僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

松原市の正念場

2010年01月30日 | 議会&役所

昨日の昼、家で食事をしながら12時からのNHKニュースを眺めていたら、
「次のニュースです。大阪府の松原市で…」とアナウンサーが言い始めた。

テレビなどで松原市に関する報道が流れると、去年3月まで松原市役所に勤めていた僕は「えっ、松原…? 何があったの…?」と目がテレビに釘付けになる。たいていは松原市内で火事があったとか、コンビニ強盗があったとかいう話なんだが、この日のニュースは違った。松原市と業者の間で疑惑が生じている、という報道だった。これは、聞き捨てならない。

「松原市は、ごみの収集・運搬の許可を持たない2業者に対し、市内の事業所から出るごみを、隣接する大阪市平野区の焼却場へ持ち込めるよう便宜を図っていたことが明らかになりました」

つい先ほど行われたという記者会見の様子が映し出される。
市長や副市長、総務部長など、よく知っている顔が次々とアップで映る。
見ているうちに、急激に緊張してくる自分を感じる。

報道されたのは、つまりこういうことのようであった。↓

松原市は清掃工場(ごみ焼却場)が老朽化したことで、2002年に閉鎖した。
それに代わる新しい清掃工場を建設する予定であったが、地元住民の激しい反対で断念。隣接する大阪市平野区の焼却場に頼み込んで、ごみを搬入させてもらうことになった。

今回、無許可が明らかになった2業者とも、10年以上、あるいはそれ以上以前から、無許可であるにもかかわらず、松原市内の事業所(たとえば工場とか、病院とか)からごみを集め、当時の松原市のごみ焼却場に搬入していた。松原市の焼却場が閉鎖されたあと、今度は平野工場に搬入していた。

しかし、平野工場にごみを搬入するためには、松原市が認める搬入券というものが必要であった。もともと、一般廃棄物の収集・運搬の許可がない業者が、焼却場にごみを持ち込むことは、違法な行為である。にもかかわらず、松原市が搬入券をその2業者に渡していたということは、違法な行為への便宜供与である、ということになる。

業者は、各事業所からごみの処理代を得る。そして、松原市は、大阪市に対して、搬入券に記録されたごみの重量をもとに、焼却費を支払う。そういう仕組みになってる。

テレビの記者会見で、澤井宏文市長は神妙な表情で謝罪し、こういうことは二度と起こさないようにしたい、というふうなコメントを述べていた。

市と業者とのさまざまな因縁は、何十年も前から続いているようである。
去年の6月に当選してきたばかりの澤井市長は、戸惑っているであろう。

しかし、民主党が自民党に対し、「うちらは政権取りたてホヤホヤで、何も知らんがな。それまで、あんたら自民党がやってきたことのツケを払わされてるだけやがな」と言ってひたすら責任転嫁を繰り返すと、身もフタもない議論になってしまうのと同様で、松原市の今回の事案も、現在もその状態が続いていることについては、真摯な反省と、今後の素早い対応が必要であろう。今朝の新聞によれば、澤井市長は「不正を許さない職場風土の構築に向け、不退転の決意で取り組む」と、調査と再発防止を約束した…とある。
ぜひ、実現してもらいたい。

それにしても、この「何十年続いてきた」業者との関係…というのは、さまざまな問題を含んでいる。今回の件につき、これから松原市は調査委員会を設置し、市側に違法性の認識があったかどうかも含めて調査するということであるが、当然、担当職員たちの処分も視野に入っているのだろう。それはそれで、やらなければならないことだけど、たまたま、現在その部署にいる職員たちは、う~む、ちょっと気の毒だな~と、同情したりする。

物事がスムースに運ぶなら、事を荒立てることもない…というのは、事なかれ主義だと批判されるかもしれないが、成り行きとしてやむを得ない場合もあるように思う。現実は、行政マンとして命を賭けて職務に邁進する…
というのは、自分がその立場に立ってみると、恐ろしいほど難しい。
言うは易く、行なうは難し、である。

市の職員という立場は、1人や数人では、根本的な改革はできないのだ。

ある種の業者というのは、ヤクザ顔負けの凶暴な態度で、市役所へやって来て、周囲に響き渡る大声を上げて、市の職員を脅したり、聞くに堪えぬ悪態をついたりする。業者は、市の職員は大人しいし逆らわない、と見くびっているので、言いなりにならなければ頭ごなしに言葉の暴力を口汚く浴びせ続ける。言外に「言葉だけでは済まんぞ」という脅しもチラつかせる。

ここでひとつの事件を思い出す。

2001年秋、栃木県の鹿沼市で、環境対策部参事をしていた小佐々守さんという男性職員が、暴力団たちに連れ去られて殺害された事件である。

これは、廃棄物処理業者が、自分たちの言うことを聞かなかった鹿沼市役所の担当職員(小佐々さん)を、暴力団を使って殺害した事件であった。小佐々さんの前任者が、事実上、その業者に便宜を図ってきたらしいのだが、その前任者は、自らの罪の重さに耐え切れなくなったか、自殺をした。

こういうことが、実際に起こっているのである。
これと類似する殺傷事件も、あちらこちらで起きている。

ヤクザ顔負けの業者を相手に、これまで市が何十年と黙認してきたことを、今の、たとえば係長や課長が、「よ~し、悪を懲らしめてやる!」と個人で立ち上がり、「認められないものは認められないのだ~」と啖呵を切る…なんてことはずいぶん難しいだろうし、仮に闘っても、まさに蟷螂に斧…である。犬死さえしかねない。これはもう、一糸乱れぬ組織全体で対抗していくしかないのである。

過去から、市の組織そのものが業者の言いなりになってきたという、不幸な経過がある。何十年と根付いたものは、そう簡単にはひっくり返せない。

組織全体で、本気で立ち向かわなければ、変えることは出来ないのだ。課が違うからオレには関係ない…などと言っている場合ではない。市長以下、職員全体の足並みが揃わないことには、また業者につけ込まれるだろう。

今回の「発覚」は、これまでの市と業者との馴れ合いを絶つ絶好のチャンスでもある。今こそ組織が一丸となって対応する強固な土壌を作るべきだ。

澤井宏文市長のこの言葉を、もう一度ここに記しておく。

「不正を許さない職場風土の構築に向け、不退転の決意で取り組む」

言うは易く、行なうは難し…ではあるが、これだけは必ず実行してほしい。

  

 

 

 

 

 

 

 

コメント (6)
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