電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第189回定期演奏会を聴く

2008年05月11日 19時40分36秒 | -オーケストラ
土曜の夜7時から、山形テルサホールにて、山響こと山形交響楽団の第189回定期演奏会を聴きました。例によって18時45分頃から指揮者の飯森範親さんのプレトークがあります。最初の出だしで音声が入らず聞き取れなかったのですが、すぐ音声が入りました。飯森さん、風邪を引いたのか、声が少々かすれ気味。でも、次第にいつもの調子が戻って来ました。

本日のプログラムは、

1.ヴォイチェフ・キラール 「オラヴァ」
2.ショパン 「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」 仲道郁代(Pf)
3.ラフマニノフ 「交響曲第2番」(ノーカット全曲版)

というものです。
今日のコンサートマスターは高木和弘さん、第2ヴァイオリンのトップには、舘野泉さんの子息であるヤンネ・舘野さんが坐っています。

第1曲の「オラヴァ」は、第1・第2Vn、Vla、Vcが各2にCbが1の弦楽セクションだけのきわめて小編成で演奏されます。作曲家のキラールは、1932年ポーランドのリヴィウ(現在はウクライナ)の生まれで、現在も活躍中の作曲家だそうです。映画「戦場のピアニスト」の音楽を担当しており、ミニマル・ミュージックを志向する方だそうですが、ジョン・ケージの「4分33秒」のような奇矯なところはありません。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが、1小節単位の単純なモチーフをくり返しているうちに、音楽が少しずつずれてきて、そこにヴィオラやチェロ、コントラバスが加わり、次第に盛り上がりを見せます。ラヴェルの「ボレロ」の現代的かつ弦楽版みたいな音楽、といったらわかりやすいでしょうか。なかなか緊張感と力感のある音楽でした。

続いてオーケストラの編成が拡大され、ピアノがステージ中央にすえられて、仲道郁代さんと飯森さんが登場します。飯森さんと桐朋学園の同級生だという仲道さんは、たいそうキュートな藤色のドレスです。本日のプログラムは、キラールとポーランドつながりのショパン。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の前半のピアノ独奏部では、やわらかくコントロールされた美しい音で、きらきらとした玉を転がすような音楽を聴かせてくれます。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれた対抗配置のオーケストラが入ってからは、ダイナミックな激しさも見せますが、ピアノ主体によくコントロールされた音楽となっていました。
拍手に応え、仲道さんからショパンの「子犬のワルツ」を。コロコロと、実に軽やかな演奏でした。

休憩のあと、ラフマニノフの交響曲第2番です。ノーカット全曲版で、およそ1時間かかります、と指揮者のプレトークで説明がありましたが、ほんとにそのとおり。先にプレヴィンの演奏でこの曲を取り上げたばかり(*)ですが、地元でこの曲の全曲版の演奏を聴けるとは思っていませんでした。実演に接して初めて理解したのは、ティンパニや大太鼓がずいぶん活躍していること、多くの楽器に少しずつ、美しい旋律のソロを取る部分があること、などです。このあたりは、CDを通じて音楽全体を聴いているだけではわかりにくく、実演で初めて理解できたところです。

客席からは大きな拍手。特別首席コンサートマスターの高木和弘さんが、今日は隣に坐っている、山響コンサート・ミストレスの犬伏亜里さんに何か話しかけています。にこやかな表情です。演奏終了後の解放感かな。

ところで、本日の演奏は、テレビ収録されていたそうです。現在、山形放送で半年かけて「音楽を奏でる街」(仮題)というドキュメンタリーを制作中なのだとか。客席にはナビゲーターの金本美紀アナウンサーや山内プロデューサーもおられたそうで、今年の秋11月放送予定とのこと。こちらも今から楽しみです!

(*):ラフマニノフ「交響曲第2番」を聴く~電網郊外散歩道

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8 コメント

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良い時間を (さちこ)
2008-05-11 07:55:02
おはようございます。
良い時間を過ごされたのですね。
最近は、プレトークというのが定番なのでしょうか。親近感が持てますね。
高木和弘さんは、山響!におられるのですね。
幼なじみ?の友人で先輩に当たる人です。
続きの記載、楽しみにしております。
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はじめまして (ぶりちょふ)
2008-05-11 11:11:48
新潟県長岡市から山形へ行くのはとても楽しいです。新潟はコンサート専用大ホールと東響定期があるのが楽しみな反面、地元プロオケがないことで山形や仙台がとても羨ましいです。山響はサッカーのクラブチーム並みのファンサービスがあって素晴らしいと思います。また音楽監督の登場回数が他に類を見ないほど多くて特徴がよく出ていますね。

ところで昨日の飯守さんのプレトークの最初、あれはお芝居だったのではありませんか。ご自身のプログを意識してのこと、あるいは本当に声が出ないのだというアピールだったと睨んでおりますw。

飲食、温泉、コンサートと楽しみの揃った山形への旅。長岡に住んでいる間続きそうです(単身赴任なもので)。今後ともよろしくお願いします。
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お久しぶり (n.anastasia)
2008-05-11 16:26:21
PCの調子が悪くて、日本語で打てなくなってしまい、
ご無沙汰していました。

今日は、久々に、日本語で、記事が書けたので、嬉しいです。

コンサート、楽しんでいらっしゃったのですね。

では、お元気で!
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さちこ さん、 (narkejp)
2008-05-11 20:22:17
コメントありがとうございます。山響の演奏会は、毎回たいへん楽しみです。故郷にUターンして嬉しかったことの一つです。プレトークは、毎回趣向を凝らし、面白いですよ。高木和弘さんは、特別首席コンサートマスターということで、音楽監督の飯森さんが振る時には客演することが多いです。ドイツ時代からのコンビなのでしょうか。それだけ信頼があるということでしょうね。演奏時も、音楽に没入されているのがわかる、ダイナミックな動きです。
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ぶりちょふ さん、 (narkejp)
2008-05-11 20:35:10
はじめまして。コメントありがとうございます。新潟県、しかも比較的近場の村上市あたりではなくて、長岡から山響演奏会へおいでいただき、嬉しいかぎりです(^_^)/
おっしゃるとおり、山響のファンサービスは大変ありがたく、毎回工夫が見られ、嬉しいかぎりです。今回の飯森さんのプレトークのハプニングの真相は、どうだったのでしょうね。あのあと発熱してたいへんだったそうですが、健康あっての音楽家商売ですので、ぜひ大事にしていただきたいところです。
同じ単身赴任の境遇のご様子、飲食、温泉、コンサートと、山形をお楽しみください。こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いします。
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n.anastasia さん、 (narkejp)
2008-05-11 20:40:14
コメントありがとうございます。パソコンの日本語環境が復活して、良かったですね。ブログに思い通りの記事が書けないと、けっこうがっかりしますから、日本語を使えないのは痛手です。
n.anastasia さんの記事の動画を、面白く拝見しております。単身赴任のアパートでは、低速のADSLですので、動画も時々カクカクするのですが、なんとか様子はわかります。自宅では光ですので、週末には家で楽しむことができますよ。
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オラヴァ (balaine)
2008-05-13 13:25:02
不勉強で知らないのですが、キラールのオラヴァの編成は2,2,2,2,1なのでしょうか?
山響酒田公演では、第1Vnから順に、5,4,3,2,1の計15名で演奏されました。テルサでは9名だったのですか?会場で編成を変えたとすれば興味深いですね。

仲道さん、アンコールでは「子犬のワルツ」を弾かれたのですね。酒田では「幻想即興曲」でした。
ラフマニノフは素晴らしい演奏でしたが、美しい旋律が多いものの、私はなんだかステーキに骨付きラム肉に鴨肉にとんかつまで食べさせられたような、満腹というよりげんなりという感触を持ってしまいました。
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balaine さん、 (narkejp)
2008-05-13 20:19:44
コメントありがとうございます。キラールの「オラヴァ」の編成は、かなり前列のほうから見上げるように数えましたので、正確ではないかもしれません。上から見た balaine さんの 5,4,3,2,1 というのが、なんだか数学的で、いかにもミニマル・ミュージック的ですね。
ラフマニノフの喩えは、いかにも balaine さんらしい、グルメな表現で、思わず笑ってしまいました(^o^)/
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