電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

角田光代『彼女のこんだて帖』を読む

2014年12月03日 06時03分46秒 | 読書
講談社文庫で、角田光代著『彼女のこんだて帖』を読みました。2005年~2006年頃に雑誌に連載されたものに何編かを加え、きれいな写真付きの料理のレシピを添えたもので、カラー写真を美しく印刷するために、やけに厚手の紙を使っています。どうも通常の文庫本のページよりも、めくりやすさの点ではやや難ありですが、写真を見ていると、うーむ、実に美味しそうであるなあ(^o^)/

本書の内容構成は、次のとおり:

1回目のごはん 「泣きたい夜はラム」
2回目のごはん 「恋のさなかの中華ちまき」
3回目のごはん 「ストライキ中のミートボールシチュウ」
4回目のごはん 「かぼちゃの中の金色の時間」
5回目のごはん 「漬けもの名鑑」
6回目のごはん 「食卓旅行 タイ編」
7回目のごはん 「ピザという特効薬」
8回目のごはん 「どんとこいうどん」
9回目のごはん 「なけなしの松茸ごはん」
10回目のごはん 「恋するスノーパフ」
11回目のごはん 「豚柳川できみに会う」
12回目のごはん 「合作、冬の餃子鍋」
13回目のごはん 「会心の干物」
14回目のごはん 「結婚三十年目のグラタン」
最後のごはん 「恋の後の五目ちらし」
ストーリーに登場するごはんの おいしいレシピ

いずれも、ごく短い中に、失恋や離別、独身の寂しさや夫婦の気持ちのズレなどを織り込み、それでも食べることを通じて生きることを再開していくというお話になっています。



もちろん、本書にはあまり深刻なドラマはありません。例えば「ピザという特効薬」では、年の離れた高二の妹が、数か月前の夏から急にダイエットを始め、まったくといっていいほど食事を取らない。生野菜やリンゴしか口にしないという状態が、もう三ヶ月も続いているという状況です。高二という年代的には、摂食障害というか神経性無食欲症の発症を疑っても良い状況だと思いますが、本書ではピザを一緒に作ることでめでたく解決。同様に、多くの出来事がわずか8~9ページ程度で解決されてしまいます。おそらくは、『月間ベターホーム』という初出誌の性格とも関連して、あまりに深刻な話題や展開は不適当という判断が無意識のうちに働いているのでしょう。

読後、いちばん食べてみたいなと思ったのは、亡き妻を追憶する「豚柳川できみに会う」でしょうか。年代的にもよく理解できるもので、これはよかった。単身赴任の頃に読んでいたら、実用的にも役立ったことでしょうが、切なさも倍増だったことでしょう(^o^;)>poripori


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