評価
(3点/5点満点)
ポジティブ心理学の第一人者のひとりで、ハーバード大学で講師を勤めるショーン・エイカー氏が、仕事で成功するために活用すべき「幸福優位性」の力について紹介します。
ポジティブ心理学と脳科学の10年以上にわたる画期的な研究によって、成功と幸せの関係は、普通に考えられている矢印とは逆だということが、明解に証明されました。
すなわち、幸せは「成功に先行する」のであり、単なる「成功の結果ではない」ということです。幸福感や楽観主義は、実際に業績を高め優れた成果をもたらします。幸福感そのものが競争力の源泉となるからで、著者はこの力を「ハピネス・アドバンテージ(幸福優位性)」と呼んでいます。
成功と達成に関わる7つの法則
法則1 ハピネス・アドバンテージ
ポジティブな脳は、平常時の脳やネガティブな脳に比べて、生物学的な優位性をもつ。この法則から、脳を再訓練して積極性を高めることで、生産性や業績を改善する方法が学べる。
法則2 心のレバレッジ化
自分の置かれた状況をどのように経験するか、またその中で成功できるかどうかは、マインドセット、すなわち心の持ちようによって絶えず変化する。この法則から、幸せと成功をもたらすてこの力が最大になるように心の持ちよう(てこの支点)を調整する方法が学べる。
法則3 テトリス効果
ストレスや悪いことや失敗にばかり注目するパターンが脳の中に出来上がってしまうと、挫折への道に自らを追い込むことになる。この法則から、脳を再訓練して肯定的なパターン(ポジティビティ)を探せば、どんな状況からもチャンスが見出せるということが学べる。
法則4 再起力
挫折やストレスや困難のさなかでも、人の脳はそれに対処するための道を考え出す。失敗や苦難から立ち直るだけでなく、その経験があったからこそ、より幸せになり成功をつかむ道を見出せるということがこの法則から学べる。
法則5 ゾロ・サークル
大きな試練に圧倒されると、理性が感情に乗っ取られてしまう。まず達成可能な小さなゴールに注目してコントロール感覚を取り戻し、それから徐々に範囲を広げて大きなゴールを達成する方法を、この法則から学ぶことができる。
法則6 20秒ルール
人間の意志の力には限界がある。いい方向に変化してもそれを持続させるのは難しい。意志の力が尽きれば、もとの習慣あるいは「最も抵抗の少ない道」にずるずると戻ってしまう。この法則から、エネルギーの調整によって、別の道を「最も抵抗の少ない道」にし、悪しき習慣をよい習慣に置き換える方法を学べる。
法則7 ソーシャルへの投資
試練とストレスに見舞われると、身を丸めて自分の殻の中に閉じこもってしまいがちだ。しかし最も成功している人々ほど、友人、同僚、家族との人間関係を大事にして、それを推進力としている。この法則からは、成功と卓越をもたらす大きな因子、人のネットワークにもっと投資する必要があることを学べる。
ポジティブ心理学を単なる学問分野に留めることなく、広く世の中で活用されるべく、書かれた意欲作です。不安やネガティブなマインドセットを持っていると、本人の意思に関わりなく、それが他の人とのすべてのやり取りの中に浸み出してきます。注意が必要です。
【my pick-up】
◎テトリス効果を取り込む
これまで、困難なことやつらいことは、思いのたけを書き出すと楽になるということが言われてきた。しかしチャド・バートンやローラ・キングなどの研究者は、ポジティブな経験に関して気持ちを書き出すことは、少なくともそれと同様の効果があるということを実証した。
◎上に向かう道を見つける
逆境はどんなものであれ、自分が想像するほどひどくならない。なぜなら、ひどい結果を予想することによる恐怖は常に、結果そのものよりも悪いからだ。この人間心理の奇妙な性質を知っておくだけで、人生にはつきもののさまざまな不幸を、より楽観的に解釈できるようになる。
◎最も抵抗の少ない道
テレビを見たり、あちこちのフェイスブックにコメントを書いたり、という「受け身のレジャー」は、サイクリングをしたり、展覧会を見たり、サッカーをしたりするよりもずっと簡単で手軽だが、同じだけの満足感は得られない。調査によれば、受け身のレジャーが楽しくて夢中になれるのは、およそ最初の30分にすぎないという。その後はエネルギーを吸い取られるばかりで、心理学者が呼ぶところの「心理的エントロピー」、つまりキャシーが経験したような無気力で無感動な状態が生じる。
◎優れた業績を上げるために、人間関係に投資する
職場に、何かのときにあてにできる人がいるということ、あるいは昨夜のTVドラマについてしゃべれる相手がいるという程度のことが、その人の発想力、創造性、生産性を高める。