電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形Q第37回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、シューマンを聴く

2010年10月12日 06時01分52秒 | -室内楽
体育の日の夜、山形市の文翔館議場ホールで、山形弦楽四重奏団(*)の第37回定期演奏会を聴きました。幸いにお天気でしたので、日中は自宅の裏の果樹園に今年最後の肥料散布で汗をかき、シャワーを浴びてゆっくりしていたら、ゆっくりしすぎて居眠りをしてしまい、会場にぎりぎりセーフ。茂木さんのプレトークが終わるところでした。あぶないあぶない(^o^;)>

本日の曲目は、

◆シューマン生誕200年記念◆
(1) F.J.ハイドン/弦楽四重奏曲 イ長調 Op.20-6 ~太陽四重奏曲~
(2) W.A.モーツァルト/弦楽五重奏曲 第5番 ニ長調 K.593
(3) R.シューマン/弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41-3

となっています。

最初に、ハイドンの弦楽四重奏曲イ長調Op.20-6~太陽四重奏曲から。
第1楽章:アレグロ・ディ・モルト・エ・スケルツァンド。娯楽音楽として始まったはずのハイドンの弦楽四重奏曲も、バロック様式と立ち向かうこの時期ではかなり抽象的な響きの楽しみに変化しているようです。
第2楽章:アダージョ。1st-Vn が旋律を歌い、3人がゆったりとリズムを刻みながら、響きを支える形でしょうか。中声部のくすんだ響きが魅力的です。
第3楽章:軽やかで優雅なメヌエット。
第4楽章:アレグロ、三声のフーガ。ハイドンは、バロック様式をずいぶん研究した模様。でも、三声のフーガとはいってもバッハ風ではなくて、あくまでも柔らかく健やかなハイドン風のフーガです。

続いて、ヴィオラの田中知子さんを加え、モーツァルトの弦楽五重奏曲第5番、ニ長調K.593 です。
第1楽章:ラルゲット~アレグロ~ラルゲット。チェロが問いかけ、他が答える形で始まります。チェロが、澄んだいい音です。この頃モーツァルトは、人気が低迷し、経済的にも行き詰まっていて、ハイドンのトスト四重奏曲に名前が出てくるトストの依頼で作曲したのだそうな。どうやらモーツァルトは、「音符が多い」などと文句を言われることのない依頼主の注文にこたえて、思い切り腕をふるったようです。
第2楽章:アダージョ。こんどは逆に、Vn,Vlaから始まり、チェロが簡潔に答える形で始まります。途中のチェロのピツィカートのあたり、響きがとてもきれいです。ヴィオラは1人がヴァイオリンと、1人がチェロと一緒に奏するなど、細かく工夫された響きになっています。
第3楽章:メヌエット、アレグレット。2nd-Vn と Vla 2本と Vc のピツィカートの中で奏でられる 1st-Vn が気持ちよさそう。音程を取るのは大変そうですが、いかにもモーツァルトらしい、軽やかで美しい音楽です。
第4楽章:アレグロ。印象的な 1st-Vn のフレーズ。これを Vla と Vc が迫力で繰り返すとき、対比のおもしろさに思わず「なるほど!」と納得します。円熟期のモーツァルトの工夫なのでしょう。いかにも終楽章!という緊密な音楽に、五人のメンバーは集中しています。

ここで15分の休憩です。次回、新年正月の16日に開かれる第38回定期の前売券を、早々と購入してしまいました。(んー、受付の人ならわかっちゃうかな~(^o^;)>poripori まあいいか。)



三曲目は、私の好きなシューマンの弦楽四重奏曲第3番、イ長調Op41-3 です。
第1楽章:アンダンテ・エスプレッシーヴォ~アレグロ・モルト・モデラート。ああ、シューマンだ。いいなぁ~。思わず聞き惚れました。この曲は「間」が大切なのですね。絶妙の間のとり方に、シューマンらしい、夢見るような感じが出てきます。
第2楽章:アッサイ・アジタート~L'iestesso tempo~ウン・ポコ・アダージョ~テンポ・リゾルート。何者かに追い立てられるような焦燥感、それとも不安感を感じさせます。スケルツォのようですが、途中、フーガのような部分も。アダージョのところになると、変奏も悲しげで、最後に近い激しさは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の研究の成果でしょうか。ゆったりしたテンポに戻り、緊張感を保ちながら静かに終わります。
第3楽章:アダージョ・モルト。ヴィオラの響きが重要な役割を果たす楽章です。1st-Vn の甘美な旋律が、いいなぁ。2nd-Vn の刻みが、なにか運命的なものの歩みのようで、ちょっとコワい。チェロのピツィカートのところもステキです。
第4楽章:フィナーレ。アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ~クワジ・トリオ。立派なシューマンの音楽です。テンポは速すぎず遅すぎず。リズムのノリは力強く、気合の入った音楽、演奏です。全曲を貫く共通したイメージが感じられます。

ああ、良かった。聴衆の皆さんの拍手も盛大です。これにこたえて、アンコールがありました。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番の第3楽章。2nd-Vn,Vla,Vc がピツィカートを刻む中、1st-Vn がどこかジプシー風・民謡風の旋律を奏します。「屋根の上のヴァイオリン弾き」の風情です。途中、Vla の細かいリードで Vn も痙攣するような速いリズムに転じます。4人の息のあった演奏が続いた後で、最初のジプシー風の主題が回帰して、洒落たエンディングです。

最後に、次回のコメンテータらしい駒込綾さんが次回の案内を話しておしまい。

次回は、1月16日(日)、17:45開場、18:30開演だそうです。曲目は、

(1) ハイドン 弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.50-1~プロシャ王四重奏曲~
(2) ベートーヴェン 大フーガ 変ロ長調 Op.133
(3) ドヴォルジャーク 弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.51

とのこと。今から楽しみです。

(*):山形弦楽四重奏団ホームページ
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