電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ディケンズ『デイヴィッド・コパーフィールド』第4巻を読む

2006年03月30日 21時24分15秒 | -外国文学
思いがけない春の雪にびっくりしたが、岩波文庫版チャールズ・ディケンズ著『デイヴィッド・コパーフィールド』の第4巻をようやく読了した。

ドーラに夢中になり恋に落ちたデイヴィッド・コパーフィールドは、ドーラの父・スペンロウ氏に交際を禁じられる。だが、スペンロウ氏の突然の死去により、ドーラは窮状に陥る。デイヴィッドはドーラを救うべく決意を新たにする。ウィックフィールド氏の弱みに付け込み、共同経営者に成り上がったユーライア・ヒープが、優しいアグニスを狙う意図をデイヴィッドに明かしたのは、デイヴィッドはドーラに夢中だから、話しても大丈夫だと安心したからだろうか。借金苦のミスター・ミコーバーがヒープのもとで働くことを危惧するデイヴィッドの心配も無理はない。
失踪したエミリーを探してやまないミスター・ペゴティは、デイヴィッドからエミリーが不幸な娘マーサに優しくしてやったことを聞き、マーサに協力を依頼する。
友人トラドルズと一緒に出かけたドーラの伯母さんたちの家で、ドーラと再会するが、善良なトラドルズを嫌ったり、現実を避けようとするドーラの愚かさと、恋愛に関する伯母さんたちのヘンさ加減が際立つ。
デイヴィッドが決意したのは、速記法を修得し、収入と生活を確立すること。ヒープが画策したのは、ストロング先生とその若い妻アニーとの溝を広げること。だが、ミスター・ディックのおかげで判明したのは、アニーが悩みの元凶-それはたえず邪魔をする母親の存在であり、夫ストロング氏の年齢ではなかった。ドーラはアグニスと仲良くなり、信頼を寄せる。
速記法を修得し、議会の論議を新聞に紹介する記事を書くとともに、小説を書きはじめ、デイヴィッドの収入はようやく安定する。デイヴィッドは晴れてドーラと結婚することになる。だが、愛し合う二人の実際の生活は幸せなものと言ってよいのだろうか。デイヴィッドを愛することについては疑いのない「赤ちゃん奥さん」のドーラ。その面倒を見ながら生活に奮闘するデイヴィッドの心に、「考え方と目的とが、互いに噛み合っていないような結婚ほど、夫婦の間に溝が出来るものはない」「心が未熟だったために誤った最初の軽はずみな行い」というアニーの言葉が、苦く響く。
あるとき、ミス・ダートルを通じて、失踪したエミリーの消息が知れる。故郷を懐かしむエミリーは、外国でスティアフォースに捨てられ、こともあろうに召使リティマーに与えられ、憤激し暴れたために監禁され、ようやく逃亡したというのだ。だがエミリーは、故郷ヤーマスの舟の家に帰ることができず、ロンドンにたどり着いたところをマーサに発見される。
デイヴィッドの方も、愛犬ジップの衰えと共に、愛するドーラが次第に元気がなくなり、衰弱していく。衰弱の原因はよくわからないが、この生活ぶりを見ると、どうも栄養失調のような気がしないでもない。そして、ユーライア・ヒープのもとで働くミコーバー氏は、何か秘密を持ち、人間性も歪みを生じたようで、ヒープを憎みののしる言葉を残して去る。

さて、最後の第5巻は、いよいよ悪党ユーライア・ヒープとの対決か。楽しみだ。
コメント