電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

今年の県産サクランボ減産のもう一つの要因

2024年06月29日 06時00分35秒 | 週末農業・定年農業
6月26日付けの山形新聞に、

1万トン以下か 「凶作水準」〜県産サクランボ今季収穫量〜関係者危機感、市場取扱量も大幅減

という記事が掲載されました。これは、今年の山形県産サクランボの収穫量が当初予想の12,000トンを大幅に下回り、1万トンを割り込むだろうとの生産者・流通関係者の見方を伝えるものです。サクランボ生産農家の一人として、私の予想でもかなりの減産になるのではないかと考えていましたが、我が家だけではなく、県全体でもそうなのだなと感じることがありました。

というのは、新聞等の報道では、減産の原因・背景として (1)開花期の高温・乾燥、(2)収穫期の高温による「うるみ」障害などをあげていますが、もう一つの要因があるのではないかと感じるからです。試みに同記事にある県産サクランボ収穫量の実績と予想のグラフにある数値をもとに、2024年は凶作水準として2021年の数値と同レベルに修正してグラフ化してみると、むしろ「漸減傾向」が見られるように思います。




これは、天候によるものというよりも、別の原因があると考えるべきではなかろうか。すなわち、昭和40年代のコンピュータの進歩とモータリゼーション等によってトラック輸送による宅配が可能となり、サクランボの生食が普及していきます。とりわけ佐藤錦の味の魅力が米国産チェリーの輸入にも負けずにブランド化して、果樹農家が競ってサクランボを植えるようになり、栽培面積が増えていきます。これが昭和40年代から50年代のことでしょう。すると、現在のサクランボ果樹園の樹の主力はそろそろ50代から60代に入ろうとしていることになります。サクランボの樹の寿命は60年と言われますので、平成に入ってから植えられたものは別として、多くは老衰期にさしかかってきている(*1)のではないか。実はこれがグラフの中〜長期的な「漸減傾向」の背景なのではなかろうか。

だとすると、意図的に樹を植え替える政策的な取り組みを進めてサクランボ果樹園の樹種の世代交代を図らない限り、これ以上の生産量は確保できないのではないか。若い人は、サクランボの各種資材の経費の高さや雨よけテント等の高所作業の危険性を嫌い、シャインマスカットに植え替えるなど、より収益性の高いものに移行している傾向が見られるように思います。

(*1): サクランボの収穫が終わり、近年の推移に愕然とする〜「電網郊外散歩道」2024年6月


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