厳選!ビジネス書 今年の200冊

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今年212冊目『社員みんながやさしくなった』

2011-12-11 18:02:03 | おすすめビジネス書
社員みんながやさしくなった 社員みんながやさしくなった
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2010-10-19

評価  (3点/5点満点)

障がい者雇用のパイオニア・アイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義さんが、「なぜ障がい者を雇用するのか」を、特例子会社設立までの経緯や、設立後にグループに与えた影響、今後の展望などを交え熱く語ります。

渡邉さんをはじめとするこのグループは、ニート/フリーター・育児や介護従事者・引きこもり・シニアなど、不況下の日本において難しいとされている層の雇用に積極的に取り組み、また、今後2020年までに障がい者1000人を雇用し、25万円の給料を払うと宣言されています。

「会社は家族」という考えのもと、単なる慈善事業としてではなく、障がい者を立派な戦力と捉えて利益を出していく会社のあり方は、業界・規模の枠を超えて経営を見直す原点となることでしょう。

【my pick-up】

◎外からの評価が社員の自信に

悲しいことに、障がい者や、障がい者のいる会社とつきあうことに偏見を持つ人は、いまだに存在します。そういう人に私は聞きたい。あなたの親や兄弟が、あなたの子どもが障がいを持っていたら、家族にも偏見を持つのですかと。私にとっては、障がいのあるなしは、右利きか左利きかの違いのようなもの。それも個性の一部ですし、不便なところがあれば訓練したり、道具や器具で補う、それでも足りなければまわりの人が助けてあげればよいことだと思います。「助け合いの精神」は、必ず人の心を豊かにするはずです。偏見を持つのは、心が豊かになることを拒否するのと同じです。

◎「引き算の経営」から「足し算の経営」へ

売上-原価(費用)=利益という単純な計算式が実は経営の本質なのですが、株主至上主義の経営では、利益の最大化を図るために、売上を大きくすることよりも、原価(費用)を小さくすることに目が向きがちです。そのほうが短期間で結果を出しやすいからです。そう考える経営者にとっては、人件費もコストです。しかも固定費ですから利益に対するインパクトが大きい。そこで固定費を小さくするために、正規社員から非正規社員への切り替えが、この10年の間に多くの企業で行われてきたわけです。

私は、日本企業ももう引き算の経営はやめて、足し算の経営に転換しなくてはいけないと考えています。足し算の発想では、コストを下げるのではなく、売上を大きくして利益を拡大する。その方法として、社員のモチベーションを高めて生産性の向上につなげること、ブランドはじめ付加価値を高めて価格決定力を持つことに当社では注力しています。

◎障がい者を納税者に

いま、働けていない多くの障がい者は、障害年金などの社会保障、つまり税金によって生活を維持しています。一説によると、重度障がいを持つ方が40年間生活するのに必要なお金は、2億円弱だそうです。1年間当たり400万円。毎年、1人の障がい者に400万円の税金が必要になるわけです。もし、この方が東京の企業で働いたとしたら、どうなるでしょうか。いま東京都の最低賃金は時給790円ですから、40年間働けば1300万円程度の納税者になります。税金の観点から言えば、2億円の歳出が1300万円の歳入に変わるのです。

少子高齢化、就労人口の減少、税収不足が構造的に進んでいく日本において、障がい者雇用がもたらす経済効果の大きさが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

◎無関心ではすまされない

いまの日本は、一億総無関心化が進んでいます。障がい者雇用についてどう思いますかと聞いても、「私には関係ない」「うちには関係ない」という言葉が必ず返ってきます。いちばんひどいのは、「障がい者に会ったことがない」と平気で言う人。会いに行っていないだけです。無関心になった瞬間に、人とのコミュニケーションがなくなります。無関心になることは、あえて自分から人とのつながりを拒否することです。それは、人間が本来持っている隣人への愛を拒否することです。人間が社会で生きるためのベースは隣人愛だと私は思うのですが、それを拒否するのですから、やがては心が病んでしまいます。

無関心な自分を「まとも」だと思っているのは、本人だけなのです。社会から見れば、当人がまさに病んでいる、これは、いまの社会が内包しているものすごく深刻な問題だと思います。

コメント
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