電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

藤沢周平と方言

2007年03月30日 06時47分49秒 | -藤沢周平
山形新聞夕刊では、藤沢周平没後十年の特集で、木曜日にときどきゆかりの人たちの記事を掲載しています。最近は、井上史雄さんの「方言の味わい(上・下)」でした。

前回は映画「たそがれ清兵衛」の中で使われている庄内弁のリアリティについての内容で、とくに方言の敬語の使用法について、ていねいに表現されていること。

父母を「おどはん」「おがはん」とよぶほかにも、「良うがんすか」「お聞きでがんしょが」「ごぐろうはんでがんした」「よぐござらした」など、上品な敬語であると指摘していました。標準語の敬語では、最近は特にビジネス界を中心に「目上の人にご苦労様は失礼。お疲れ様と言うべきだ。」などと堅苦しいのですが、身についた方言では年長者にも「ごぐろうさまでした」と普通に言います。このあたりも、地方の文化のゆかしさなのかも、と思います。

そして今回は、庄内弁オンパレードの『春秋山伏記』。これも実にいい作品ですが、藤沢周平は、この作品中で、かなり古い庄内弁を使っているそうです。例えば本作中の「焚火みでよだども」は、現在の鶴岡市では「焚火みでだども」となるのだそうな。地域により微妙に異なる言い回しで、出身地が特定できてしまうこともある方言。作中で意図的に使った古い方言は、作者が故郷を思い出しながら楽しんで書いたことを物語るのかもしれません。

写真は、庄内地方ではバッケと呼ぶらしい、東北の春の使者・フキノトウです。
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