神融心酔 

中国茶・台湾茶を中心とした素敵な出会いの数々を綴っていきます

美の向こうにあるもの

2019-04-27 | 茶にまつわる文化・芸術

浅学で芸術に疎い私ですが、茶盌の観賞は大好きです。

文化財級の展覧会にはできるだけ足を運ぶようにしています。

現在国宝に指定されている8碗のうち、大徳寺龍光院の曜変天目だけはまだ観ることができていませんでした。

好きな茶盌、手にしてみたい茶盌を考えるとまた別の観方がありますが、やはり曜変天目の三碗は別格。

5月19日までMIHO MUSIUMで開かれる『大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋』で公開されるというのを聞き、

たぶん混むであろう連休を避け、この日しか空いていない、という平日に日帰りで甲賀まで足を運んできました。


JR琵琶湖線の石山駅からバスに揺られて約50分、甲賀の山深くに位置します。
(甲賀市のイメージは忍者と信楽焼。
そういえば愚息が以前「忍者検定」なるものを受けに甲賀に行っていた・・。)
駐車場から美術館までは5分ほどの道のり、
しだれ桜はもう盛りを過ぎていましたが、
ハラハラと散る姿も美しく、鶯の声が響きます。



トンネルを抜けると幾何学模様の建物が見えてきました。



ルーブル美術館のガラスのピラミッドでも知られるI.M.ペイ氏の設計によるもの。
館内も風景に溶け込み、光の取り込みが考えられています。



熊倉館長のイヤホンガイドを借り、展示室に向かいます。
お昼時を狙って入ったので、とても空いていました。

一般公開はされていない龍光院の雰囲気をそのまま伝えるかのようなエントランス。

そして、いよいよ曜変天目とのご対面。
高台が華奢なせいか、他の二碗よりも小振りな印象(実際はほぼ同寸)。
三碗の中では一番侘びている、と言われますが、
照明の効果もあって、内側の光彩が本当に美しく、神秘的。
それでいて落ち着きがあり、佇まいが控えめでさえあります。
それは多分400年もの間、寺で大切にされ、信仰の道具という役割を担ってきたからなのでしょう。

他の展示も素晴らしいものでした。
江月宗玩所用の袈裟、墨蹟、
津田宗久の茶杓、油滴天目、丸壺茶入、
牧谿の柿図等々見どころがたくさん。
禅宗と共に歩んできた茶の湯の世界を堪能することができます。

一日がかりになりましたが、行って良かったと思いました。
目にするのは最初で最後かもしれない大徳寺の曜変天目。
茶盌、そして美術品を観賞するということについて、今一度考えてみるいい機会となりました。

その美を前にして、自然の恵みを感じ、
その時代、そしてそれを受け継いできた人々に思いを馳せ、
今生かされている自分の存在を謙虚に受け止め、感謝する。
心の浄化、と言ったら大げさかもしれませんが、
今回の展覧会にはそんな作用があるかもしれません。


余談ですが、今回の曜変天目展示では照明にとても苦心されたそうです。
光の具合で様子が変化する曜変天目。
そういえば藤田美術館で初めて観た時はそれほどすごいと思わなかった藤田コレクションの曜変天目が
サントリー美術館の照明で観た時にはものすごい輝きを放っていました。
今展示中の奈良国立博物館ではどうなのでしょうか。
やはり現在展示中の静嘉堂文庫の稲葉天目は今回は自然光での展示とのこと。
場所を変えての二碗の展示もまた観てみたくなりました。
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