電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

荒木源『ちょんまげぷりん2』を読む

2010年10月06日 06時01分36秒 | 読書
小学館文庫で、荒木源著『ちょんまげぷりん2』を読みました。前作では、江戸時代の侍である木島安兵衛が現代の東京に出現し、遊佐ひろ子・友也母子の家で熱心にお菓子づくりに取り組むお話(*)でしたが、さて今度の作品はどうか。

物語の始まりは、中学生になった友也が、なんとコンビニエンス・ストアで万引きをするというところからです。店員に追いかけられて、いつものスーパー前で江戸時代にタイムスリップ。はじめは安兵衛さんに会いにいけば大丈夫と軽く考えていたのが、安兵衛が営んでいるはずの菓子屋「時翔庵」はつぶれており、友也クンは途方にくれてしまいます。さらに、頭髪や身なりから紅毛人に間違われて追いかけられる始末。逃げ込んだ神社で、勝麟太郎という少年に会います。連れていかれたのは、麟太郎の従姉妹のせんという少女の屋敷でした。で、友也クンは色白で長身でイケメンであることから、歌舞伎の女形に化けて、芝居小屋で人気者になります。ところが、人気に舞い上がって瓦版屋にぺらぺらとしゃべった内容が江戸時代には禁句だったようで、御用の筋につかまってしまいます。間の悪いことに、なんと腕時計と携帯電話と塾の英語のテキストも見つかってしまい、容疑は鎖国の禁令を破り、紅毛人と通じたという疑いをかえられます。牢の中で安兵衛さんに再会できたのは良いけれど、この取調べというのが、現代風に言えば「検察のストーリーに合わせて自白させられる」というもの。偶然ですよね(^o^)/

せっかくの物語ですので、あらすじの続きは省略したしますが、大豆を原料にして豆乳からプリンを作るのに、大豆のえぐみを除去する方法がわからず苦労する、という点がポイントです。そしてその解決法も、なるほど、そうきたか!というほどに合理的。勝麟太郎といえば、後の勝海舟ですね。勝海舟の時代を越えた広い視野は、実は現代っ子・友也との友情に由来するというところが、タイムトラベルものの意外な面白さでしょう。そして、やや軽薄に育ちつつあった遊佐友也クンの成長ぶりも、ビルドゥングス・ロマンの王道を行くものであるとも言えます。

(*):荒木源『ちょんまげぷりん』を読む~「電網郊外散歩道」より
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