電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」を聞く

2005年09月08日 18時25分40秒 | -オーケストラ
台風14号は、幸いに何の被害もなく去り、涼しい秋の一日が過ぎた。こんなとき、充実した管弦楽の響きを楽しみたい。たとえば、この音楽、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」である。作品56-aが管弦楽版で、作品56-bが二台のピアノ用の曲だという。残念ながら二台のピアノのための曲は聞いたことがないが、オーケストラ版は好きで長年愛聴している。
演奏は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団、1964年10月、クリーヴランドのセヴランス・ホールにて録音されているCDで、セル/クリーヴランド管によるブラームスの交響曲全集(00DC-203~206)にフィルアップされたものだ。
門間直美氏の解説によると、この曲、第1交響曲を書き上げる前の1873年夏、トゥッツインクで作曲された、とある。三宅幸夫氏の新潮文庫版「ブラームス」によれば、彼の二曲の弦楽四重奏曲もどうやらこの曲と同じ時期の作らしい。ブラームスは、前年にウィーン楽友協会の芸術監督に就任しており、17世紀や18世紀の古い音楽を中心としたプログラムを組んだという。メンデルスゾーンのバッハ復興運動以後、理解者が増えていたとはいえ、かなり抵抗も強かったことだろう。いかにもブラームスらしいと思う。
私は、この変奏曲の最初の主題がお気に入りだ。やわらかな管弦楽の響きがとても魅力的だ。「コラール・聖アントニー」と記された主題と、それに続く多彩な8曲の変奏、そして終曲という古典的な技法の衣装をまといながら、内に秘めた音楽的な想念を、堂々と、かつ緻密に、次々に繰り出すさまは実に壮観である。オーケストラ演奏の醍醐味を味わう気がする。
この演奏を聴いたあとには、良い音楽と演奏を聴いたという充実感と満足感が残る。ずっと座右に置きたい一枚である。
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