日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「日本人にとって、一番大切なことは何ですか」

2016-07-08 08:46:18 | 日本語学校
曇り。

この時期にしては巨大な「台風1号」が沖縄に近づいています。またそこから派生している雨雲が九州地方にかかっています。

雨が必要な関東地方は空梅雨状態なのに(降ってもごくわずか、水瓶のある地域には雀の涙ほどしか降っていないのでしょう)、地震のあった地域ほど豪雨に見舞われているというのは、皮肉なものです。神さまは時々人に辛いことをしますね。

さて、「七夕」祭りの後の授業でのこと。昨日、書きましたように、私自身「Cクラス(二年生と一年生の混合クラス)」での授業に焦点が絞り切れていなかったからでしょう。二年生も不満足、新しい人たちとも、一ヶ月経っても、どこかつながっていない感じがずっとしていました。きっとあまり歓迎されていなかったのでしょう。

ところが、「七夕」祭りの飾り作り作業で手を動かし、飾り付け作業で体を動かしたからか、後半(クラスの授業は前半と後半に別れています。その間、30分の休憩があるのですが、非漢字圏の学生が多いことから、そのうちの半分は漢字指導に当てています)の授業に入ろうとしたとき、一人の新4月生(ベトナム)が「日本人は、何が一番大切か」と聞いてきました。

明らかに「物」ではなく、「心」に関する「一番大切なもの」のことでした。

彼は「経済」志望です。「信用」と答えるべきであったのかもしれません。けれども、私はあえて、「今」、そして、「命」と答えました。「今、共にいる人を大切にする」「今、できることを懸命にやる」。それしかないのです、矛盾しているようですけれども。

「10年後」「20年後」を考えることには長けている人は、「今」をなおざりにしがちです。「1年後」「10年後」というのも、一日、一日の積み重ねであってのこと。「今」を大切にできない人には(「今、見えている人」を「仕事」を大切にできなければ)、「10年後」「20年後」もないでしょう。

ベトナムの学生も、スリランカの学生も、「お金持ちになりたい」と言います。それはわかります。発展途上の道を走っている人たちは、お金があれば何でもできそうな気になるのです(もちろん、お金は大切です)。日本に来て、お台場に行ったり、秋葉原へ行ったりすれば、ほしいものがたくさんあります。けれども、それらは今の彼らのアルバイトのお金では買えません。

「お金があっても買えないものがある」に気づいている人は稀で、「たくさんお金があれば、友達にいい顔ができる」「何でもほしいものが買える」くらいのことで、日本を見ているのです。

ただ、日本人の私たちから見ると、何か大切なものが欠けているような気がするのです。

日本は自然災害の多い国で、津波や火砕流、鉄砲水、土砂崩れなどで、今年になってからも、「もっと生きたい」と思っていた人が、たくさん死にました。生き残った(日本全国の)人たちが、「もっと家族と共にいたかった」「したいことがまだあった」という思いを残して亡くなった人たちのことを思い、「私たちは今を大切にしよう。今、身近にいる人たちを想おう。今、できることをやろう」と心を新たにしているのです。

さまざまな「思い」願いを置いてこの世を去らなければならなかった人たち、またそのことに思いを馳せる人たち。もちろん、「忘れないようにしよう」と言われても、人は辛いことは忘れたいと思うし、思い出したくないとも思う。

だから「『今』を大切にしよう」となったのでしょう。亡くなった人たちには、もう、何もしてやることができない。けれども、今「そばにある」人たちにはまだなにがしかのことができる。皆がそういう気持ちでいれば、きっと今よりももう少し住みやすい土地になる。

もっとも、彼の専門のことを考えて、「信用」のことも言いました。ただこの説明は、まだ『みんなの日本語Ⅱ』さえ終わっていない人たちには、ちと難しい。で、これは軽く言っただけです。

その後、気をよくした他の学生が、「雪はいつ降りますか」。二年生で真面目に頑張っているベトナムの学生が、「今年、東京は降ったけれども、ここは降らなかった」。「ええっ。ここは降らないのですか」「どこに行けば雪が見られますか」などと言い始め、かなりリラックスした雰囲気になりました。

そこで、そういう話はやめ、「はい、『N4』の漢字の本を開いて」と、その日の分の漢字の練習に入りました。大した時間ではなかったのですけれども。

ちょっと、気持ちが近づいたかな…。

日々是好日

コメント
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