電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第15回モーツァルト定期で交響曲第14・18番とヴァイオリン協奏曲第3番を聴く

2012年02月05日 09時42分31秒 | -オーケストラ
大雪がまだ降りやまず、朝から除雪作業に追われましたが、土曜日は山響こと山形交響楽団の第15回モーツァルト定期演奏会の予定があります。お昼すぎにはくたびれ果てて、よほど行くのを止めようかと思いましたが、待て待て、今回はたしかヤンネ館野さんがソリストで、大好きなヴァイオリン協奏曲第3番を含むプログラムのはず、これは聴き逃してはもったいない、と一大決心で出かけました。案の定、除雪が間に合わない道路はすごいでこぼこの悪路で、カーステレオのCDプレーヤーも追従できずに音飛びするほどです。開場まぎわにようやく山形テルサホールに到着しました。

今回は、なんとかプレコンサートに間に合いました。曲目は、モーツァルトの「ファゴットとチェロのためのソナタ ロ長調、kv292(196c)より第1楽章」だそうで、チェロの首席の小川和久さんとファゴットの高橋あけみさんのデュオでした。小川さんは、NHK-TVの「おかあさんといっしょ」等に子どもたちと一緒に出演してもよく似合いそうな安心感のあるヒゲのおじさんで、チェロもあったかい音がします。高橋あけみさんは、パストラーレ室内合奏団の演奏会以来、ファンになったファゴット奏者です。このプレコンサートは、昨年の3.11以降に始まったもので、東日本大震災のチャリティコンサートとなっています。私も、なにがしかのお金を箱に入れてきました。少しでもお役にたてますように。

会場に入ると、しばらくして音楽監督の飯森範親さんのプレトークがありました。この大雪の中を聴きにきてくれたお客様への感謝と、今回のプログラムの曲目解説です。

1. 交響曲第14番 イ長調 K.114
2. ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.218
3. 交響曲第18番 ヘ長調 K.130

このうち、2曲の交響曲は十代の半ばに作られたもので、十代後半に作られたヴァイオリン協奏曲第3番との組み合わせとなっています。協奏曲のソリストのヤンネ館野さんは、山響の第二ヴァイオリンの首席奏者ですが、お母さんがフィンランド人で、お父さんがピアニストの館野泉さんです。最近は、お父さんと親子の共演もよくやっています、とのことでした。

さて、ステージ上の楽器配置は、左から第1ヴァイオリンが第4プルトまで8名、その奥にチェロ(5)とファゴット、右にヴィオラ(6)と右手前に第2ヴァイオリン(8)が並びます。コンサートマスターは高木さん、チェロのトップには小川さんが座ります。ヴィオラには首席の成田さんと客演首席奏者の恵谷真紀子さんが並び、第2ヴァイオリンにはヤンネさんの代わりに客演首席の佐藤一紀さんと中島光之さんが並びます。正面奥にはフルート(2)、オーボエ(2)、ホルン(2)が並び、最奥部にはコントラバス(3)という編成です。例によって、低音部にファゴットを配することで、リズミカルな軽やかさを意図しているのだろうと思います。

第1曲め、1771年、モーツァルトがイタリア旅行から帰ってきた年、対位法や和声学を学んできたモーツァルトは、イタリアでの朗らかな明るさをとり入れた音楽を作ります。それが、この交響曲第14番ということになります。第1楽章:アレグロ・モデラート。管楽器の中で、フルートとホルンは出番がありますが、オーボエはお休みのようです。明るく張りのある音楽です。第2楽章:アンダンテ。1st-Vnを中心に、やわらかに始まります。フルートはお休みでオーボエが使われます。優しくやわらかな音楽です。第3楽章:メヌエット~トリオ。中間部の、客演を含む首席による弦楽五重奏が美しかった!第4楽章:モルト・アレグロ。フルートとホルンが出番で、快活な音楽です。オーボエが入らないことによる音色、響きの違い、対照が意図されているのでしょうか。

さて、次はヴァイオリン協奏曲第3番です。ファゴットが退き、上下とも黒いソフトないでたちで、ヤンネ館野さんが登場します。
第1楽章:アレグロ。ヴァイオリン群はあまりとんがらず、中低域にバランスを置いて、重心低めの始まりです。ソロが始まると、長身を生かし、いかにも軽々と、楽しげに飛び回るようなモーツァルトの音楽が始まります。36人という編成のオーケストラとヴァイオリン・ソロとオーボエの掛け合いなど、実に透明で美しく楽しい。カデンツァは重音をふんだんに取り入れたもので、音楽評論家の安田和信さんの解説によれば、米国のヴァイオリン奏者サム・フランコ(1857~1937)のものだそうです。お見事!
第2楽章:アダージョ。始まりは、やはり中低音を生かしたふっくらとしたもので、ヴァイオリンソロの澄んだ音色が浮かび上がるように、という意図でしょうか。解説には、ヴァイオリンとヴィオラに弱音器を使用するとありましたので、おそらくその効果なのでしょう。たゆたうような音楽にフルートもアクセントをつけて、独奏ヴァイオリンがあたたかい音のカンタービレ。カデンツァも素晴らしいものでした。
第3楽章:やはり、始まりのバランスは、エッジのきいたものというよりは、ふっくら、ふんわりしたものです。リズミカルで、歌うように、はずむように。ピツィカートに乗って、雰囲気をかえて独奏ヴァイオリンが歌うところから、角笛のようなホルンのリズムを経て、先の主題が再現し、全曲が終わります。ああ、よかった!大好きなヴァイオリン協奏曲第3番を、堪能しました。

ここで、15分の休憩です。2階席からホワイエに降りて、ヤンネさんのCDを購入していたら、知人と息子さんに会いました。小学生の息子さんは、山響定期に毎回来ているのだとか。先のニューイヤーコンサートには、仕事で都合がつかなかったお父さんの代わりに、お母さんと一緒に聴きにきたとのことです。都会のオーケストラの演奏会は、聴衆の高齢化が進んでいるそうですが、われらが山響は、スクールコンサートの効果もあってか、若い人と女性の姿をよく見かけます。この点は、熱心な地方オーケストラに特徴的なことかもしれません。
知人親子と別れ、二階席に戻るとき、偶然にヤンネさんが階段を上がってくるところに出会いました。とっさに拍手の身振りで讃辞を伝えると、嬉しそうに喜んでました。当方の、歳に似合わぬミーハー精神は、依然として健在です(^o^)/

さて、最後の曲目、交響曲第18番です。弦セクションの編成は変わらず、オーボエ(2)のかわりにホルンが2本加わり、管楽器はFl(2)とHrn(4)となります。
第1楽章:pで弱く始まります。すぐに強く対照を見せ、ホルンが効果的。弦が、卓球でラリーを応酬するように、交互に受け渡す場面の面白さがあります。あるいは、4本のホルンも2本ずつピンポンのように。そうか、この曲は「ピンポン交響曲」なんだ!と一人で納得(^o^)/
けっこう劇的な効果もあるアレグロです。
第2楽章:アンダンティーノ・グラツィオーソ。チェロとコントラバスの首席がピチカートでリズムを刻む中で、弱音器をつけたヴァイオリンとヴィオラが優しく始まります。すぐにフルートとホルンも加わった合奏になります。この曲は、先の交響曲第14番のイタリア風な明朗さとはやや気風が変わり、フルートもアクセントのきいたドイツ語の発音のようにはっきりとした音で、対照を意識しているようです。チェロがけっこう忙しそう。
第3楽章:メヌエット~トリオ。3拍子のリズムがはっきりした短い活発なメヌエットです。
第4楽章:モルト・アレグロ。ミドルティーンのモーツァルトらしい、けっこうダイナミックな終楽章です。トゥッティでの4本のホルンはインパクトがあり、フルートは軽やかに。華のある音楽は、若いモーツァルトの創意を感じさせてくれます。



終演後、ファン交流会にちょこっとだけ参加しました。音楽監督の飯森範親さんは、ヤンネさんの力量を高くかっているようで、コンサートマスター級のヤンネさんがセカンドの首席で支えてくれているから、山響の高いレベルの演奏がある、と賞賛していました。また、今回や、次シーズンの中で犬伏亜里さんと成田寛さんのソロで「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」を演奏するように、オーケストラの団員がソロをつとめることの意義について、ソリストの立場から「もっとこうして欲しい」というオーケストラの弱点を理解することにもつながり、それをふだんの演奏に生かすことができる点でも有意義、と指摘。これは、ヤンネさんも同感のようでした。

31年ぶりの大雪に見舞われた今回のモーツァルト定期は、遠方からのお客さんは少なかったとみえて、駐車場から出る混雑はだいぶ緩和されて、すいすいでしたが、自宅に到着するまでの悪路は「やれやれ」とため息がでる状態で、家についたらのっそりと雪が積もっており、再び除雪に精を出すはめになりました(^o^)/
でも、せっかくのモーツァルト定期を堪能できたから、まあいいか~(^o^)/

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