電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

万城目学『鹿男あをによし』を読む

2012年12月30日 06時03分20秒 | 読書
幻冬舎刊の単行本で、万城目学著『鹿男あをによし』を読みました。本書の表紙には、朱雀門と思われる丹塗りの柱の建物を背景に、ネクタイをした若い男性(主人公の臨時の先生)と、白い剣道着に胴を付け、左手に竹刀を持って小首を傾げた少女(堀田イト)が立ち、間にスラリとした雌鹿がこちらを見ているイラストが描かれています。そして、地面には "The fantastic Deer-Man" とあり、おそらく英語の題名かと思われます。



「あをによし」を "fantastic" と訳す! なるほど、「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫(にほ)ふがごとく 今盛りなり」は、「ファンタスティックな奈良の都は」という意味だったのですか!

本作品は、作者のデビュー第2作とのことです。
某大学の研究室で、28歳になる大学院生の主人公は、都合により奈良の女子校で産休の先生の代わりに勤めることになります。ところが、しょっぱなから生徒と対立し、授業もうまくいきません。そのうえ、鹿に話しかけられ、妙な役目を引き受けさせられるハメになります。卑弥呼に不思議な力を授けられ、地下の大ナマズを鎮める役割を負っている狐から鹿へ、先生は、なにやら重要物品を運ぶことになるのですが、鼠のせいで使い番の役目をしくじってしまいます。
この失策から人間社会を救うには、三校対抗剣道大会で優勝しなければならないのです(^o^)/
今、これを書いている私自身も、あまりの荒唐無稽さに思わず脱力してしまうほどですが、それはそれとして、けっこう面白く読めてしまいます。同じ作者の『プリンセス・トヨトミ』(*)へと続くホラ話の原型は、すでに出来上がっているようです(^o^)/

(*):万城目学『プリンセス・トヨトミ』を読む~「電網郊外散歩道」2010年2月
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