駒子の備忘録

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レニングラード国立バレエ『竹取物語』

2009年12月02日 | 観劇記/タイトルた行
 オーチャードホール、2003年1月25日ソワレ。
 今年の新作は日本最古の物語を幻想的に再現したきらびやかな絵巻。かぐや姫(草刈民代)や帝(ミハイル・シヴァコフ)、竹取の翁(ラシッド・マミン)、求婚者たち、月からの使者などが登場する二幕もの。音楽/カロシュ、演出・振付/ボヤルチコフ。
 急に仕事先から招待券をいただいたので行ってまいりました。
 私は結局のところ『白鳥の湖』が一番好き、とかほざいているようなミーハー・クラシックバレエファンなので、新作というのは不安でしたし、幕開けからあちこちに節をつけた全身緑色タイツの「竹林」が出てきたときにはどしぇーっとなったものでしたが(同伴した友人は「カッパ」とか言うし…)、最後にはけっこう感動してしまいました。やはりなんでも観てみるものですね。
 一幕目がやや退屈だったのは、バレエの華ともいうべきパ・ド・ドゥがほとんど見られなかったからでしょうか。姫も天上の楽士たちも月光もひとりで勝手に踊るか黒子(?)に支えられるかなんですもの。二幕になると姫と帝のなかなか哀惜なコーダがあってやはりうっとりさせられたのでした。
 かぐや姫の装束が、十二単を着て踊るわけにいかないとはいえなんだかもんぺというかアジアの小娘のようなパンツ姿(?)だったのと、帝がやたらと正座するのがヘンだった他は、日本の風俗もよく研究されていてよかったように思います。こういうのがヨーロッパ人にはファンタスティック・オリエンタル・エキゾチック・ジャパネスクなんでしょうねえ。レヴェランスもおじぎでした。
 最後がほろりとさせられたのは、姫と帝の愛と別れもあるのですが、翁の嘆きがまたよかったから。姫は翁がくれた衣を返して月へと戻り、翁はその衣をかき抱いて嘆き、竹林の中で息絶える。衣を返す行為が、高貴の人が愛情の証に衣服を与える行為のようにも、また現世のものは現世に置いていく異世界の人の掟のようにも見えて、なかなかせつなかったです。
 帝は日嗣の御子、太陽の子であるから月の世界のかぐや姫とは相容れなかったのだ、とか、姫が求婚者たちに与えた課題をある謎かけに移してしまうとか、いろいろ新解釈・工夫・暗喩などもあったようですが…今後上演を重ねればさらに洗練されてくるのかもしれません。
 ダンサーでは竹の精を演じたエルビラ・ハビブリナが鮮やかでした。また草刈民代もしっとりと麗しく、オデットのときのようにロシア人の白鳥に並ばれるとプロポーション的に見劣りするというようなこともなくて、よかったのでした。
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