問題解決の教科書 価格:¥ 1,155(税込) 発売日:2011-09-15 |
評価 (3点/5点満点)
経営コンサルタント・小宮一慶さんの最新刊は、リーダーとしての問題解決力がテーマです。
「もし自分が○○(総理大臣、経営者などなど)だったら・・・」という仮定は、社会を生き抜く上で絶対に必要なシミュレーション能力であり、それができない人は、自分の立場からの視点しか持っていないということです。与えられた仕事だけを完璧にやればいいと思ってしまっている。しかしそれではいつまで経っても、今のポジションから上に異動することはないでしょうし、本当の完璧ではないのです。
産業の空洞化やエネルギー問題、防衛問題、少子高齢化問題や失業率など、日本が震災前から潜在的に抱えてきたもの、それでも「まだもう少しもつだろう」と楽観視してきた問題が、今回の震災をきっかけに前倒しの形で顕在化してきたように思います。
また、日本の個人金融資産は多いといっても1人当たり1100万円程度であり、そんなものにいくら頼っても内需拡大が実現する日は来ません。
問題解決のためには、問題の把握や決断力、シミュレーションなどの能力の他に素直さなどの資質も必要です。本書では、小宮さんの他の本でも登場する問題解決のための視点やフレームワーク、日経新聞の景気指標、財務諸表の読み方以外に、東日本大震災を教訓に危機の際のリーダーの取るべき行動やリーダーとしての心構えが冒頭述べられており、そこは特に読み応えがありました。
「大変」は「大きく変わる」チャンス。何事も捉え方次第で、自分の成長の材料になりますよ。
【my pick-up】
◎危機の際のリーダーの問題解決力
彼ら(東日本大震災の際の菅首相、東京電力の社長)を見ていると「地位は人をつくらない」ということがよく分かります。世渡りだけで地位についても真のリーダーシップなど身につかないのです。しかるべき勉強と修練を経ていないと、地位を得てもリーダーシップは身につかないのです。
◎「数字」で自社に関心を持たせる
多くの従業員は、「自分の給料が上がること」は望んでいますが、「自社の利益が上がること」までは考えが及んでいません。「自分の給料」の出所が「自社の利益」だとは本当には気づいていないのです。それを理解させるきっかけが財務諸表です。
「自社の数字が気にならない」という従業員は、言い換えれば「自社に関心のない」人です。そういう人ばかりが集まっている会社が飛躍的に伸びていくことはありません。でもそれは自社の数字に関心を持たない社員を雇い、育ててきた経営者が悪いのです。
リーダーはもちろんのこと、すべての従業員が、自社の「数字」に関心を持つ癖を持たないことには、会社の発展は難しいと考えてください。また、自社の財務諸表に関心のないビジネスマンは、ビジネスマンとしての成功はなかなか難しいでしょう。
◎「数字」の読み解き方
会計は規則です。その規則をいったん覚えてしまえば、実はそこから先というのはほとんどないのです。もともと会計とは、奥の深い学問ではありません。そこが経済学と根本的に異なる部分です。
その読み方を理解するために必要なのは、基本だけなら2、3時間程度の勉強時間に過ぎません。若干の規則を数時間かけて覚えれば、ほぼ一生役立つという知識が会計なのです。