電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『東雲ノ空~居眠り磐音江戸双紙(38)』を読む

2012年02月08日 06時03分00秒 | -佐伯泰英
この一月に発売されたばかりの最新作『東雲ノ空』を読みました。佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズの第38巻です。
当ブログでは、平岩弓枝著『御宿かわせみ』シリーズを抜き去り、幕藩体制の下、大長編エンターテインメントとして、最長連載となっております。さて、どこまで続きますやら。

第1章:「橋上の待ち人」。磐音・おこんらの一行は江戸に到着するのですが、身代わり大作戦とは考えましたね。しかも、品川柳次郎・お有夫婦が一役買うとは、意表をついたグッドアイデアです。御寮のわきの農家を改築して、小さいながらも道場とするとは、よく田沼一派の妨害を受けなかったものと不思議です。
第2章:「一同再会」。金兵衛さんと由蔵さんの二人とも、空也クンを前に大感激。尚武館道場の再出発を東雲の空に誓います。利次郎は霧子を伴い父親に無事帰着の挨拶、意中の人・霧子さんを堂々と紹介します。なかなかすがすがしく立派です。
第3章:「霧子の迷い」。作者は、利次郎だけがホットな話題ではバランスが取れないと感じたか、辰平クンにも博多の箱崎屋の末娘お杏さんというお相手を急遽設定したようです。それにしても、雑賀の下忍から旗本家の次男坊の嫁にというのも、たしかに激変には違いありません。まあ、このコンビならお似合いだとは思いますが。そうしているうちに、弥助の正体も判明し、公儀お庭番衆の暗闘も描かれます。鵜飼百助さんには次男坊が後継となりそうですし、今津屋への押し込みも未遂で捕えてしまい、南町奉行所の笹塚孫一・木下一郎太とも再会し、江戸の人たちの半分くらいは挨拶を済ませたくらいかも。
第4章:……と思ったら、次の章は「挨拶まわり」という題でした。船宿川清にも挨拶を済ませて戻ってみると、弥助が帰っておりました。公儀お庭番衆の組織改変の立役者であった柴崎露庵のもとへ復命したとのこと。なるほど、公儀お庭番が組織に反して一人だけ磐音を助けるのはおかしい。それで、作者は弥助に組織を抜けるという措置を取らせたのでしょう。新たに故・佐々木玲圓の屋敷の主となった日向鵬斎とかいう者が訪ねて来ますが、あまり大物ではなさそうで、竹村武左衛門の娘の早苗が小梅村の尚武館道場に戻ってくるとか、身重のおこんの診察のために、桂川国端・桜子夫妻に会ったりとか、速水左近の奥方に挨拶し励ましたりするなど、なかなか多忙です。
第5章:「月命日」。徳川家基に殉死した佐々木玲圓・おえい夫妻の月命日の日に、坂崎磐音は監視の目をやり過ごし、佐々木家の墓所に参ったはずが、なぜか公儀お庭番道灌組の頭・甲賀臑八が単独で待ち受けていました。これも不自然な設定です。これまでの磐音の強さを知るお庭番ならば、集団で待ち受けるのが普通ですし、第一、なぜ佐々木家の隠し墓所を知っていたのかも解せない。死んだ雹田平なら不思議な透視術という説明もありましたが、甲賀臑八は登場早々に自爆です。あっけない!利次郎ではありませんが、「他愛もないな」と思ってしまいます(^o^)/
谷戸の淵のお茅さんのところへは、短気な佐野善左衛門が姿を見せ、江戸城内では田沼意次と御三家のやりとりがあって、速水左近の復活の可能性が出てきました。あまり強くもないのに出番の多い蟋蟀駿次郎という武士は、今後どんな役回りを演じるのか。たぶん、磐音・おこんの子供の誘拐とか、卑怯なものだろうと想像しますが、さて、どうか(^o^)/

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