goo

「8-エイト-マン」-サタンの兄弟の巻-

 「8-エイト-マン」は60年代前半から半ばくらいまでの週刊少年マガジンの看板漫画で、雑誌の漫画も大人気だったけど、特にテレビのアニメ放送で、当時の国民的アニメ番組として高視聴率を取り、あの時代、子供向けアニメSF ヒーロー番組ながら、大人でも誰でも知ってる漫画ロボットヒーローでした。

 アニメ放送の一社提供の丸美屋の、のりたまやすき焼きふりかけなど、ふりかけシリーズにはエイトマンシールが付録で入っていて、テレビアニメの大人気でエイトマンふりかけという商品も出てました。当時の子供たちは夢中になってエイトマンシールを集めてましたね。

 子供向けアニメ放送ですが毎週の視聴率も高く、最高視聴率は25.3%を記録してます。「エイトマン」のテレビアニメ初出放送は1963年11月から64年12月31日までの全56回で、その後何度も再放送されました。多分、「エイトマン」は「鉄腕アトム」「鉄人28号」に続く、国内連続放送長編アニメの第三番目の作品だと思います。

 子供時代の僕は漫画とテレビアニメの「エイトマン」に熱中してました。特に漫画の方の「8-エイト-マン」にですが、多分テレビアニメの「エイトマン」も放送を毎週欠かさず見ていたと思います。エイトマンには憧れてましたねえ。エイトマンはロボットだからなりたいと思ってたかどうか…、いや僕のことだからロボットでも弾丸よりも速いスーパーロボット·エイトマンにはなりたいと思ってたでしょうね。誰か天才科学者にスーパーロボットに改造されたいぐらいのことは思ってたでしょう。

 エイトマンはスマートで強くて正義の味方でカッコ良かったなぁ。

 「8-エイト-マン」は講談社の週刊少年マガジンの1963年第20号から新連載し、1965年第13号まで通常連載が続きました。「サタンの兄弟の巻」は連載漫画「エイトマン」の第二話で、マガジン誌上の連載期間は63年25号から31号までの7週連載です。僕が初めて目にした「エイトマン」がこの「サタンの兄弟の巻」の1週か2週目で、それは同時に生まれて初めて週刊少年マガジンを目にしたときでもあります。1959年3月創刊の週刊少年マガジン、満4年目を過ぎた5月半ば頃の、多分26号あたりですね。

 当時のアイドル歌手の少女がサタンの兄弟に誘拐されて、アイドル歌手の女の娘は、スーパーロボット·エイトマンの普段の姿、私立探偵·東八郎のところで事務とか受付·雑用で働くサチコさんの親友で、エイトマンは誘拐されたアイドル少女の身代金渡しのために、アイドルの女性マネージャーに変装して身代金現金渡しに赴く…、というエピソードの回でした。

 変装ってエイトマンは自由に誰にでも顔を変えれるし、男性の身体つきからもっと小さくて細い女性の身体つきに変えることもできる。エイトマンってけっこう弱いからサタンの兄弟の一人を倒して迫ってたときに、もう片方から背中から機銃掃射か何かされて、倒されてしまいまんまと身代金をかっさらわれる。

 エイトマンは外装が超合金ハイマンガンスチールでできたスーパーロボットなのに、意外と普通の人間のマシンガンとか、若しくは拳銃何発も喰らったときもあったかも知れん、そういう攻撃でバタリと倒れて動けなくなっていた。スーパーロボットだけどけっこう弱かった。

 エイトマンは胴回りベルトのバックルにタバコ型の強化剤が入ってて、敵の攻撃を受けて動けなくなったとき、この強化剤タバコを吸うと元に戻ってまた元気に動いていた。タバコ吸うと即復活してましたね。エイトマンの電子頭脳は熱に弱くて、火災現場から人間を助け出したとき、火事の高熱で電子頭脳が麻痺して動けなくなることも多かった。光線銃レーザーで撃たれたとき、直接灼熱光線は浴びなかったが高熱で電子頭脳が麻痺したりしてた。

 エイトマンの一番際立つ能力は、ハイスピードで走って動ける“力”ですね。「弾丸よりも速く」動ける。だから人間が拳銃を撃っても超スピードで動いて拳銃の弾丸を手で掴んだりする。そのくせ背中から拳銃の弾丸を続けて何発も浴びると動けなくなったりする。マシンガン掃射受けて倒れたのに何故強化剤タバコ吸って元の元気さに回復するのか不思議でした。

 連載漫画のエピソードの中にはなくて、テレビ放送オリジナルのエピソードで、犯罪組織の悪者科学者の開発した弾丸が、金属を粉々に粉砕する特殊弾丸で、いつものように敵の撃つ弾丸をハイスピードで掴んだエイトマンの手が、二の腕ごとぼろぼろと崩れてしまう回がありました。お話の詳細まで記憶してないけど。

 大人になって会社に就職して会社の独身寮で同僚の四国出身のKH 君と、子供時代に見ていたテレビアニメの話をしてて、KH 君がこの「エイトマン」の回のエピソードの再現をして、いつものように敵の弾丸を掴んだエイトマンが余裕で「この私に拳銃の弾丸など通用しないぞ」とか言ってたら、「おおおっ…」と弾丸を掴んだ腕がぼろぼろ崩れてびっくりして焦る、エイトマンの真似をしてたのを今でも覚えてる。懐かしいなKH 君とあの時代。

 テレビ放映の「エイトマン」の間に入る丸美屋CM の本編再開のときに、高速で走るエイトマンの静止画が一瞬あって、力いっぱい駆ける姿と速さを表す風の効果線に、疾風の吹き抜ける音と共に主役声優の一言「エイトマン!」。この全力で駆けるエイトマンの真似を当時の子供たちはよくやってました。腕振り走るスタイルで止まって「エイトマン!」と一言いう。あの時代の子供はみんなやって楽しんでましたね。

 テレビ放映のアニメでは第1話で、エイトマン誕生エピソードがお話になってるのですが、マガジン原作漫画の方では、漫画連載第3話の「怪力ロボット00七-ゼロゼロシチ-の巻」でエイトマンを造り上げた谷方位博士の回想場面として語られます。

 この間、遠藤周作氏の「妖女のごとく」を読んだんですけど、これが物語のプロットが「エイトマン」の「魔女エスパーの巻」によく似ている。遠藤周作さんの「妖女のごとく」は1987年単行本発刊で、「エイトマン」の「魔女エスパーの巻」は1964年の週刊少年マガジン21号から31号までの掲載です。

 遠藤周作先生の「妖女のごとく」では、お話を進めて行く語り手的な主人公の、製薬会社営業職の独身男性が居て、その男が多大な好奇心と正義感の他にまるで悪魔に魅了されるように惹き付けられ、イロイロと身辺を深く調べて行く対象の、この物語のテーマとなる超美人女医が居る。

 この超美人女医はいわゆる二重人格で天使と悪魔の二面を持っている。献身的に入院患者を助けようと一生懸命に医療職を全うし、自己犠牲も厭わないような、まるで天使が本当に存在するかのような、心優しき美貌の女医。だがこの女医にはごくごく少数の者しか知らぬ真逆のもう一面があり、それは何かのきっかけで時折現れる。語り手の主人公の男性は、じょじょにじょじょにその恐ろしいもう一面を知って行くことになる。

 美貌の女医にときどき出て来る悪魔的なもう一つの人格は、非常にズル賢く頭が良くて、善良な普通の一般人を陥れることなど朝飯前で、冷酷で凶悪犯罪も平気で行える。自分の手を汚さずに、陥れた普通の一般人に、変わりに犯罪をやらせることなどもできる。人殺しにも何の感情も動かない残酷な性格。

 主人公の男はこの女医のプライベート調査で深入りし、危機に陥る訳ですが…。

 平井和正原作の漫画「8-エイト-マン」の「魔女エスパーの巻」では、テーマとなる美少女ナミさんは心優しき、純真無垢で平穏な普通の少女。この少女ナミさんにもう一つの人格が現れる。このもう一つの人格が“魔女エスパー”なんですね。このときどきナミの肉体を借りて現れる魔女人格は、さまざまな超能力を使う。野犬など獣や鳥の大群を思い通りに操り、その超能力はテレポーテーションや念力まで使える。

 遠藤周作さんの「妖女のごとく」のテーマの悪女も、「エイトマン」の魔女エスパーも幽体離脱を行い、眠っている肉体以外に、遠く離れた場所に姿を現したりする。

 僕は「妖女のごとく」を読んだとき即「8-エイト-マン」の「魔女エスパーの巻」を思い出しましたね。

 ネタバレになるけど、「妖女のごとく」の語り手の主人公とその調査協力に付き合ってくれてた恋人の女の娘は、魔女人格のときの女医とその周辺の者たちにより危機に陥るが、何とか命だけは助かる。物語の終わり方が中途半端なんだけど、語り手主人公は最終的に、もうこれ以上女医の秘密を探って行くことはやめてしまうし、表面は聖女の女医のもう片面の魔女人格はそのまんまで、何も解決せずに物語は閉じてしまう。

 語り手主人公の男は、魔女人格の犯罪を暴露し公に訴えるということをしないまま、恐ろしいことからは手を引いてしまい、恋人と一緒に安全な生活へと逃げ込み、物語は中途半端で終わるから、まぁ、読了後消化不良的な不満は残るかな。でもまぁ、当の女医本人も、この自分の持つ極度の難病のような災厄に懊悩して苦しんでる訳だし、女医の周囲に居る、元夫とかも女医の奇病から何とか救ってやろうと力になってる訳だし…。あぁ、だいぶネタバレしてしまったなぁ。

 遠藤周作氏の「妖女のごとく」はオカルト的なホラー味ありのサスペンス小説かな。遠藤周作先生のこの手の小説作品は、「真昼の悪魔」「悪霊の午後」「妖女のごとく」と“現代の魔女”シリーズ三部作ですね。どれも面白い。

 「エイトマン」の「魔女エスパーの巻」は、最終的には魔女人格ごと人間ナミさんも死んでしまい、物語は決着した。

    

※超犬リープ(1)2013-10/20
※超犬リープ(2)2015-1/30
※超犬リープ(3)2016-12/28
※8-エイト-マン・インフィニティー 2005-10/10
※デスハンター 2006-4/13
※エスパー3-スリー- 2007-3/10
※少年ジュピター 2007-3/23

    

◆8マン〔完全版〕(1) (マンガショップシリーズ) (マンガショップシリーズ 435) (日本語) コミック – 平井和正 (著), 桑田次郎 (著)

◆8マン〔完全版〕(2) (マンガショップシリーズ) (マンガショップシリーズ 436) (日本語) コミック – 平井和正 (著), 桑田次郎 (著)

◆エイトマン―新作2004年度版&絶対読めない幻の読み切り傑作選’69 (トラウママンガブックス) (日本語) コミック – 桑田 二郎 (著)

◆走れ!エイトマン (日本語) 単行本 – 桑田 二郎 (著)

◆8マン ザ・ベスト 少年マガジン 復刻扉画 (日本語) コミック – 桑田 次郎 (著), 平井 和正 (原著)

◆8マンの不思議 単行本 (日本語) 単行本 – 斉藤 楠卜 (著)

◆8マン〔完全版〕(5)(完) (マンガショップシリーズ) (マンガショップシリーズ 439) (日本語) コミック – 平井和正 (著), 桑田次郎 (著)

◆8(エイト)マン 文庫版 コミック 全6巻完結セット (扶桑社文庫) 文庫 – 平井 和正 (著)

◆エイトマン HDリマスター スペシャルプライス版DVD vol.1<期間限定>【想い出のアニメライブラリー 第33集】 
東八郎 (出演), 高山栄 (出演) 形式: DVD

◆エイトマン HDリマスター スペシャルプライス版DVD vol.2<期間限定>【想い出のアニメライブラリー 第33集】 
東八郎 (出演), 高山栄 (出演) 形式: DVD

◆ベストフィールド創立10周年記念企画第6弾 エイトマン HDリマスター DVD-BOX BOX1【想い出のアニメライブラリー 第33集】 
高山栄 (出演), 上田美由紀 (出演) 形式: DVD

◆8 Man After Complete Collection [DVD] 

◆8マン [VHS] 
宍戸開 (出演), 宍戸錠 (出演), 堀内靖博 (監督) 形式: VHS

◆8マン(1) Kindle版  平井和正 (著), 桑田次郎 (著) 形式: Kindle版

◆8マン インフィニティ 全6巻完結 [マーケットプレイスコミックセット] - 
鷹氏隆之 (著)

 遠藤周作氏の「妖女のごとく」の中の主題となる美貌の女医に取り憑いてる“魔女”は、物語の中で女医を診察する精神科医が催眠療法を使って暴き出す。この精神科医もまた後に魔女人格によって間接的に死に追いやられるのですが。催眠療法中に深い眠りに落ちてる女医の口から漏れる、もう一つの人格の正体は16世紀ハンガリー王国の貴族の女性でした。

 この物語の中で語られる、現代(80年代日本の都市ですけど)女性に憑依してときどき現れる魔女人格は、歴史上実在した16世紀ヨーロッパの貴族女性。あのレ·ファニュの有名な怪奇小説「吸血鬼カーミラ」のモデルだと言われる、その残忍さで歴史に名を残す貴族夫人です。

 女医に憑依していたのは何百年という時代の時間を越えて乗り移った、中世ハンガリー王国の名門貴族出身のエリザベート·バートリー伯爵夫人。僕が「妖女のごとく」を読んだのはついこの間ですが、僕はエリザベート·バートリーの話は知ってました。20年くらい前に世界の歴史上から現代までの残酷な人間を十数人紹介した書物を読んでて、20世紀のシリアルキラーたちや切り裂きジャックのことまで書かれた中に、歴史上の残酷な人物としてこのエリザベート·バートリー伯爵夫人のことも書かれてたからです。

 このバートリーさんの驚くべき残酷な所業は、僕が80年代末頃から90年代前半に愛読していた、島田荘司氏の「名探偵·御手洗潔シリーズ」の中の前期の作品の中のどれかでも語られてました。もう昔読んだ小説ばかりなのではっきり記憶してないのですが、確かにどれかの作品の物語中に、エリザベート·バートリー伯爵夫人の話が語られてました。「暗闇坂の人喰いの木」かなぁ?済みません、はっきりしません。

 エリザベート·バートリーの残酷な所業で代表的なものは、自分の若さを保つために若い女性の血液の風呂に浸かってたというヤツですね。領地の村の若い女性たちを騙したり無理やり連れて来たりして、女性の人間の生き血を搾り取ってバスタブいっぱいに溜め、そこに入浴していたという信じられないような残酷な所業。バートリーさんは処女の血液が若さを保つ、と信じ込んでいたんですね。

 ちょっと詳しい人数は忘れちゃったけど、エリザベート·バートリーの殺人行為の犠牲になった人数は百何十人じゃ収まらないくらいだったんじゃなかったかな?何しろかんしゃく持ちかで機嫌が悪いと近くに居る身分の低い者を平気で殺害してたらしいですからね。

 このバートリーさんも愛用していたというものに「鉄の処女」というものがあって、「妖女のごとく」の中でも「鉄の処女」のことは簡単に書かれてたんじゃなかったかな?「鉄の処女」で入浴用の液体を搾り取ってたのかどうかまでは解りませんけど、そうなのかな?まぁ、書いて説明するのも気持ち悪くなるような代物です。多分、バートリーさんの時代以前からあったものなんでしょうね。人間というものは…。人間の性善説なんて絶対ウソっぱちですよね。勿論、人間の持つ優しさ、慈愛、共感、仲間意識、自己犠牲、弱者を助ける気持ちなどなどあるし、信じたいですよね。まぁ、人間にはいろいろな人間が居るってことかな。

 「妖女のごとく」の物語の中で、普段は心優しいまるで天使を体現したような美貌の女医に、時折現れる悪魔的な人格の名は、16世紀ヨーロッパの貴族女性、エリザベート·バートリーで、その人格が出ているときに、自己犠牲的に医療の仕事に励む若き女医は、姿形の見た目はそのままに残忍な行為に出る。あどけない童女もいとも簡単に殺してしまう。遠藤周作さんの小説「妖女のごとく」の主題はコレですね。

 「8-エイト-マン」の「魔女エスパーの巻」では、心優しき普通の平凡な少女、ナミさんに別の人格が憑依する。その別人格がときどき現れて乱暴を働くのですが、別人格の現れる頻度が増して来る。このナミさんに憑依した別人格が“魔女”で、その内だんだん超能力を使い始めるから“魔女エスパー”。「エイトマン」の漫画の中では“魔女エスパー”については何者かの説明はないですね。

 だんだん現れる頻度の高くなった魔女エスパーはついにナミを乗っ取ってしまう。「妖女のごとく」には普通の人間しか出て来ないけど、「魔女エスパーの巻」にはスーパーロボット·エイトマンが居る。テレポーテーションや念力を使う魔女エスパーにエイトマンは苦戦する。

 「妖女のごとく」には普通の人間しか出て来ないって、テーマの女医からバートリーさんは幽体離脱して語り手主人公とその恋人のもとに現れるけど。

 エイトマンは物語の終局、魔女エスパーをビバトロンに誘き出す。このビバトロンについては漫画の中でのちゃんとした説明はなかったと思うけど、何か巨大エネルギー発生施設ですね。核施設みたいなもんかな?核融合炉みたいなもん?解りません。とにかく巨大エネルギー発生装置。

 この施設のマックス出力上げて、その巨大エネルギーに負けて魔女エスパーは消滅してしまい、後には人間ナミさんの死体だけが残る…。だったと思う。この“魔女エスパー”のお話が、後の平井和正氏のオカルト的なSF 小説「悪霊の女王」に発展するのかな。あれはSF かなぁ?広義のSF か。

 映画「エクソシスト」も内容のベースは「8-エイト-マン」の「魔女エスパーの巻」のお話と同じですね。「エクソシスト」は1973年アメリカ制作のオカルト·ホラー映画ですが、平井和正氏の「魔女エスパーの巻」は64年の作品だから「エクソシスト」よりも9年早いことになる。

 ここのブログ記事タイトルを「8-エイト-マン」-サタンの兄弟の巻-にしてるけど、漫画「8-エイト-マン」のエピソードのことを語るとしては、「サタンの兄弟の巻」よりも「魔女エスパーの巻」の方が詳しく書き込んじゃいましたね。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする