写真①:「百田興産」の太陽光発電設備設置工事が進む現場(右の水路が「福岡県指定鳥獣保護区」。手前が「津屋崎干潟」側)
=2012年9月12日、福津市渡池尻で撮影
「福岡県指定鳥獣保護区」の水路そばに
メガソーラ建設工事進む
クロツラヘラサギの渡来地の環境保護、大丈夫?
福津市渡の「津屋崎干潟」北側の渡池尻の用地約5万5千平方㍍で、「百田興産」(福岡市)のメガソーラー(太陽光発電設備)設置工事が進んでいます。その東隣にある水路=写真①=は「福岡県指定鳥獣保護区」で、世界に約2千羽しかいないという環境省のレッドデータブックで「絶滅危惧ⅠA類」指定のクロツラヘラサギ(トキ科)10羽前後が毎冬、朝鮮半島から渡来し、餌を取ったり、休息する貴重な水域です。水路の東側を南北に走る県道502号線との境界には高い垣根があり、水路の様子はうかがえないようになっています。
メガソーラー設置工事は8月から始まっており、平成25年7月31日までに総出力約2千㌔・㍗の太陽光パネル約8千枚を設置する計画。建設現場の南側にある舗装道路を隔てた「津屋崎干潟」(内海)も「福岡県指定鳥獣保護区」で、クロツラヘラサギや冬鳥・カモ類の〝野鳥の天国〟となっています。内海の満潮時には、建設現場の東隣にある水路がクロツラヘラサギやカモたちの憩いの場に変わります。
以前、この水路に接したメガソーラー建設現場側は草木が茂り、水路に生息する野鳥たちには絶好の目隠しになっていました=写真②=。しかし、今は工事で草木が伐採され、見通しのよい環境に一変、野鳥たちはウカウカできない雰囲気です。メガソーラー建設後、渡来したクロツラヘラサギの群れは、地上に敷きつめられた太陽光パネルが乱反射し、西側の目隠しの草木がなくなつた水路を上空から〝鳥の目〟で眺め、「毎冬の津屋崎の〝常宿〟は、ここだったっけ?」といぶかる恐れはないでしょうか。
写真②:ヘラサギ1羽とクロツラヘラサギ4羽が餌を取る水路(左手のメガソーラー建設現場側は草木が茂っていた)
=2011年1月27日撮影
メガソーラーは、三井松島産業(福岡市)の子会社・MMエナジー株式会社(同)が、「津屋崎干潟」の東に隣接した福津市西竪川の旧「津屋崎塩田」跡地約3万2千平方㍍の用地でも、総出力約2千㌔・㍗の太陽光パネル約8千5百枚を9月から建設、平成25年3月に完成の予定です。
「津屋崎干潟」の「鳥獣保護区」 福津市渡の「津屋崎干潟」は、福津市西部の渡半島に抱かれた細長い入り江で、同市浜の町の津屋崎漁港から北へ広がり、地元では〝内海(うちうみ)〟と呼ばれています。波静かで、小魚や貝、ゴカイなど野鳥の餌も豊富です。クロツラヘラサギの越冬地で、国際保護ネットワーク(事務局・香港)から国際観測点の一つに登録されています。06年11月15日、県から鳥獣保護法に基づき、野生鳥獣の狩猟が禁止される「鳥獣保護区」(特別保護地区)に指定されました。指定区域は、干潟約48㌶と周辺の水路や陸地約15㌶の計約63㌶です。指定期間は10年で、問題がなければ更新されます。