『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

コスキン本番

2011-10-11 07:56:00 | ギター


コスキン本番の10月10日は
特異日でもあるので、
秋晴れの気持ちのいい日になったが、
前日のサブ・ステージが
ドツボだっただけに、
いくらか気が重かった。

予定していた
お馬鹿っぽいコスプレもやめ
無難な平服にした。

全国から160組もの団体が参加する中で、
唯一、個人名でのギターソロ参加だったので、
心細いこと限りなかった。

おまけに、初参加なので勝手が分からず、
登壇前集合を30分前くらいと踏んでいたのが、
40分前だったらしく、担当者を慌てさせ、
規定では、危うく棄権になるところだったが、
けっきょく出番を3つも遅らせるという
迷惑をかけてしまった。

前日の失敗もあって、
なんだか、さらに気分が沈んでしまい、
このまま申し出て帰ろうかとまで考えた。

「コスキンなんて、もう、二度と出てやんないやい」
と、また、心中の子どもが
泣き言を言っていた。

それでも、どうにか気を取り直して
初参加者らしく、しおらしく初々しげに
ステージに上がった。




ここはギター学院の発表会とは違って、
照明を落として演奏椅子に着席して
司会の紹介コメントを聞いてから
「それでは、どうぞ」
の合図で、座ったまま礼をして
演奏を始める形になった。

大会場に客もそこそこ入っているから
前日のサブ・ステージとは違い、
時計もメガネも外しての本気モードで
一曲目の『インカ幻想曲』がスタートした。

前日の録音とサビカスのCDを聞き比べ、
メトロでテンポを修正し、
イントロでの装飾音を増やし
前日とは違ったテイクにしようと
本番に臨んだのがよかった。

それと、3.11から7ヶ月目の
慰霊演奏として望んだことも、
やはり神様・御霊(みたま)様の後押しが
あったのかもしれない。

イントロから気持ちが入って、
自然なデュナーミクと
アゴーギクが表現できていて、
それを聴いている耳が、
「オッ、これはいいかも…」
と期待した。

そして、本ラインをアップテンポにしたことで
曲全体が変化に富み、まさしく
幻想曲の様を呈した。
ミスも小さな指の引っかかりが
1箇所だけというほぼパーフェクトだった。

エンディングの6小節を
ppp~fffまでの
ロッシーニ・クレシェンドにした。

このとき、
「鐘は打ち割る心でつけ。
 太鼓はたたき破る気でたたけ。
 割れも破れもせぬ。
 ただ、その人の打ちよう、たたきようしだい。
 天地に鳴り渡りてみせよう」
という御教えが
脳裏に浮かんだ。

そんな風に魂を込めて、
劇的に曲を締めくくると、
即座に大きな拍手が返ってきて
いい演奏が伝わったことが実感できた。

MCからは
「凄い!すごい!」
という驚嘆から始まって
「久しぶりに、コスキン・エン・ハポンに
 ソロ・ギタリストが登場しました」
と賞賛された。

なんだか、自分でも
前日のみじめな失敗と
先刻まで落ち込んでいたのが
ウソのような快心の演奏であった。

しかし、ドラマはそれで終わらなかった。

「それでは、二曲目の『花祭り』をどうぞ」
と言われて、しばし、間を空けてから
そろりと弾き出すと、
なんでもない箇所で音を外し、
「あれっ?」
と少しばかり気が緩んだか、と
指に任せて導入部を引き進んでいた時だった。

カタカタカタ・・・グラリと
場内が大揺れして、
「おお~!」
というドヨメキが起こった。

それでも、どうしていいか分からず
ギタリストの本能で、乱れながらも
馬鹿みたいに弾き続けていたら、
MCから
「佐々木さん。演奏をやめてください。
 みなさん、いったん、外に出ましょう」
という誘導アナウンスになった。

自分も慌てて舞台袖に引っ込んだが、
本番の演奏中にこんなハプニングが起きるのは、
後にも先にもない。

次に待機していた
アルカディア・ギター・アンサンブルの
渡辺先生が笑いながら
「大丈夫ですか」
と言ってくれたので、
わざと大袈裟に
「心臓バクバクです・・・」
とゼスチャーして見せた。

そして、スタッフの女の子たちに
「日ごろの行いが悪いからかなぁ・・・」
と冗談を言うと、
「演奏がよかったので
 大地が揺れたんじゃないですか」
と洒落た返答をしてくれて嬉しくなった。

会場にお客が戻るまで
数分かかり、また二曲目から
再演ということになった。
実は、出がうまく弾けなかったので
このやり直しは、ありがたかった。

再びステージに上がると、MCから
「佐々木さん。大丈夫ですか?」
と聞かれたので、冗談で
「心臓がバクバク言って、手が震えています」
と答えたら、場内から笑いが起きて、
改めて前礼をすると大きな拍手がきた。

今度は、失敗のやり直しなので
極めて落ち着いており、
指が思うように回った。

そして、クレッシェンドも自然にでき
fffはドラマティックになり、
数箇所の目立たないミスはあったものの、
最後は祭りの後の侘しさのような
消えるようなエンディングで
美しいAmの和音が消えると、
歓声と指笛と嵐のような拍手が
沸き起こった。

観客もコンサート中の
大余震というドラマを
ステージ演奏者と共に体験し、
その後に、魂の入った音楽で
浄化されたのかもしれない。

MCからは演奏後にもコメントを求められ、
去り際には、もう一度大きな拍手と
「コスキン・エン・ハポンが発掘した
 川俣のギターソロの宝石です」
との過分な褒め言葉を
背に受けてステージ裏に引っ込んだ。

ステージ裏で待機していた
ゲストのプロ奏者の方々からも
「素晴らしかったです」
とお声をかけていただいた。

前日は、叱られた子どもみたいに、
パンと牛乳をもらって、
泣きそうになりながら
帰ってきたというのに・・・(笑)。

まさに、ドラマティック、
神がかり的なステージだった。
それもこれも、前日のみじめな失敗から
出番の30分遅れまで、すべてが
目に見えぬ何かにアレンジされていた
ように思えてならなかった。



毎月、レッスンに来る
K君親子のユニット『ティエラ・ブランカ』は
3日間のコンサートの「大トリ」で
連続10年の出場で表彰された。




朝から準備して、
じつに長い一日だったけど、
いろいろな人とも交わえて
ほんとうに充実した一日だった。

フィナーレまで残っていた全出場者での
『花祭り』の大演奏では、
大学生になったタカ坊とも
同じステージに立てて楽しかった。


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2 コメント

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Unknown (.)
2011-10-12 08:53:37
ご心配いただきまして、ありがとうございました。
震度4でしたが、本番中でしたので、さすがに慌ててしまいました・・・(笑)。
返信する
Unknown (level42)
2011-10-11 13:49:08
お久しぶりです。素晴らしい演奏、よかったですね。こちら宮城もかなりゆれました。ご無事でなによりでした。
返信する

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