日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「『初級(Ⅰ)クラス』、初めての小テスト」。

2009-02-13 08:00:34 | 日本語の授業
 今朝は、お天気の予報通り、暖かく、吹く風も柔らかい。この分で行くと、お昼も(予報通り)17度くらいには、なるかもしれません。

 今日は、課外活動で、「国立新美術館の『メディア芸術際』」と「ミッドタウン」を見に行きます。出発は九時、行徳駅集合です。コンピュータに関心を持つ学生が少なくないので、きっといい刺激になるでしょう。

 そして、昨日。昨日は「初級Ⅰクラス(一月生)」の「小テスト(一課から八課まで)」でした。一口に「一月生」といいましても、一月八日までに来られた者(入学式)、二十日過ぎにやっと来た者、途中で入ってきた在日の人など、様々で、その上、レベルが揃っているというわけではありません(特に二十日を過ぎて学校に来たタンザニアのFさんは、来たときには、もう「ひらがな」「カタカナ」の授業は終わっていましたから、ちょっとやるせなかったでしょうね)。

 と言うわけで、「1~8課までのテスト」を受ける人、「1~3課までのテスト」を受ける人、「ひらがな」のテストを受ける人、と、同じクラスでありながら、三つのテストを実施することになりました。

 まずは、八日から来ていた学生のために、「1~8課」までの復習をしていきます。ついでに(ちょっと時間が余ったので)、次の11課の単語を一緒に読んでいき、また、そのついでに、「一つ、二つ…十」と、一緒に覚えていこうとしますと、ガーナから来たKさん、
「先生、先生、ちょっと、ちょっと。時間、時間、テスト、テスト」
と、なぜか、時計を指さし、焦った様子。

 テストの開始時間を、一分過ぎていたのです。「非漢字圏」の学生は、「『答える』のに、時間がかかる」というよりも、「『ひらがな』『カタカナ』を書くのに、時間がかかる」ので、つい焦ってしまったのでしょう。思わず、
「(書き終えるまで、待っているというつもりで)大丈夫」
というと、目を大きく見開いて、
「先生、大丈夫じゃない!」

 で、直ぐに開始という仕儀になってしまいました。そういえば、復習の時も、時計ばかり気にしていましたっけ。「45分で、書き終えねばならぬ」と思いこんでいたのでしょう。テストは、後半の授業でしたから、12時半に終わっても、残って書いてしまいたければ、待つつもりでした。勿論、「非漢字圏」の人だけです。「漢字圏」の人はだめです。

 なかなか、「ひらがな」を覚えてくれなくて(どうも、書いて覚えると言った作業が苦手のようなのです)、教師をヤキモキさせていた、タイのS君も、大丈夫でした。

 「『ひらがな』と『カタカナ』のプリントを見ながら、答えていってもいい」と言うと、忘れた「文字」は、プリントで探しながら、ゆっくり、ゆっくりと声に出して読んでいきます。それに、誰も文句を言いません。みんなも集中していたのです。S君が、書いていくのを見ていますと、間違っているところも、(日本人の)発音が聞き取れない、(自分も)うまく発音できないので、書き間違えているというような感じです。判らないというわけじゃないのです。

 この子は、タイボクシングを、日本で習っています。
「先生が『自転車はだめ。電車もだめ』と言った」そうで、二駅分の距離を、いつも走ってやってきます。根性ですね。書いたり、読んだり、考えたりということが苦手でも、こうやって、一つ好きなことがあって、それに一生懸命になることができる人は、多分、大丈夫でしょう。

 スーダンのMさんは、「あ行」を書き終えると、あとはお手上げ状態で、途中であきらめてしまいました。その後、「ひらがな」の練習をしている様子を見ていますと、全部を書いて、全部を一度に覚えようとしていたのです。母国でも、それほど勉強した経験がないのでしょう。勉強のやり方が掴めていないようなのです。そこで、各行の上に、日にちを書いて、
「この行は、今日覚えます。次の行は、明日覚えます。その次の行は…」
と言っていきますと、わかったのでしょう。にっこりして、「か行」だけを書いていました。

 焦る必要はないのです。人、様々ですから、それぞれのやり方で、もし、時間が許すなら、ゆっくりと覚えていけばいいのです。

 国が違えば、勉強のやり方も違うし、仕事の仕方も違う。この違いは、ひいては、人生をどう生きていくかという問題にも突き当たってしまいます。日本のように、危機に瀕していても、どこか切迫感にかけているような、「大なすび」、「呆けなすび」の性を持った国民(しかし、いつからでしょう、こうなったのは)に、そうではない国から来た人達の、そうならざるを得なかった習性というのは、結局のところ、わからないのです。

 皆に、日本語の勉強のやり方を強制しようとしても、無理な面もあるのです。その上、生まれながらの、言語分野における資質というのも考えざるを得ません。

 タンザニアから来たFさんは、直ぐに「ひらがな」のプリントを書き上げました。でも、
「カタカナは?」
と聞くと、首を振るのです。そこで、(時間が来るまで)カタカナの練習をやるように言いますと、静かに書いていました。書き上げると、見てくれと持って来ます。長さや、バランスなどを注意しながら、書いてやりますと、
「わかりました」
と言います。多分、土日を使って覚えてくるでしょう。

 何も言わずに、ひたすら問題用紙に向かっていたのは、インド人のLさん。誰が何を言っていても、聞こえていない様子。終わると、直ぐに間違えたところが気になるようで、(ガーナのKさんと、タイのS君が書き終わるまでは、教室で採点しようと思っていたので、採点していたのですが)、早速、教卓をのぞき込みにやってきます。点数は、彼が一番上でしたが、「自分が間違えたと思っていたところ」とは、「違うところ」を間違えていて、「ああ」「ああ」「え!」「ああ」と、一音で終わってしまう世界の住人になっていました。

 総じて、数字の読みに誤りが目立ちました。しかし、一番下だったKさんも、70点を超えていましたから、大したもの。よく短期間で「ひらがな」「カタカナ」を覚え、読めるようになり、そして、問題を解けるようになったものです。ガーナには、日本語を教えてくれるところがないそうです。(日本の会社で働いている叔父さんに送ってもらった)教科書を見ながら、一人で勉強したそうですが、いろいろ判らないことも多かったでしょう。日本に来てから始めたといっても、いいくらいでしたから。

 まあ、そんなわけで、「初級Ⅰ」のクラスは、第一回小テストを無事終了いたしました。「『点数』を気にしてくれる人が多い」ということがわかり、少々ホッとしています。

日々是好日

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