イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「輝ける闇」読了

2011年01月12日 | Weblog
開高健「輝ける闇」読了
年末、年始にかけて久しぶりに読み返してみた。
師がベトナム戦争を臨時特派員として体験したことを小説にしたものだ。
戦争の生々しさを淡々と書いている。
この淡々さが戦争というものの悲惨さというかむなしさというか無駄さというかそういうものを余計に引き立たせているように思う。
クライマックスはベトコンとの戦闘で九死に一生を得るというところだが、「私は妊娠していた。」という表現で、前線で懇意にしていた軍医の戦死をきっかけにもう一度前線へ、それも戦闘活動に参加をする。
自身を傍観者でしかないと酷評し、それでも戦場へ赴くのは自分を恥じているのか、それとも贖罪のためなのだろうか。戦争の悲しさを子供の頃に体験し、同じような子供が処刑される姿を見るにつけてそれがもっと胸を突いてきたのだろうか。

師は「日本人の遊び場」「ずばり東京」というルポルタージュのヒットの褒美にベトナムへの臨時特派員になることを朝日新聞社に求めたということだ。「ずばり東京」の最後の章はたしか、東京オリンピックの開会式だったと思う。
高度経済成長が頂点に達して日本人が好景気に浮かれている頃にベトナムへ行ったわけだが、戦争を忘れしまったそんな日本人に、「あなた達には何ができるのか?」と問いかけていたのかもしれない。

師はこのあとベ平連に参加し、ベトナム戦争反対の運動を活発におこなう。それがひとつの答えだったのかもしれないが、尖閣諸島や北方領土や北の帝国とのゴタゴタ見たとき、師はどんな意見をもってどんな行動をするのだろうか。
今度は代理戦争ではないから、やっぱり自分の国は自分で守れと言うのだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする