写真①:浜永満さん宅2階外壁に描かれた波の上を飛ぶ姿が躍動感にあふれる龍の鏝絵
=山口県下関市豊浦町室津下で、2017年4月2日午前9時55分撮影
「室津の鏝絵」巡りリポート②
浜永家の色鮮やかな「龍の鏝絵」
〝室津地区の宝〟・「龍の鏝絵」(中村千秋さん宅から「室津公民館」駐輪場北側に移設)とは違い、鮮やかな色彩の「龍の鏝絵」も見学できました。室津3区の漁業浜永満さん宅2階外壁母屋2階外壁(平側)にあります=写真①=。青の色調が綺麗です。海産の貝や、サザエ、アワビ、牡蠣などを焼いて粉にした酸化コバルトと、ガラス状の光沢がある岩塩を水で混ぜて青色を出しているという。目はビー玉で、真夏の直射日光を浴びると光ります。波の上を龍が飛ぶ姿が躍動感にあふれ、見事です。
この二か所の龍の鏝絵とも、明治24年12月の「室津大火」後に制作されています。「室津大火」は、室津の西から火が出て激しい西風にあおられて延焼、藁や茅葺き屋根だった室津浦の家屋186戸のうち177戸や室津小が焼け、死者1人、負傷者10人の大火となりました。2016年12月22日、日本海に面した新潟県糸魚川市で中華料理店から出火、強い南風にあおられて147戸が焼け、17人が負傷した「糸魚川大火」を思わせます。
「室津大火」後、室津地区では都市計画で大小路を区分し、共同井戸を等間隔に7か所設置、家は全戸瓦屋根、壁は漆喰を厚く塗り、類焼に備えました。家の再建に島根県から来た「石州左官」の集団がこの壁に花鳥風月を芸術的に鏝で浮き彫りしたと見られます。浜永満さん宅の龍の鏝絵を制作した左官名は不明ですが、家人とともに龍(火事や水難)が起こらないよう願って龍の鏝絵を描いたのではないかという。