電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューマン「交響曲第4番」を聞く

2007年03月11日 08時19分39秒 | -オーケストラ
シューマンの交響曲第4番は、複雑な経緯をたどった曲のようです。最初に作曲されたのは、交響曲第1番の直後で、実際は第2番よりも前でした。「交響的幻想曲」の構想をもとに作られたこの曲は、初演時の反応を見たシューマンが、後に金管楽器の用い方などを中心にした改訂を加え、第3番「ライン」の後に発表したために、第4番という番号がついているのだそうです。いわば、妻クララの誕生祝に贈った青年時の構想とアイデアは温存しつつ、壮年時の経験を織り込んだ曲、といえばよいのでしょうか。

改訂版では、全曲は通して演奏されます。
第1楽章、かなりおそく。暗めの重々しい序奏に始まり、次第に熱を帯びて活発に動き回ります。金管で奏されるファンファーレ風の動機が印象的です。
第2楽章、ロマンツェ、かなりおそく。抒情的でのどかな主題が魅力的です。独奏ヴァイオリンの下降音型は、いかにもシューマンらしい。指示のとおり、ロマンティックで感傷的な気分を持つ音楽になっています。
第3楽章、生き生きと。情熱的に始まる基本動機が繰り返し展開されます。さらに第2楽章の独奏ヴァイオリンの下降音型がオーケストラによりやさしく奏される中で、終楽章に移行します。
第4楽章、おそく。不安に揺れ動く弦楽の中に、ひときわ高々と奏される暗いファンファーレのような序奏。そして付点リズムで音の厚みと速度を増していき、興奮は盛り上がり最後の総奏にいたります。

全曲を通して演奏する、その接続部というか経過部というか、転換が実に見事です。木管の一吹きで、パッと場面が変わります。このへんが、シューマンの工夫なのでしょう。「交響的幻想曲」というオリジナルのアイデアに、だいぶ自信を持っていたのだと思われますが、まったくそのとおりだと感じます。

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による1960年の録音(SONY SRCR-2547、クリーヴランド、セヴェランス・ホール)は、速いテンポで力強くリズムの切れ味の良い、劇的でダイナミックな演奏です。どちらかというと主観的であるよりは明晰な音による造形的な演奏だと思いますが、録音の時期を考えると、驚くほど透明なオーケストラの音に思わず感動!です。これは、録音技術というよりは、もともとのオーケストラの響きがそうだったのだろうと思います。

オトマール・スゥィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレによる1987年のデジタル録音は、全体としてゆっくりしたテンポでじっくりと聞かせる演奏です。響きのバランスが中低音に強さがあり、腰の据わった音と言ってよいのでしょうか、独奏ヴァイオリンも派手に前面に出てくるタイプではないようです。旧東ベルリン、イエス・キリスト教会で、独シャルプラッテンとの共同制作になるDENON盤(COCO-70497)です。

もう一つ、この曲には、幸いにも我が山響のCD(オクタヴィア OVCX-00024)もあります。飯森範親指揮で高木和弘のソロ・ヴァイオリン、2005年7月の山形交響楽団定期演奏会のライブ録音です。会場は音響の良い山形テルサ・ホール。演奏が次第に熱を帯びてきて、終楽章の盛り上がりは実に見事です。幸福な出会いをした若い指揮者とオーケストラが、互いに全力を尽くした時間が記録されています。この演奏が、自主制作CDの第1号として選ばれたのも納得です。

参考までに、演奏データを示します。
■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管
I=8'40" II=3'51" III=5'10" IV=7'37" total=25'18"
■オトマール・スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ
I=10'58" II=4'07" III=5'38" IV=10'15" total=30'58"
■飯森範親指揮山形交響楽団
I=10'54" II=4'16" III=5'57" IV=9'33" total=30'40"
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