鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

出版業界に出でよ、パラノイア

2008-09-10 | Weblog
 主婦の友社が今年6月に看板雑誌の「主婦の友」を休刊したのに続いて、朝日新聞社がオピニオン雑誌「論座」を9月1日発売の10月号で休刊、講談社も月刊総合誌「現代」を12月1日発売号で休刊する。いずれも会社を代表する雑誌で、ネットの普及で雑誌が売ればくなってきたのが最大の理由。これまでは他の事業なり、雑誌でその落ち込みをカバーしてきたが、出版社自体の経営も苦しくなってきていて、そうもいかなくなってきたようで、雑誌そのもののあり方が問われることとなりそう。
 講談社の「現代」は1966年創刊で、講談社ノンフィクション賞の発表誌でもあり、ジャーナリスティックな切り口で好評を博していた。発行部数は96年には36万部あったのが、現在は8万部に落ち込み、ここ10年来採算割れが続いていた。朝日新聞社の「論座」は1995年に創刊され、ライバル紙の読売新聞の渡辺恒雄主筆を登場させるなど右、左なく取り上げるユニークな編集方針で、時に完売の号が出るなど注目されたが、台所の実態は印刷部数2万部で完売しても赤字だった、という。
 この他にもこのところ集英社の映画誌「ROADSHOW」と「PLAYBOY日本版」、小学館の漫画誌「週刊ヤングサンデー」、マドラ出版の「広告批評」、講談社の「KING」と「Style」、世界文化社の「GRACE」、リクルートの「ビーイング」などが休刊となっている。出版科学研究所によると、今年1-7月の雑誌の創刊件数が100件なのに対し、休廃刊は107件と従来は常に休廃刊の数を創刊のが上回っていたのに、今年になって逆転した、という。
 この最大の理由がインターネットの普及で、ネット上でただで情報が得られるからで、お金を出して雑誌を買わなくなっている。ネットの普及は広告面でも出版社の経営を大きく圧迫している。電通の調べによると、2007年のインターネット広告費は4591億円で、雑誌広告費の4585億円を初めて上回った。雑誌に広告を出しても効果がないから、ネットへ広告するようになり、この傾向はさらに拍車がかかるものと思われる。
 基本的にはコンセプトの似たような雑誌が氾濫し、どの雑誌も特徴がないことに尽きるが、出版社の売上は販売収入と広告収入から成り立っており、広告が減少すれば、販売収入に頼ることになるが、売れ行き不振では値上げをするわけにはいかず、勢い休廃刊ということに落ち着くしかないのかもしれない。
 ここは出版に基本であるマーケットで対象の読者を絞り、そのターゲットに向けた編集方針を決めて、少部数でも経営の成り立つような戦略を立てるしかないのだろう。それには変化するマーケットにニーズを絶えず探り当てるようなことも求められるだろう。雑誌を創刊するには常人にはない大変なエネルギーが要る。もし、それなくして創刊しているようなら、そんな雑誌は遠からず休廃刊の憂き目に遭うだろう。
 米国の半導体メーカー、インテルの創業者、アンドリュー・グローブ会長がかつて「パラノイアだけが生き残る」と言ったことがある。業態は異なるが、事業を営む者として相通ずるものがある。出版業界にもパラノイアが必要なのだろう。
 
コメント
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