電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響モーツァルト交響曲全曲演奏会で、初期交響曲と戴冠式ミサ曲を聴く

2009年08月02日 10時33分37秒 | -オーケストラ
夏の音楽三昧、山響のモーツァルト交響曲全曲演奏会シリーズも3年目に入り、第7回目となった今回は、珍しい交響曲を二つと「戴冠式ミサ曲」というプログラムです。出先から妻と合流、二人で出かけました。実は、今年のモーツァルト定期三回分の会員券が、妻の誕生日の贈り物でした(^o^)/
会場入り口で座席指定券と引き換えて、山形テルサホール内へ。涼しくて気持ちがいいです。さっそく飯盛範親さんのプレ・コンサート・トークです。

1曲め、交響曲ヘ長調K.75 は、番号のない交響曲です。実はスケッチも見つかっていなくて、本物かどうか疑問もあるのですが、今日は本物のつもりで演奏したいと思います。1771年、モーツァルトが15歳で、イタリア旅行からザルツブルグに帰った直後にあたるのでしょうか、明るく清々しく、内容は濃い曲です。メヌエットが第2楽章に置かれているのが特色です。
2曲め、交響曲変ロ長調K.45b は、初めは偽作視されていましたが、パート譜が見つかり、本物であることが明らかになりました。モーツァルト12歳、ウィーンに行ったときに書いたものでしょうか。明るい曲ですが、ジュピター交響曲の出だしの音、フリーメイスン結社のテーマとも言われている「ドレファミ」がすでに使われているところが、興味深い曲です。
休憩後、戴冠式ミサ、ハ長調K.317 を演奏します。合唱は、山響アマデウスコア、今回のプログラムは、時間にしては短いですが、中身は濃いものです。戴冠式ミサのそれぞれの曲の意味は、(1)キリエ:ギリシャ語で「主よ」、(2)グローリア:ギリシャ語で「栄光が」、(3)クレド:ラテン語の動詞で「信じる」、(4)サンクトゥス:聖なるかな、(6)アニュス・デイ:神の子羊よ、というものです。それぞれの歌詞は、パンフレットに挿入した歌詞カードをごらんください、とのこと。おや、さすがの飯森さんも、うっかりベネディクトゥスを抜かしてしまいましたね。

そして楽団員の皆さんの登場です。いつもどなたが先に出てくるのか面白く見ているのですが、今回の一番先頭は、第2ヴァイオリンのトップのヤンネ館野さんでした。女性奏者の方々は、恒例のカラフルな衣装です。

1曲め、交響曲ヘ長調K.75。パンフレットでは、楽器編成について、Ob(2)、Hrn(2)、弦五部となっていますが、実際にはファゴットの高橋あけみさんも加わっています。第1楽章、ヘ長調、アレグロ、4分の3拍子。第2楽章:メヌエットとトリオ、ヘ長調、4分の3拍子。第3楽章:アンダンティーノ、変ロ長調、4分の2拍子。木管がひなびた美しいロングトーンを奏でます。第4楽章:アレグロ、ヘ長調、8分の3拍子。軽快なフィナーレ。ホルンが活躍します。

2曲め、交響曲変ロ長調、K.45b(K.Anh.214)。Anh(アンハング)というのは、偽作視されている作品につけられる番号のようですが、これはベルリンの図書館からパート譜が見つかり、めでたく Anh. が取れた作品ということになります。楽器編成は、Ob(2)、Hrn(2)、弦五部となっていますが、同様にファゴットの高橋あけみさんがはいります。ホルン(*)も、素人音楽愛好家には詳細不明ですが、ナチュラルホルンの(たぶんF管からB管に)楽器を取り替えて着座します。
第1楽章、いかにもモーツァルトの初期交響曲らしい、変ロ長調、4分の3拍子のアレグロです。短い楽章です。第2楽章、アンダンテ。オーボエとファゴットは出番がありますが、ホルンはお休みです。第3楽章はメヌエットとトリオ。ヴァイオリンの両翼配置の効果が面白い。第4楽章、アレグロ、変ロ長調、4分の2拍子。

ここで休憩が入り、ステージ上では合唱のメンバーのための台が設けられ、楽器配置もやや変わります。ヴァイオリンの両翼配置は変わりませんが、第1ヴァイオリンも第2ヴァイオリンも第5プルトまでの10人体制ではなく、第4プルトまでの、少々小ぶりの編成になっているもよう。しかも、第4プルトはステージ奥に折れ曲がる形で、第1ヴァイオリンの第4プルトがチェロの後ろに続くかっこうになり、さらにその後ろに3台のコントラバスと小型のオルガンが並ぶ、というふうになっています。特徴的なのはヴィオラがないことで、本来はヴィオラの位置に、トロンボーン3本とバロック・トランペットが2本、そしてその後方にバロックティンパニが配置されます。正面の指揮者の向こうには、4人の独唱者が立ち、その奥にはファゴット1本とオーボエ2本、ホルン2本が並びます。オーケストラと合唱団のメンバーが揃うと、視覚的にもなかなかの迫力です。

戴冠式ミサ曲の演奏が始まると、第1曲めの冒頭「キリエ」の出だしの「キ」の音の強さ(*2)に驚きます。ノン・ヴィヴラート奏法が音楽に実に良くマッチし、合唱の輝かしい感じを演出しています。うーん、作曲当時のオーケストラの編成の都合上、ヴィオラ・パートが省かれてしまったのは残念でしたが、クラリネットやヴィオラのない分の内声部の弱さを、オルガンなどが補っている形になっているのでしょうか。途中、見事なソロや合唱に聞き惚れてしまい、すっかりメモをする手が動きませんでしたが、「ベネディクトゥス」で四人の独唱者が立ち、ヴァイオリンとホルンとファゴット、それにコントラバスとオルガンとのアンサンブルが展開されるところなど、実にお見事の一言です。人の声の質からして、やはり盛大にヴィヴラートのかかった音よりも、バランスが自然で澄んだ感じがします。「アニュス・デイ」、はじめソプラノが立ち歌います。オーボエと女声との対比とハーモニー。四人の独唱者に合唱が加わり、バロック・ティンパニが強打される音色も格別に良いものです。

演奏が終わると、聴衆もほっと緊張がとけて、盛大な拍手。飯森さんは、四人のソリストを、そして合唱音楽監督の佐々木正利(岩手大学)氏と合唱指揮の渡辺修身(山形大学)氏をステージ中央で紹介し労を讃えます。テノールの宮下通氏がメンバーの一人として加わる合唱も、若々しくかつ質の高い、素晴らしい出来栄えだったと思います。
演奏した山響楽団員についても、まずオーボエの素晴らしさを称え、次いでティンパニ、ホルン、トロンボーンなど管楽器、オルガン、コントラバスとチェロの低弦パート、最後に両翼のヴァイオリンを讃えます。うーん、今回もいい演奏会でした。

翌8月1日には、同一プログラムで、人口約二万人の河北町での演奏会だとか。演奏会としては有名大曲をそろえたプログラムも良いけれど、こうした企画の演奏会が一定の聴衆を獲得し定着していることに、合唱の長い伝統を持ち、東北で最初にプロ・オーケストラが誕生したという歴史を持つ音楽県山形の喜びと誇りを感じます。

ただし、駐車場の帰りの混雑は相変わらずです。いつもは混雑を避けてファンの集いに参加し、ゆっくり会場を出るのですが、先夜は娘夫婦が転勤で東京勤務となったとのことで、泊まりにきておりました。演奏会の間に、若夫婦があちこち挨拶回りに出ておりましたので、急いで帰ろうとしたのですが、結局は大勢に影響がなかったようで(^o^;)>poripori

(*):ゆっくり起床~山響ホルン奏者クロヤギさんこと八木健史さんのブログより
(*2):山形弁では、例えば霧子さんの名前を呼ぶとき、k音が少々呑み込まれるように柔らかく発音します。でも、東京弁や関西弁では、子音kを明確に強く発音します。ご本人の好みによるでしょうが、土曜時代劇「陽炎の辻3」で一番割にあわない気の毒な役柄になっている霧子さんは、山形弁で柔らかく呼ばれるのが好みなのではないかと愚考する次第(^o^;)ですが、ここでは「主よ!」と呼びかける内容からして、子音をはっきりと強く発音する必要があるのは明らかです。
(*3):演奏会の後、自宅で娘夫婦と一緒にビールで乾杯。翌朝はまた主催するイベントに出かけ、夜は地域行事でビアガーデン。結局、記事を書くのも本日になりました(^o^)/

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