厳選!ビジネス書 今年の200冊

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今年76冊目『朝令暮改の発想』

2011-04-04 22:00:50 | おすすめビジネス書
朝令暮改の発想―仕事の壁を突破する95の直言 (新潮文庫) 朝令暮改の発想―仕事の壁を突破する95の直言 (新潮文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:2011-03

評価  (4点/5点満点)

セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEOの鈴木敏文さんが、どのような仕事の仕方で取り組めば成果をあげることができるのか、50年余りの仕事生活において感じたものがまとめられています。

記憶力の時代から、理解力が問われる時代へ。右肩上がりの成長期には、過去の成功体験をどれだけ多く記憶できるか、記憶力に優れた人が成功をつかむことができました。いまは、過去の成功体験について、なぜ成功できたのか、それはいまも通用するのか、通用しないとすれば、どうすればいいのか・・・と、どんどん掘り下げていく問題意識と理解力が求められています。

そこで必要なのは、朝令暮改を躊躇なくできること、どれだけ的確に変化をつかめるかの変化対応力です。

なぜ、セブンイレブンの1店舗あたりの売上(約61万円)が他の大手平均(約49万円)を大きく上回っているのか。なぜ、全国のOFC(店舗経営相談員)1800人を隔週で東京の本部に集めわざわざ1日がかりで会議を行うのか。マスコミでもよく伝えられているこのような話の理由が、本書で明確に分かります。

【my pick-up】

◎「顧客のため」ではなく「顧客の立場」で考える

いまの時代にわれわれが追求しなければならないのは、「顧客のために」ではなく、常に「顧客の立場」で考えることです。「顧客のために」と考えるのと「顧客の立場」で考えるのとでは、一見同じようでいて、大きな違いがあります。

第一に、わたしたちが「顧客のために」と考えるときは、たいていの場合、自分の過去の経験をもとに、「顧客はこんなものを求めているはずだ」「顧客とはこういうものだ」という売り手からの思い込みや決めつけがあります。

「顧客のために」ではなく、「顧客の立場」で考えることで、売り手側の勝手な思い込みや決めつけから抜け出すことができる。「顧客の立場」に立つことで、売り手側の常識・非常識の概念を否定する。視点を変えれば挑戦する価値が見える、とはまさにこのことです。

「顧客のために」と考える発想のもう一つの問題点は、「顧客のために」といいながら、自分たちのできる範囲内や、いまある制度や仕組みの範囲内で考えたり、行っているにすぎないケースが多いことです。

売り手の都合を前提に商品を相対的によりよくするのではなく、売り手の都合を否定し、顧客の都合に合わせて絶対を追求する。これが「顧客の立場」に立った仕事のやり方です。

◎「先手を打つ」より変化に対応して「朝令暮改」ができる方が大切

朝令暮改ができる組織とは、別の言い方をすれば、仮説と検証を柔軟に回していくことのできる組織にほかなりません。変化の激しい時代には、先手を打つことより、朝令暮改をあたりまえのように行うことこそが本当に求められる仕事力と考えるべきでしょう。

◎本を読みながら傍線を引くなら「反対意見」に引く

情報を得ようとして、よく本を読みながら線を引いている人がいます。たいていは自分も同感できる箇所に線を引くのでしょう。しかし、そこから何かヒントが得られるのでしょうか。線を引くならむしろ、自分の考え方とは異なる意見や反対の考え方の箇所にすべきです。

自分も同感に思える意見に出合えば、心地よいでしょう。ただ、同感できるということは、自分もその考え方に達しているわけですから、そこから得るものは少なく、それ以上の発展はあまり期待できません。線を引くのは、自分と同じ考え方の箇所をなぞって安心感を得ているにすぎないことが結構あるのです。

一方、自分と異なる意見や反対意見と出合ったとき、どこが異なるのか、なぜそう考えるのか、根拠は何か、ひるがえって自分はなぜこう考えるのか・・・と突きつめて考えていくことで、自分の考えを補正補強したり、発展させることができます。

◎時間の無駄の典型は成果に結びつかない会議と資料づくり

生産性の低い仕事の典型は、多すぎる会議とそのための膨大な資料づくりです。

リーダーシップの乏しいリーダーは自分で方針をはっきり打ち出せないため、何かと会議を開きます。

さらに問題なのは、会議のための膨大な資料づくりにあまりにも多くの労力が費やされることです。リーダーが明確な方向性を出せないため、質問されても困らないようにと、あれもこれもと情報を詰め込んだ資料を部下につくらせる。

同じ会議でも、組織として考え方を徹底させ、互いに情報や目標を共有するための会議は必要です。

会議の時間も長くて90分が限界です。人間はそれほど長時間は集中できません。われわれのグループでも、それ以上長い会議は絶対しない方針で徹底しています。

◎「稟議書」も時間をかけて印をもらってくる必要がどこにあるのか

稟議書がトップのところにくるまでに、各部門にわたってたくさんの承認印が押され、各部門の中でも課長や担当者の印まで押されます。

しかし、その過程で何か企画が練り上げられ、新しい価値が付加されるのかというとそうではなく、発案者の段階でほとんど決まっています。時間を手数をかけて各部門の印鑑をもらってくる必要がどこにあるのでしょうか。

新しい企画を発案したらすぐにトップマネジメントの判断を仰ぐべきで、その後で関連部門に対して情報の共有化を図ればすむ話です。

◎「やるべき価値」があると思ったことは反対論者も否定できない

仮説は過去の経験や常識から導き出される帰結点ではなく、新しい考え方の出発点です。過去の延長線上ではなく、未来に目を向けたとき、やるべき価値が見えてきて、そこから生まれるのが仮説です。

ここで忘れてはならないのは、未来の可能性に目を向けて生まれる仮説は過去からの延長線上にはありませんから、誰にも否定できないということです。

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