電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューマンの交響曲第1番「春」を聴く

2012年02月22日 06時01分26秒 | -オーケストラ
早春の時期に、通勤の音楽として、シューマンの交響曲第1番「春」のCDを棚から取り出すのは、毎年のことです。冬空の晴れ間からのぞく太陽の恩恵を感じながら、車内でこの音楽の始まりを聴くのは、たいへん気持ちの良いものです。

Wikipediaによれば、作曲は、クララと結婚した翌年の1841年の1月~2月のごく短期間で行われたとされています。楽器編成は、Fl(2),Ob(2),Fg(2),Hrn(4),Tp(2),Tb(3),Timp.,Triangle,弦5部。

第1楽章:アンダンテ・ウン・ポコ・マエストーソ~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ。変ロ長調、序奏つきのソナタ形式。出だしのホルンとトランペットによるファンファーレ風の動機が、早春の朝、雪原に太陽が輝き始める田舎の情景に、いかにもぴったりなのです。初版には与えられていたという表題「春の始まり」に共感します。続く速いテンポの主部では、日差しの暖かさを感じながら、運転するドライバーも幸福感に包まれます。随所で鳴るトライアングルが、キラキラした光を添えるようです。
第2楽章:ラルゲット。変ホ長調、8分の3拍子、三部形式。もともとは「夕べ」という標題を持っていたそうで、シューマンらしい、夢見るような旋律と響きを持つ緩徐楽章です。でも、シンコペーションのせいか、それとも早春の季節のせいか、眠くなることはありません(^o^)~アタッカで第3楽章へ。
第3楽章:スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ。ニ短調、4分の3拍子。もともとは「楽しい遊び」という標題を持っていたそうで、なるほど、そんな感じ。適度な輝かしさと二種類のトリオを持つスケルツォです。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ・アニマート・エ・グラツィオーソ。変ロ長調、2分の2拍子。「春たけなわ」という標題が与えられていたそうですが、まったくその通りの印象です。ソナタ形式によるフィナーレで、第1主題は春の祭りのように、第2主題はバッハの「農民カンタータ」を思わせるところもあります。短い展開部を終え、再現後に速度を速めて、曲は幸福感の中に閉じられます。

この交響曲が感じさせる、沸き立つような春の喜びは、春を待ちこがれる北国の音楽愛好家にも、たいへん共感をよぶところです。ローベルト・シューマンのように、クララのような新妻がいてもいなくても、春の到来は嬉しいものですね~。

参考までに、演奏データを示します。なお、括弧内は録音年です。
■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1958)
I=9'50" II=5'54" III=5'38" IV=9'03" total=30'25"
■カラヤン指揮ベルリンフィル(1971)
I=10'41" II=6'17" III=5'52" IV=7'22" total=30'12"
■スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ(1986)
I=11'50" II=6'05" III=4'36" IV=9'15" total=31'41"
■クーベリック指揮バイエルン放送響(1979)
I=11'31" II=7'36" III=5'47" IV=9'44" total=34'38"
■飯森範親指揮山形交響楽団(2011)
I=11'37" II=6'40" III=6'04" IV=9'13" total=33'34"

大好きな曲だけに、全集LPやCDがずいぶん集まってしまいました。LPの全集は、たしか長女が生まれたときに、記念に購入したものでした。この中で、スウィトナー盤だけが1841年のシューマン自筆稿による録音で、第3楽章の短さは、第2トリオにあたる部分がまだ追加されていないためだそうです。また、カラヤン盤の終楽章も、慣習的なカットがある模様。それらを考慮すると、きびきびテンポで響きがよく整理されたセル盤、大オーケストラのレガートが美しいカラヤン盤、異色だが魅力ある自筆稿によるスウィトナー盤、悠然としたテンポで大きく盛り上げるクーベリック盤、進境著しい地方オーケストラによる情熱的な飯森・山響盤、ということになりましょうか。

録音については、パブリック・ドメインになったセル盤も充分に楽しめるものですし、その他の録音も、それぞれに美しい響きを再現してくれます。

ところで、そうは言っても思わず注目してしまうのが、録音に聴くホールの大きさです。山響盤は、いつも聴いている約800席の山形テルサホールでの録音です。そのため、ティンパニの迫力がすごい!トライアングルの聞こえ方も、しっかりと響いています。大ホールで大オーケストラを録音したものとは違い、カーステレオでも「音楽堂に満ちる楽の音」を体感することができます。これは、意外な収穫でした。もちろん、自宅のステレオ装置で聴いてみれば、このCD/SACDハイブリッド盤の自然な録音の良さが感じられます。
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