」 というのは、日本語では、
敵の首を取った武将の手柄を記す 「首帳」 しかないのである。 

とてもじゃないが、現代で使う言葉ではござりませぬ。

 

 

 

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