電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

果樹園の防除を早朝に行う理由と訪花昆虫のこと

2021年04月26日 06時00分46秒 | 週末農業・定年農業
ただいま、我が家の果樹園は花盛りの時期に入っています(*1)。梅の花が終わるとスモモ、桃、サクランボ、プルーンが咲き出し、少し遅れてリンゴの花が咲きます。4月下旬から5月中旬くらいまでのこの時期、訪花昆虫にとってはかきいれ時、せっせと花の蜜を集めていることでしょう。虫媒花で他家受粉でないと結実しないサクランボ等の果樹にとって、蜜を集めるついでにせっせと受粉を媒介してくれる訪花昆虫は、実にありがたい存在なのです。



一方で、開花から受粉・結実期は病害虫にとっても狙いめの時期です。まだやわらかい時期に、様々な病気の胞子が付着しますし、チョウ・ガの類も害をなします。それを防ぐには、殺菌剤を中心とする防除が必要となりますが、一方で訪花昆虫の活動を思えば有害な殺虫剤はできるだけ使いたくない。ということで、この時期のサクランボ防除は、例えば次のように行っています。

  • 訪花昆虫、とくに貢献度の大きいミツバチやマルハナバチ等のハチ類は、気温が15〜20度くらいにならないと飛びまわらず、それぞれの巣の中にとどまっています。したがって、ハチ類がまだ飛ばない気温の低い早朝のうちに防除を行う必要があります。朝4時起きで防除などというスタイルは、このためです。
  • 殺菌剤としてトレノックスを用いますが、主成分チウラムは比較的抗菌スペクトルの広い物質で、ゴムの加硫にも用いられるものです。皮膚にアレルギーを起こすことがあるので、ゴム長靴に防除衣、防除メガネ、防除マスクにインナー手袋着用でゴム手袋という完全防備で、風の弱い朝の時間をねらって実施します。
  • 殺虫剤として用いるのは、バイオマックスです。これは一種の生物農薬で、1901年に石渡重胤によりカイコの病原細菌として発見(*2)された Bacillus thuringiensis の生芽胞及び産生結晶毒素を成分とするもので、訪花昆虫ではなくチョウやガの幼虫に対して作用します。

果樹園の早朝防除は、実施する側には負担が大きいものですが、訪花昆虫の保護に配慮しながら確実な受粉・結実を目指す大事な農作業です。眠い寒いなどと愚痴も言いたくなりますが、果樹園芸地帯である当地でそんなことを言うと笑われます。むしろ出荷先で皆さんに喜んでもらえることを願って、早め早めに防除作業を終えるようにしたいところです。

(*1):果樹園の春〜「電網郊外散歩道」2013年5月
(*2):バチルス・チューリンゲンシス〜Wikipedia より


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