マーラーの交響曲第5番に触れたのは、1972年にグラモフォンが1枚750円で出したラファエル・クーベリックのサンプラーLPレコードに収録された、第4楽章「アダージェット」だった。ちょうどこの頃、ヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す」で使われたことで、耽美的な音楽として話題になった。
1980年代に入り、LPでマーラーの交響曲第7番「夜の歌」や第3番などを通じて、第4番以外のマーラーの音楽にも親しむようになり、これもクーベリックのマーラー交響曲全集の分売を狙って収集し、時折きいて楽しんでいた。だが、第5番はなんとなく知ったつもりになり、後回しにしていた。
1985年になって、朝日新聞の記事に作家の「加賀乙彦さんとマーラーの第五交響曲をきく」という記事が掲載された。この記事で、氏はマーラーを車で聴く楽しみについて述べている。「私は車に乗るのが苦にならない。車で移動するためでなくマーラーを聴くために乗るのだから、これは楽しみである」というのだ。この記事がきっかけで、あのアダージェットの曲を全曲聞いてみようと思い立った。
ちょうど、ラファエル・クーベリックの第5番がLPレコード1枚に収録された直輸入盤を見付け、これを購入して聞いてみた。残念ながら、第3楽章のスケルツォが、LPレコードのA面とB面にまっぷたつにされている。1971年にミュンヘンのヘルクレス・ザールで録音された演奏が素晴らしいだけに、それだけがなんとも残念である。それでも、LPからカセットテープに録音して、車の中で聞いてみると、たしかに具合がいい。これなら、片道40kmの通勤路ロングドライブもあまり苦にならないことがわかった。
のちに、レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏でCDを購入し、さらにエリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団のCDで全曲を通して楽しめるようになり、コンパクト・ディスクというメディアの恩恵を感じた。以後、この頃続けて発売されていたインバル指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏を収録したデンオン盤を中心に、マーラーの交響曲の新録音を積極的にCDを中心として収集しはじめ、LPレコードの購入は急減するようになった。
参考までに、演奏データを示す。
■クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 (18MG-4515)
I=11'35" II=13'52" III=9'20"+8'03" IV=9'44" V=15'29"
■レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団 (R32C-1009)
I=12'57" II=14'51" III=17'36" IV=12'03" V=14'55"
■エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団
I=13'31" II=14'04" III=18'46" IV=11'34" V=14'27"
クーベリックの演奏は、前半が比較的速めのテンポで大きな誇張のない自然な演奏になっており、第4楽章「アダージェット」もあまり遅過ぎず淡々とした表現が好ましい。第5楽章は比較的ゆっくりめのテンポで、堂々とした演奏。全体として夜の草原を吹きわたる風のように、響きが濁らず爽やかだ。これはクーベリックの演奏と録音の特徴だと思う。粘着質でひたすら悲劇的なマーラーもありうるが、爽やか系のマーラー演奏もあっていい。
1980年代に入り、LPでマーラーの交響曲第7番「夜の歌」や第3番などを通じて、第4番以外のマーラーの音楽にも親しむようになり、これもクーベリックのマーラー交響曲全集の分売を狙って収集し、時折きいて楽しんでいた。だが、第5番はなんとなく知ったつもりになり、後回しにしていた。
1985年になって、朝日新聞の記事に作家の「加賀乙彦さんとマーラーの第五交響曲をきく」という記事が掲載された。この記事で、氏はマーラーを車で聴く楽しみについて述べている。「私は車に乗るのが苦にならない。車で移動するためでなくマーラーを聴くために乗るのだから、これは楽しみである」というのだ。この記事がきっかけで、あのアダージェットの曲を全曲聞いてみようと思い立った。
ちょうど、ラファエル・クーベリックの第5番がLPレコード1枚に収録された直輸入盤を見付け、これを購入して聞いてみた。残念ながら、第3楽章のスケルツォが、LPレコードのA面とB面にまっぷたつにされている。1971年にミュンヘンのヘルクレス・ザールで録音された演奏が素晴らしいだけに、それだけがなんとも残念である。それでも、LPからカセットテープに録音して、車の中で聞いてみると、たしかに具合がいい。これなら、片道40kmの通勤路ロングドライブもあまり苦にならないことがわかった。
のちに、レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏でCDを購入し、さらにエリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団のCDで全曲を通して楽しめるようになり、コンパクト・ディスクというメディアの恩恵を感じた。以後、この頃続けて発売されていたインバル指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏を収録したデンオン盤を中心に、マーラーの交響曲の新録音を積極的にCDを中心として収集しはじめ、LPレコードの購入は急減するようになった。
参考までに、演奏データを示す。
■クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 (18MG-4515)
I=11'35" II=13'52" III=9'20"+8'03" IV=9'44" V=15'29"
■レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団 (R32C-1009)
I=12'57" II=14'51" III=17'36" IV=12'03" V=14'55"
■エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団
I=13'31" II=14'04" III=18'46" IV=11'34" V=14'27"
クーベリックの演奏は、前半が比較的速めのテンポで大きな誇張のない自然な演奏になっており、第4楽章「アダージェット」もあまり遅過ぎず淡々とした表現が好ましい。第5楽章は比較的ゆっくりめのテンポで、堂々とした演奏。全体として夜の草原を吹きわたる風のように、響きが濁らず爽やかだ。これはクーベリックの演奏と録音の特徴だと思う。粘着質でひたすら悲劇的なマーラーもありうるが、爽やか系のマーラー演奏もあっていい。
マーラーの交響曲第5番をお好きな方は多いようですね。マイケル・ティルソン・トーマスの指揮した演奏は、だいぶ前にソニーが小さなサンプラーCDをくれたことがあり、そのとき初めて接しました。マーラーの演奏は残念ながらまだ聴いたことがありませんが、よい演奏がありましたら、またお知らせください。コメントありがとうございました。
私もこれで1,3,4,5番とエントリーしたことになります。皆さんのとてもお話ためになります。
「位相」というのは誤りでしたね。ご指摘ありがとうございました。
「位相を合わせるためにデジタル遅延補正技術」
初めて聞きました。つまりワンポイントで無くて、補助マイクロフォンを使い、位相を合わせたと理解しました。位相を合わせるのは、現在のミキサーでは至極当然の技術ですが、マルチミクロフォンの言い訳としていたとは知りませんでした。
ワンポイントは、言えば通常のライヴやラジオ放送では一般的ですけど、お気に入りですか?私はこの組み合わせをエアーチェックで持っている筈です。
DENONは、4番をワンポイントステレオマイク1本で録音し、5番はさすがに1本では不足で2本にし、6番ではハンマーだか槌だかの音と位相を合わせるためにデジタル遅延補正技術を開発したんじゃなかったかな。
貴ブログの書き込みの件、WindowsではNetscape7.1なんですが、今朝も書き込みできなかったです。今度はIEでためしてみます。
マーラー5番がロング・ドライヴにはうってつけであること、おおいに賛成です・・・が、しかし・・・わたくし、知る人は知る「スピード狂」でして、第3楽章(スケルツォ)では、インバル演奏で言えば11分半過ぎあたりのところが「悪魔のささやき」です・・・心臓が早鐘を打ち始めて追越ししたくなるんですね・・・しかし、間もなくその思いをうち消し・・・しかし、やっぱりモヤモヤと・・・という経験が(誘惑はこの部分に限りませんけれども)。
確かライナー・ノートには「2本のマイクだけで録音」云々など、DENONが誇る録音技術が説明されていて感心したものですが・・・CDがどこかに行ってしまって、あとで廉価盤の再リリースでも買うハメに。
クーベリックのは未聴です。しかし、「爽やか」系とか、よさそうですね。あと、また、弦つややか系とかも。
当方ブログのコメント欄ですが、特に問題なく書込可能なようですが、時間帯にもよるのでしょうか・・・ご厄介・ご面倒をおかけし、申し訳ございません。
mozart1889 さん、インバル/フランクフルト放送交響楽団の演奏会に行かれたのですね。それは良かったですね。マーラーの交響曲4番と5番、録音の自然さも特筆ものだと思います。
あと、エアチェックテープの中から、ノイマン指揮チェコフィルの演奏も見つけました。これもお気に入りでした。優れたいい演奏ですね。
インバル/フランクフルト放送響のCD、大切に聴いています。実演も素晴らしかったですが、CDの全集もホンマに良いです。
特に4番と5番は、ボクにとって大切なCDです。(ブログで困ったときにはこのCDで書こうかなと思っています・・・汗)。
全く鮮烈でシャープなマーラー。大好きです。