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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道に帰りたくない理由

2015-07-07 23:19:41 | Weblog

「小松さん、今僕の周りには『できれば地元に帰りたい』っていう若者がとても多いんです」と北海道出身で東京在住の件の友人。昨夜の居酒屋談義の続きです。

「本当?今進められている地方創生にピッタリじゃないですか」
「そう思うでしょ?でもそういう人たちは大体が内地の府県の出身者ですね。東北とか北陸とか、そういうところから来た子たちはうまく機会があれば地元に帰りたいって思うようになっているみたい。ところが北海道出身の人たちは地元に帰りたいって言わないんですよ」

「なんだろう、何が違うんでしょうね」
「内地の府県の出身者って、子供の時にすごした地域での生活というか関わりというか関係性をとても好ましいと思っているんです。だから故郷の田舎の生活は幸せだったんですよ、きっと」

「そういえば、掛川にいた時も、『祭り少年』が『祭り青年』になると地元を出て行っても祭りの時期には帰ってきましたもんね。盆暮れには帰らなくても祭りには帰る。祭りが血液の中に溶け込んでいるみたいでした」
「多分それもそういうことの表れでしょう。それに比べると北海道出身者はどうも地域との関わりが薄かったり、地元に戻りたくなるような良いイメージを持っていないんじゃないでしょうか」

「なるほど。私はそのことには二つの側面があるように思います。一つは北海道はそもそもが移住者によってつくられた土地柄なので、来るのも離れるのも割と自由な風土があります。今言った『地域との関係性』も、美しい面を見ると関わりによる離れがたい郷愁かもしれませんが、その反面離れたくても離れられない『しがらみ』に苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。そういう意味では新しく来るのに自由があるという視点です。
 もう一つは、ならば北海道でもその自由さを放っておかずに子供たちが幼い時には地元ならではの特色ある遊びや活動をさせて、北海道というものを存分に味わわせることだと。そのことで地元への郷愁を心に刻んでおくような教育をすべきだという視点です。どうでしょう」
「そのバランスなんだと思うなあ。地域の中で地元中心主義の育て方をすることで地元への愛着を養うけれど自由を失ったりするのかな。でも今の北海道で今日自由を失うほど地域が関わりを強めることなんてもうできないよね。それならもっと北海道の地元らしさを遊びや自然を通じて幼い時に植え付ける努力をしても良いように思いますよ」


 厳しい意見だけれど分かります。神社のお祭りも、数合わせで参加を募るようなものではなく、本州で過ごしていた時に見たのは、地域の人たちが祭りの準備期間から祭りの最中、そして終わるまでを本当に楽しい幸せな時間として過ごしている様子でした。

 祭りに限らず、地域での活動にやらずにいられないほど打ち込めるようなものは少ないように思います。残念なことですが。


       ◆ 


「それともう一つ、北海道に厳しいことを言いましょう。それは高いレベルの知識や情報に疎いということです。僕は今長野県の小さな村の地域おこしを手伝っていますが、そこで活動するNPOのような団体に、有名私立大学の総長とか東大の先生、中央官庁の幹部などが参加したり何度も足を運んでくれています」
「それはあなたならではの人脈のなせる業でしょう?」

「そうとも言えますが、僕みたいな人を介せばそういう高いレベルの人を呼べたり、彼らに地元を見てもらい知ってもらえるような機会を作れるってことです。
 それは一つには移動の時間の問題。新幹線があれば本当に早いですからね。地の利はかなりのメリットです。そのメリットを生かして高いレベルの人たちと結びつこうよっていう意欲です。それが感じられない。
 もう一つは『地元に投資してビジネスをしようよ』という意欲も北海道には感じられませんね」

「感じられませんか」
「うん。企業誘致や工場を誘致しようとすることは多いですが、それってなんとか雇用を生み出そうとするんだけど、地域のなりわいを無視したり地域性とは関係なく人を労働力としてしか見ない経済モデルでしょ。
 地域に入ってみるとよくわかるんだけど、ものすごく人々は多能工で生活をしています。草苅もするし介護や保育や暮らしに一人ひとりが関わって暮らしている。工場労働、企業労働って、そうした多能工を単一工として効率化させて経済を生み出そうとするモデルで、それを多能工の世界に入れると地域性を活かせないし、消してしまうし、そこで生活する人の幸せや充実に繋がらないんじゃないかと思うんです」

「多能工の話は私もわかります。人口減少下の地域にあっては、一人ひとりがスペシャリストとして経済メリットを追うようなビジネスがだんだん成り立たなくなって、一人ひとりが多能工として社会に参加していかないと維持できなくなるんだと思うんです。
 僕もそろそろ肩掛け式の草刈機を自前で買って、練習しておこうかなと思います」

「それはいいね(笑) でも地方創生でもなんでもいいけれど人口減少で疲弊する地域を何とかしようと思ったら、人材を地方に供給して大都市や大消費地とのパイプを形成し、たった数人でもいいからそういう人たちの雇用を生み出せるようなマイクロビジネスを生み出してみたらどうか、って僕は思ってます」
「問題は大都市と地方の両方にシンパシーがあってその繋ぎができるような能力、人脈、情熱がある人の問題ですね」

「そう、最後は人の問題になっちゃうんだけどねー」


       ◆ 


 四谷荒木町での長談義。最後は人の問題と言うけれど、そういう人も育てなくちゃいけないんですよね。さらなる課題は育成機関の問題かもしれない。

 松下政経塾のような私塾でもいいし、研修所のような公的な育成機関でもいいけれど、しっかりと勉強をしたうえで人品骨柄の麗しい人を選抜して地域に派遣するようなワンステップ上の地域振興システムが必要ではないかと思いました。

 そうした人材をシティマネージャーと呼ぶか、地域アドバイザーと呼ぶか呼び方はともかく、単なる既存のコンサルタントではなくお手伝い人材でもなく、地域の企画から消費地との繋ぎまでを行うような役割です。

 これからの地方の浮沈は、そういう人材をみつけて確保できるかどうかにかかっているのかもしれません。頑張ってほしいなあ。

 

コメント (4)
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