電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第225回定期演奏会でドヴォルザークとシベリウスを聴く

2012年12月17日 06時02分28秒 | -オーケストラ
忘年会明けの土曜日は、ほぼ沈没しておりましたので、日曜の午後、山形交響楽団第225回定期演奏会に出かけました。会場の山形テルサホールに着いて、お客様を観察していると、なんだかいつもよりもご年配の方々が多いように感じます。頭が白いというだけでなく、山響創立名誉指揮者の村川千秋さんと一緒に時代を過ごしたような年代と思しき方々です。それと比べれば、当方などまだまだ青二才かも(^o^)/

さて、今回のプログラムは、

1. シベリウス:弦楽のための「即興曲」
2. ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
3. シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43
 チェロ:堤 剛
 村川千秋 指揮 山形交響楽団

となっています。記念すべき第200回定期演奏会を、親戚の急な葬儀のために諦めただけに、村川千秋さんの指揮姿に接するのは、引退後初めてかも。本当にしばらくぶりです。とくに、過去のシベリウス定期を毎年ずっと聴いていただけに、またシベリウスが聴けるのがうれしく、楽しみにしていました。

最初の曲目は、シベリウスの弦楽のための「即興曲」です。ステージには、左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、そしてチェロとヴィオラの後方にコントラバス(4)という配置です。とても静謐な、音楽が凝縮されたような美しい弦楽合奏でした。

続いて、ドヴォルザークのチェロ協奏曲です。楽器編成は、8-8-6-6-4 の弦楽セクションに加えて、フルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)、さらにその後方にホルン(3)、トランペット(2)、最後列には打楽器(トライアングル等)とティンパニ、トロンボーン(3)、チューバが並びます。拍手を浴びて、本日のソリスト堤剛さんと指揮の村川千秋さんが登場します。

第1楽章:アレグロ。ヴィオラとチェロとコントラバスを背景にして、クラリネットが提示する主題に始まり、ファゴット、そしてフルートとオーボエに移行する、あの印象的な始まり。比較的ゆっくりめのテンポです。ホルンが入り、オーケストラ全体が活発に動き出します。たぶん、スコアはぎっしりと書き込まれているのでしょう。ティンパニが動き、クラリネット、そしてオーボエやフルートが印象的な一節を歌い、独奏チェロの出番へ、期待は高まります。待ちに待ったチェロの登場!気合と気力、雄渾な音楽が始まります。そうしたら、なんだか胸がいっぱいになってしまいました。ああ、私がまだ若かった頃、1969年の大阪国際フェスティヴァルで、気鋭のチェリスト堤剛さんと日本フィルがこの協奏曲を演奏していたんだなぁ。1972年に山形交響楽団が誕生し、それから私にもいろんなことがあって、今こうして40周年を迎えているんだなあと思うと、過ぎ去った時の流れが愛おしく感じられます。人はこうしていろいろなものに別れを告げていくのかも。
第2楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ。木管に続き歌い出される、思いをいっぱいに載せたチェロ、これを支える村川さんの棒。遅めのテンポにもかかわらず、よく歌うアンサンブル。弦のピツィカートをバックに、ホルンが気持ちよく響きます。ああ、いいなあ。ドヴォルザークが書いた、実に見事な緩徐楽章を、大きなエネルギーで表現していきます。これまで、この曲は壮年の音楽だと思っていましたが、必ずしもそうではないのだと、認識を新たにしました。
第3楽章:アレグロ・モデラート。チェロとコントラバスが低音でリズムを刻む中で、ホルンが、次にオーボエとクラリネットが印象的な一節を吹いて始まります。トライアングルが響き、ティンパニが打たれ、オーケストラが力強く演奏する中で、独奏チェロが雄渾な音楽を奏でます。こうなると、もう余計なメモなど忘れて、ひたすら音楽の中に浸るのみです。

格別に暖かく熱のこもった拍手に応えて、堤さんのアンコールは、カザルスの「鳥の歌」。最高音の最弱音まで駆使した表現に、聴衆全体が思わずじっと聴き入ってしまいました。

15分の休憩の後は、ホルンが4本、トランペットが3本に増えて、クラリネットは2本ずつ持参。オーボエに合わせ、コンサートマスターの犬伏さんが立ち、チューニングをします。これこれ、この音です。思わず期待が高まる時間。たまりませんね。

最後の曲目、シベリウスの交響曲第2番。
第1楽章:アレグレット。くっきりと描き分けられる、楷書のシベリウス。でも、しなやかな弦は弾力があります。第2楽章:アンダンテ・マ・ルバート。コントラバスとチェロのピツィカートから、ティンパニのドロドロ~。これにファゴットが加わり、あの出だしになるのですね。二本のファゴットがいいなあ。弦とホルンとか、低弦と金管とか、迫力と力感ある表現がすごい。以下、メモは断片的にしか残っていませんが、時に鋭さのある、極めて真剣な音楽になっていると感じます。また、金管部隊の見事な活躍を書き留めておりますし、じりじりと盛り上げるエネルギーは、憧れか祈りか、とてももうすぐ80歳の音楽とは思えません。金管がひときわ高々と鳴り響く中で、高揚のフィナーレです。ああ、良かった。

演奏が終わり、鳴り止まぬ拍手に、創設名誉指揮者の村川千秋さんがご挨拶。
(1) 地方の文化は、そこに住んでいる人が作るもの。
(2) あと2週間で80歳になります。元気で長生きしましょう。今後も山響をよろしく。



うーむ。飄々とした表情の下に、きわめて熱いメッセージがありました。堤剛さんと村川千秋さんは、留学先のインディアナ大学で同室だったそうな。山響創立後、第2回と第4回の定期演奏会に客演してもらったものの、お客さんが入らず、ギャラも払えなかった時代もあったらしい。山本直純さんや岩城宏之さんなど、才能ある人たちの中で、自分にできることは何かを考えとき、故郷にオーケストラを作ることならできるだろうと考えたのだそうです。オーケストラは、しっかりと定着するのに、50年はかかる。それまで、山響はあと10年。あと10年、しっかり支えてほしい、という願いを、聴衆も確かに受け止めたことでしょう。

実は、この日は、別会場でモーツァルトの「フィガロの結婚」を上演していたのでした。聴衆の入りが7~8割にとどまったのは、前日に続き二日目の公演であることに加えて、「フィガロ」とのバッティングも影響したのかもしれません。金曜夜の忘年会で沈没していましたので、土曜に山響、日曜に「フィガロ」の音楽三昧はかないませんでしたが、本当にしばらくぶりに村川さんの元気な姿を拝見して、安心したことでした。

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