電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

マーク・トウェイン『アーサー王宮廷のヤンキー』を読む(3)

2010年08月08日 06時01分34秒 | -外国文学
角川文庫版、大久保博訳、マーク・トウェイン著『アーサー王宮廷のヤンキー』の続き(*)です。

第21章「巡礼者」、第22章「聖なる泉」、第23章「泉の復活」、第24章「商売敵の魔法使い」、第25章「競争試験」。目的を無事に(^o^;)果たしたサンデーのおしゃべりから逃れられると思ったら、彼女は一緒についていくと言います。ザ・ボスことヤンキー君も、まんざら悪い気はしない様子。途中、「聖なる谷間を目指す巡礼者たちの一行に出会います。時代の解説者の役割を持つサンデーによれば、谷間に湧き出した泉の水が、浴場を作ったために一度涸れたのですが、浴場を壊したら再び湧き出したのだそうです。そして二百年が経過し、今また奇跡の泉が流れを止めたのだそうな。マーリンが魔法の力で泉を復活させようと骨を折っていることを知り、ザ・ボスはキャメロットに設置していた科学省に、ある物を至急送るように手配します。鞭に追われる奴隷の一団にも出会い、鞭打たれる少女と引き裂かれる夫の姿を見ながら、この時代の奴隷制度を崩壊させることを誓います。多分このあたりは、アメリカ南部社会の痛烈な風刺でしょう。
さて、マーリンにとって困ったことに、多くの観衆が泉の復活の奇跡を期待して見つめています。19世紀のエンジニアであるザ・ボスは、ひそかに井戸の水漏れ箇所を発見し、修理してしまいます。水位が次第に上がってくるのを待ち、タイミングを見計らって恐ろしげな呪文を唱えます。これがなんと、ドイツ語なんですね~。やれやれ(^o^)/
花火と火薬の閃光ショーは、泉の水がほとばしり出て最高潮!小汚い隠者たちに浴場をプレゼントしたのは、まさしく Good job! でした。ところがご本人がひどい風邪にかかってしまい、サンデーに看病してもらったのはいいけれど、疲れ切ったサンデーを尼僧院に残して散歩しているときに洞窟の中から「もしもし(ハロー・セントラル)!」という声が。なんと、キャメロットに通じる電話局だったのです。そこで、アーサー王たちが当地へ向かって出発することを知ります。到着は三日目の午後くらいになる、という予想も。インチキ魔法使いにとっては、本物のアーサー王が本当に到着するという受難の日になったわけですね。で、アーサー王がやったことは?家柄以外に取り柄のないアホな貴族を集めて、国王自身の連隊を作ることでした(^o^)/

第26章「最初の新聞」、第27章「ヤンキーと国王のお忍びの旅」、第28章「国王の特訓」、第29章「天然痘の小屋」、第30章「領主の館の悲劇」。中世の六世紀に発行された活版の新聞というのが愉快です。しかも、ちゃんと天地逆などの組版間違いまで入れてあり、素人っぽさを出すという凝りようです(^o^)/
アーサー王は、ザ・ボスと一緒にお忍びの旅に出るという冒険に乗り気になってしまい、止めようがありません。江戸の若殿が下々の様子を見にいくときは、ある程度予習が行き届いているものですが、この王様の場合はもう徹頭徹尾ずれています(^o^)/
たまたま入ってしまった天然痘の家で、病気で死んだ娘を腕に抱き、今にも死にそうな母親のわきに横たえてやる王様は、ちょいといい場面、実に英雄的です。善悪の基準も、階級の価値判断によるものであり、普遍的なものではない。根っからの王様の教育も、なかなか楽ではありません(^o^;)>poripori



聖なる泉の復活の場面は、てっきりニトログリセリンでぶっ飛ばすのだと勘違いしておりました。ニトログリセリンを使うのは、ジュール・ヴェルヌの『神秘の島』でしたね。こちらは単純に水漏れを直し、花火でショウアップするだけでした。しばらく再読していませんでしたので、どうも話がごっちゃになってしまっていたようです(^o^)/

(*):マーク・トウェイン『アーサー王宮廷のヤンキー』を読む(1), (2)~「電網郊外散歩道」
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