電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

伝ハイドン、弦楽四重奏曲第17番「セレナード」を聴く

2012年02月11日 06時01分10秒 | -室内楽
連日、厳しい天候の中で長距離通勤が続きます。緊張感が求められる運転を続けて自宅に戻ると、近代の緊張感に富み集中力を要求される音楽を聴くよりも、人懐こく、思わずほっとする音楽を聴きたくなります。たとえば伝ハイドンの弦楽四重奏曲第17番ヘ長調、Op.3-5「セレナード」です。

現在は、この作品3自体が偽作とされ、作曲者は R.ホーフシュテッター という名前の、バイエルンの坊さんなのだとか(*)。でも、そんなことはどうでもよろしい。いかにも初期のハイドン作品に見える(聞こえる)音楽は、いかにも楽しそう。ほっと息を抜くにはちょうどよいくらいです。

第1楽章:プレスト。優雅で快活、たしかにハイドンの初期作品と言われても疑わないでしょう。ホーフシュテッターさんの作品は、儲け主義の出版社のせいで妙な形で後世に遺ってしまいましたが、作品はたいへんチャーミングです。
第2楽章:アンダンテ・カンタービレ。いわゆる「セレナード」という名前の由来となった楽章です。第一ヴァイオリンが愛を歌うテノールで、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがピチカートでギターを模しているようです。むしろ「窓辺のセレナーデ」と言う方がしっくりきます(^o^)/
演奏は、なんといっても第一ヴァイオリンに魅力が必要です。その点、この録音では、美音とともに、よく歌うカンタービレで、魅力いっぱいです。
第3楽章:メヌエット。こちらは典型的な舞曲スタイルです。華やかな王宮のシャンデリアの下でというよりも、どことなく田舎風の味もあり、セレナードに応えて窓から抜け出した娘さんが、恋人と踊っているような風情があります。
第4楽章:スケルツァンド。ちょいと滑稽味を加えたフィナーレ。危うく見つかりそうになった恋人たちが、あちこち隠れて逃げまわるような風情です(^o^)/

CD は DENON の GES-9242。My Classic Gallery というシリーズの分売で入手したものです。録音データなどはまったく記載がありませんが、手元にある「The History of DENON PCM/Digital Recordings 1972-1987」という記録によれば、1983年の9月に、西ベルリン(当時)のジーメンス・ヴィラでデジタル録音されたもので、演奏はフィルハーモニア・クァルテット・ベルリン。東独の団体?いえいえ、れっきとしたベルリンフィルのメンバーからなる四重奏団で、エドワルト・ジェンコフスキー(Vn)、ワルター・ショーレフィールド(Vn)、土屋邦雄(Vla)、ヤン・ディーセルホルスト(Vc) と掲載されています。初出のLPは、「セレナード」「五度」「皇帝」という三曲を収録したもので、OF-7094 という型番であったようです。なるほど、それでこの魅力的な演奏なのだなと納得です。

■フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン
I=3'56" II=3'06" III=3'00" IV=2'10" total=12'12"

(*):伝ハイドンの「セレナード」、真の作曲者は修道士ロマン・ホフシュテッター~スケルツォ倶楽部
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