僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

母の骨折

2010年02月25日 | 日常のいろいろなこと

22日の月曜日。
昼前、コスパでトレーニングをしたあとロッカーで服を着替えながら携帯を見ると、妻からメールが入っていた。読んで、びっくりした。

メールには、さっき特別養護老人ホームから家に電話があり、ホームでお世話になっている母が、大腿骨を骨折して病院に運ばれ、手術の必要があるのですぐに特養の方に行ってほしい、ということが書いてあった。

「わかりました。すぐに行くから」と僕は妻に返信し、ウインドブレーカーの上下を着て、マウンテンバイクに乗って、コスパから5分ぐらいのところにある特養ホームへ走った。

母がちょうど病院から帰って来たところだった。「痛~い、痛~い」とストレッチャーの上で、悲鳴を上げている。ストレッチャーを動かすと痛いようで、静止させると痛みはないようであった。

特養に詰めている医師が、病院から預かってきた母のレントゲン写真を僕に見せてくれた。「大腿骨というか、股関節のあたりを骨折しています。車椅子からベッドに自力で移ろうとして転ばれたようです」
「そうですか…。手術の必要があるということですけど…」と僕。
「はい
。今行った病院では手術はできないので、他の大きな病院へ行く必要がありますね。この近くにある○○病院はどうですか…?」
「結構です。よろしくお願いします」
「じゃぁ、紹介状を書きましょう」

特養施設の看護師さんが母をストレッチャーのまま車に乗せ、そこを出た。
病院はすぐ近くだから、僕はマウンテンバイクで車を追いかけた。

病院へ着いて、母と特養の看護師さんと僕が、整形外科の診察室に入った。

医師はまず、母の状態を特養の看護師さんに聞いた。
特養の看護婦さんは、母が数年前から脳内出血による右半身麻痺で、介護度が4で車椅子生活をしていること、左半身は動くので車椅子は左手で動かすことができ、左足だけで立つこともできる…などということを説明した。
特養の看護婦さんは、かなり年配の、ちょっと怖そうな感じの女性である。

「ふむ、ふむ」とその説明を聞いてた医師は、レントゲン写真を見ながら、
「この骨折部分は、右足の付け根です。つまり、動かない方の足の付け根ということになります」と、説明を始めた。

「そこで…」と医師は、僕のほうを見た。
「患者さんとは、どういう御関係ですか…?」と医師は僕に尋ねた。
うしろから特養の看護婦さんが
「弟さんですよね」と僕に言った。
「はぁ…?」と僕は看護婦さんのほうを振り向いた。

だれの弟やねん…?
僕は、この81歳の母の弟か…?

いや、そういう意味ではなく、時々特養に面会に来る母の長男(実は僕だ)にしては、今日は派手なウインドブレーカーを着てリュックを背負い、マウンテンなんかに乗っていたので、看護師さんは僕とは別人だと思ったのだろう。「長男の弟」という意味でその看護師さんは言ったようであった。

「長男ですけど…」
「あ、そうでしたか」と看護婦さん。

「はい。ではちょっと説明しますけど…」と医師が口を開いた。

それによると…
母の骨折は確かに手術は必要だけれども、その手術は再び歩けるようになるためにする手術なのだそうだ。しかし母が骨折した箇所は麻痺した方の足の付け根で、しかもボルトを入れてつなげる箇所でもないので、手術は人工の関節を入れる大掛かりな手術になる。この手術にはリスクも多く、たとえ成功しても元々動かない足のほうなのでメリットは少ない。そうしたことを考えると、そのままにしておいたほうがいいのではないか…、ということだった。そのまましておけば、剥離した部分は壊疽になって空洞状態になり、痛みは3週間ほどで取れるはずだ、と言う。まあ、わかりやすい話だった。

医師の話が一段落したら、特養の看護婦さんは僕に「どうされますか…?」と尋ねた。
「まあ、先生の言われるとおりにしてもらったら…と思います」

医師も「このまま施設に戻られて、そこで養生されたらいいと思いますよ」と、うなずきながら言った。

特養の看護婦さんの顔が、一瞬険しくなった…ように見えた。

その時、それまでストレッチャーの上で仰向けになったまま、人形のようにピクリとも動かず、目だけをキョロキョロさせていた母が急に口を開いた。

「ほんなら、そういうことにしょうか。さあ、帰ろ」

僕は思わず声を上げて笑ってしまった。
医師が驚いた表情で母の顔を覗き込んだあと、僕に、
「お母さん、認知症…では、なかったのですか…?」

「いや、その場の話は理解しています。すぐに忘れるだけです」
と、僕は苦笑しながら説明した。

診察室から出るとき、母は僕の手を握り、
「入院せんでよかったわ~」と言い、また僕の顔をじ~っと見つめて、
「あんた。今日は学校休みか…?」と尋ねた。

僕は学校はとっくの大昔に卒業しました。
それどころか、去年、仕事も定年退職しました。

もちろん、そんなことを母に言っても仕方ありませんが。

 

 

 

 

コメント (6)
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