ぐうたら里山記

兵庫の西の端でただのほんと田舎暮らしをしています。ぐうたらです。のん兵衛です。

冥王星

2006年08月27日 05時42分26秒 | ニュースの中から
しばらくパソコンを休んでいた間に大きな事件が起きた。
冥王星が惑星から仲間はずれになったのだ。
何にも悪いことしてないのに・・・と冥王星はきっと嘆いていることだろう。

これからは惑星の順番を聞かれると、とても困ってしまう。
「水・金・地・火・木・土」・・・ここまでは自信を持って大きな声でいえる。
でもそのあと急にそわそわして、「天」、それから周りを見回して小さな声で「海」、そしてここで息を呑んで、ほっとする。「いえた!」


今後、冥王星以前と以後とでは世代が分かれるだろう。
惑星の仲間に冥王星を入れようものなら、女子高生からは「キャー、古~い!」といわれるだろうし、孫は口を聞いてくれなるかもしれない。もっとも孫はまだいないし、まだ当分できることもないだろうから、これは助かるけれども。

刑事は取調べで嘘発見器をつけて、「惑星の順番を言ってみろ!」。
うっかり「・・・冥」といおうものなら、たちまち年を偽っているのがばれてしまう。
いや、こんな面倒くさいことをしなくてもよい。冥王星の写真を床において「踏め!」
今まで慣れ親しんできた冥王星。冥王星以前人間はここで一瞬たじろぐ。
「さては冥王星人間だな!」と、たちまちばれてしまう。


今後は介護度の認定にも使われるだろう。
「生年月日は?」・・・これは何とかいえる。

「今日は何日?」・・・う~ん、おもわずあせる。何日だったかな?と考えていると、もう次の質問に進む。

「今日は何曜日?」・・と、たたみかけてくる。百姓やってると毎日が日曜日みたいなものだから、これはかなり厳しい。う~ん。そして「えへへ・・」と愛想笑いをする。するとケアマネージャーが疑わしそうにちらっとこちらを見て、なにやらメモに書き込みながら、さらに駄目押しの質問をする。

「今年は何年?」・・・「19・・」と思わず1900年世代の人間は「19が口に出る、そしてあわてて「いや、2000・・・」と言い直す。「2004年、」いや「2006年だったかな・・・」でも何とか西暦はクリアーしたと思ったら今度は
「和暦では?」・・・「昭和・・・じゃなかった平成・・・」これは答えられない。ケアマネージャーはじっとこちらを見て深いため息をする。そしてすっかりさじを投げて、

「今何歳ですか?」・・・もうさすがにここまでくると、気が動転して打ちひしがれて、すっかり自信をなくして、自分の年さえ出てこない。そして、とりあえず時間稼ぎしようと「満ですか、数えですか?」とわけのわからないことを聞く。
「満です」・・・もし「数えです」なんていわれたら答えられるわけないのだけど・・・。それでも、ちょっと違うかな、と思いながらとりあえず答える。すると最後に、駄目押しの質問を受ける。

「惑星の順番を言ってください」・・・もうすっかり考える気力もなくして、禁断の答えを口にする「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」

「はいありがとうございました」とケアマネージャーは愛想よくいって、隣の介護士とひそひそ話しをはじめる。手元のメモには「要介護度5.強度の認知症」とかかれてある。


こうして冥王星人間は次第に闇のかなたに消えていく。
「降る雪や冥王は遠くなりにけり」とさびしくつぶやきながら。
コメント
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