河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2339- ブルックナー8番1稿ノヴァーク版、児玉宏、神奈川フィル、2017.5.13

2017-05-13 22:29:14 | コンサート

2017年5月13日(土) 2:00pm みなとみらいホール

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 第1稿 ノヴァーク版 18-15-28-26

児玉宏 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団


AB8
Ⅰ 6-5-4-3
Ⅱ 5-5-5
Ⅲ 5-4-3-5-9-2
Ⅳ 7-9-8-2

普段聴く耳慣れたブルックナーとは半分ぐらい違うのではないか。率直なところ。
初稿とは言え後日ノヴァークがお化粧直ししたものだがらオリジナル初稿とは同じではないと思いますが、そういったものは聴いたことが無いのでとにもかくにも雲をつかむような聴き具合で。

第一印象は骨組みが露骨に出た稿、ブルックナー初期の骨組み露出作品のように聴こえる。初期作品との違いはその骨組みが耐震構造でびくともしないといったあたり。
圧倒的なテンポではないけれどもそれでも90分、第1楽章のコーダは強奏部分があるので長くなる。のをはじめとして全体的に小節数が多いのだろう。反面、演奏としては第3楽章のコーダに見られるように2分程度のコクでさっと、というところもある。

第1楽章から、演奏はあまり揺らさないもの。主題の陳列的な具合で、また、第2主題と次の主題が等速に聴こえるのは倍速なのに振りが同じだからといったところもある。
色々とそういった感じで、几帳面な演奏でわかりやすい。指揮者がそのように聴衆に向けているのかもしれない。
コーダの強奏は今となってみれば、とってつけた感があり違和感ありまくりだが、ブルックナー終始としてはこのように華々しく終えたい気持ちもわかる。

スケルツォのフシが終楽章のコーダのところで出てくる印象が薄いのは、もとのここの楽章の彫りが必ずしも深くないから。トリオとのバランスはいいもので、ここらあたりは出来上がった作品と感じる。演奏にもっと立体感があればさらにいい。

アダージョの骨組みは明確なものでよくわかる。3回目の第1主題には感興的にクライマックスが含まれるのでロングになりスケール感がでますね。頂点調までの転調が後発稿と違うと思うので途中、一瞬、曲を追えなくなったところもあった。
ホルンを主体とした祈りのコーダは短いもの。ササっと。

終楽章はホルンの飾り的フレーズがちょっと安っぽい。コーダは突然の強奏ではなく徐々に力が加わっていき例の下降音のフレーズになるのが印象的。それと何といっても、このあと、トランペットのところがピアニシモで浅い川面のような進行になるところ。ここは新鮮。
この楽章は提示部展開部再現部と同じ幅軸のまま全体に広がったような具合で、いいバランスを保持したままスケールが大きい。

演奏はエモーショナルなところは無くて、主題の次々出し、陳列のようになるところもある。それは時間軸を取り払うことになり、展覧会の絵見物状態かもしれない。次々主題の音が内在されたままで、進行することによる感興的積分状態にいまひとつなりきらないのは、初稿という作品への気遣い意識があるためではないのかと邪推する。消えていく前主題の印象。

オーケストラサウンドはやや硬めで輝かしいもの。明確な音で大作の縁取りをしていく。クリアなサウンドでビッグな作品のアウトラインを示していく。
コンマスと同じように皆さん猛弾きしてくれたならもっと立体感のある演奏になると思う。ブラスセクションは強烈だが抑える必要な無くて弦の猛弾きこそが求められる。

なにはともあれ、エポックメイキングなイヴェントで最後まで楽しみました。ありがとうございました。
おわり


2338- タンホイザーov、ヴェーゼンドンク、ゲーリング、ブルックナー3番、上岡、新日フィル、2017.5.11

2017-05-11 23:01:07 | コンサート

2017年5月11日(木) 7:00-9:15pm コンサートホール、オペラシティ

ワーグナー タンホイザー序曲  14′

ワーグナー ヴェーゼンドンク歌曲集  3-3-6-2-5′
  ソプラノ、カトリン・ゲーリング

Int

ブルックナー 交響曲第3番ニ短調  23-11-7-13′

(encore)
バッハ 管弦楽組曲第3番より、アリア  4′

上岡敏之 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


ヘヴィー級のプログラム。ワーグナーの濃厚なサウンド、ソプラノのカトリンさんの見事な歌唱、ブルックナーの重厚なサウンド、本格的なもので全部満喫できた演奏会でした。

タンホイザーの序曲は、バックに配したホルンがやや弱めに厳かに開始、下のピットから音が浮き上がり緞帳にぶつかりながら前に伸びる響き、といったオペラの雰囲気満点。
ゆっくりとした中から主要旋律が浮かび上がる。舌の上でトロリところがるワインの味わい、芯をもってぶつかり合うコクのある弦の響きは濃厚な混ざり具合。美味い。
上岡の棒は悠然としたものだ。パースペクティヴがよく効き、真綿雲のように流れてゆく。少しテンポを上げた中間部から再帰した旋律はやや熱を帯び、最後は一気に決然と閉じる。贖罪のストーリーがここから始まる。秀逸な演奏でした。

次のヴェーゼンドンクは滴るような驚異的な美演でした。唖然とする室内楽的オケ伴奏はまるで上岡がピアノ伴奏でもしているかのよう。そのなかをスキニーなカトリンさんがやや硬めな声質で歌い始める。上から下まで全ての音の粒がくっきりと明瞭にクリアに(同じか)、かつ同一の音圧で正確に発せられる。何かヴェールを一枚剥がされたかのようなワーグナー、作曲した本人も目から鱗が落ちたかもしれぬ。
トリスタンを感じさせつつもあのしつこさはここには無い。エキスだけ、炎の核だけがゆらいでいる。真摯で几帳面、余裕の運び、1曲ごとの切り替えの見事さ。
知的で正確でそして心に沁み込んでくる。かつてのヒルデガルト・ベーレンスを思い出す。実にいい歌だった。終曲におよび、思いあまったかのようにカトリンさの目がややウェットになったように見受けました。
プログラム冊子によると上岡さんの振るパルジファルでクンドリも歌っているようですから、呼吸がピッタリなのもなるほどねの実感。いい歌と伴奏、最高でした。

ブルックナー3番、稿の事はプログラム冊子に3稿までの経緯を書いてあるだけで、演奏に際し、どの稿といった記載はない。当たり前の判断だと思う。といいつつ、例えばスケルツォにおけるブラスの刻みハーモニーはちょっと加工してるのかなとも思ったりした。いずれにしても上岡の意思は明確と感じる。

AB3
Ⅰ 9-7-4-3
Ⅱ 3-3-1-2-2
Ⅲ 3-2-2
Ⅳ 8+5

第1楽章が巨大だ。スローテンポの第1主題から始まった演奏は続く2,3主題ともに同じような重さを持った速度設定で、この解釈表現がおしなべて最後まで変わらず続く。余計なアゴーギクも無い。圧するような不動テンポで、オーケストラ能力をフルに引き出しながらブルックナー旋律を濃厚に出し入れしていく。
提示部第3主題までの陳列だけで冒頭10分近くかかる極めて濃厚な表現。オーケストラは音の運びが雄弁、3主題のブルックナーサウンドを堪能。オケから引き出した潜在能力、上岡棒は凄いものですね。
もう、ここまでで、言いたいことはほぼ言い尽くした感がある。ニ短調のやにっこさも忘れた。

巨大な第1楽章に比して残り3楽章はバランスがいいとは言えないものの、上岡の棒はそれを補って余りある説得力のある表現でした。

第2楽章緩徐楽章の主題は二つとも美しいもので、羊水の居心地を思い出す。室内楽的な美しさは上岡棒、ひとつの頂点解釈かと思われる。実に美しい音楽でした。主題の練り上げは無くあっという間に終わる。美しいものは短いものだ。

スケルツォ楽章、運動への切り替えはお見事、すっきりとした平地にデコボコと小石がある。終楽章を予見しつつ判を押し終える。スケルツォ部分でのブラスセクションの響きが少し違うような気がしました。なにか加工しているのですかね。ちょっと大胆な響きと感じました。

終楽章は、提示部は明確、後は野となれ山となれ的なブルックナーのように聴こえる。この3番は主題の長さに比して経過句も結構じっくりと歌い込んでいて上岡棒はそのあたりしっかりとつかんでいると思います。
もはや半分以上提示部ではないのかという思いの中、あっと思わせる第3主題が始まる。アンサンブルをずらしたような主題が、ただでさえスローな進行であったこの曲が、極めつくしのもう一段、グッとテンポを落とし響きの大伽藍をこれでもかと鳴らす。ビックリ。
上岡が本当にしたかったのはこのウルトラスローな事ではなかったのか。たぶんそうだ。
最後のコーダは1曲目のタンホイザーと同じように明瞭にギアチェンジしたテンポで決然と閉じる。
色々と考える間もなく、全体俯瞰としてはバランスが今一つの作品ながら上岡棒によって鮮烈に蘇ったブルックナー3番。蘇生した、感動した!!

上岡NJPは定期を全部収録するような話だったと思う、今日も収録マイク付き。彼の出番の時はだいたいアンコールをやっているので、商用CD作成時、余白に入れていくようなスタイルなのかもしれませんね。この日もヘヴィー級の演奏会ながらサラリとアンコールをいれてくれました。
おわり




2337- ハチャトゥリアン、ピアノ協奏曲、ベレゾフスキー、リス、ウラル・フィル、2017.5.6

2017-05-06 22:20:29 | コンサート

2017年5月6日(土) 4:30-5:35pm ホールC、東京国際フォーラム

タン・ドゥン  パッサカリア ~風と鳥の秘密~  11′

ハチャトゥリアン ピアノ協奏曲変ニ長調op.38  11-9-7′
  ピアノ、ボリス・ベレゾフスキー

ヴィクトロワ  踊る天使 (日本初演)  9′

ドミトリー・リス 指揮 ウラル・フィルハーモニー管弦楽団


LFJ2017より
昨年はLFJに精力的に出かけましたが、今年はガル祭2017のほうに出かけていたので、このプログラムだけ。

ハチャトゥリアンのコンチェルトはこれまで聴いたことがあったのか現時点で記憶になし。
第1楽章はジャジーなシンコペーションが印象的。終楽章はショスタコーヴィッチ風なリズムの刻みが迫力あり。
ピアノはやや硬めのサウンドで、オーケストラの咆哮とは別のところで鳴ってる。浮遊感のあるもので極めてクリア。リズミックでノリが良くて骨太な筆のタッチです。
終楽章での爆発も冷静な弾きで正確。快調なベレ熊さんのピアノ堪能できました。


1曲目のタン・ドゥン、鳥の鳴き声を聴衆がスマフォにダウンロードして音を出させて始める曲。目新しいというか、会場側は圏外電波を切らないといけませんね。
3曲目のヴィクトロワの作品は太鼓が始終リズムを刻みながら全体的に派手な鳴り、今年のLFJにふさわしいものかもしれない。ご本人登場。

45分の公演と書いてありましたが、実際のところは1時間越えの充実した内容。
おわり


2336- ベトソナ全曲演奏 第4夜、5,6,13,15,18,29、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.5

2017-05-05 17:40:47 | リサイタル

2017年5月5日(金) 5:00-7:30pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第4夜

第5番ハ短調 塚田尚吾   5-8-4′
第6番ヘ長調 近藤嘉宏   6-5-3′
第13番変ホ長調 田島睦子  5+2+3+6′

int

第15番ニ長調 田園 藤野まり  11-7+3+5′
第18番変ホ長調 平野加奈    5-4-3-4′
第29番変ロ長調 ハンマークラヴィーア バリー・ダグラス 11-3-19-11′


ガル祭2017

ベトソナ全曲第4夜千秋楽。
5月2日からスタートしたベトソナ企画、本日千秋楽。この日だけ2時間半のリサイタル、収まらないかもしれない。

29番はキャンセルしたソン・ヨルムに代わりバリー・ダグラス。ベトコン1の代打は早めに横山さんと告知がありましたが、こちらのほうは誰が代打なのかしばらくノーティスが無くてどうなるのかと思っていたのですが、なんとバリー・ダグラスがすると一二日前にきまったようです。
この日の公演は6曲で気がつけば大詰め最後のハンマークラヴィーアでバリーが全部さらっていってしまった感があるが、それはそれとして。

第5番
初日に22番を弾いた塚田さんが少しぎくしゃくとさせながらピアノが小さく見えるその体躯で開始。
4番までコテコテシンフォニックな4楽章ソナタでしたが、5番になって何か抜けるような余裕の歌を感じる作品。流れるような作品、演奏のほうはやや重いけれども、しっかりとひとつひとつくさびを打っていくようなスタイルも良いものだ。

第6番
作品10の3個のうち2つ目の曲。近藤さんのプレイは1つ目の塚田さんとは随分と違って軽快。切れ味が鋭い。ひとつずつの音符の切れ込みが鋭い。緩みのないピアノですね。
5番6番はそれまでの硬さから一歩先に出たような柔らかな歌い口で魅力的な作品とあらためてわかりました。いい演奏でした。

第13番
前半の最後は田島さん。月光の先取り感。独特の雰囲気あるリズムで進行。手慣れた語り口で、リズムが強調されながらそれ自体一つの歌のような感じです。膨らみのある演奏で楽しめました。

ここで前半終了。
千秋楽の時間割は2時間半。締めのフィナーレイベントもあるのだろう。でも6曲とはいえ大規模な曲が多いのでたぶんギリギリになる。と思っていたら潮さんの告げた休憩は10分ほど。まぁ、演奏しまくりはこちらとしては願ってもない事だ(笑)。

第15番 田園
この曲はコクがありまくりでじっくりと聴きたい。
藤野さんはベトソナ全ではこの15番のみ。息の長い主題から始まる。歌い出しは淡々としたもので響きを楽しむ感じ。徐々に音楽に没頭していき、没頭するにつれ演奏のほうは歯切れがよくなる。輝きが増す。腕がさえる。
アンダンテも規模が大きい。バスの規則正しい刻みが心地よい。それに乗るように鮮やかな歌。田園というよりも思索の森の小道を正しく歩むベートーヴェンといった感じか。切れ味の良い演奏は本当に心地よい。スケルツォも同じモードを引き継ぐ。
終楽章は大きさが戻ってきて、曲自体シンフォニックなものではないけれども、第4楽章終楽章としてのバランスの良さは見事なものですね。落ち着いた気分で演奏を聴き終えることが出来ました。お見事な演奏でした。

第18番
この曲は中間のスケルツォ楽章が一度聴いたら忘れられないメロディー。平野さんはノリノリでスパスパと小気味よい。楽章毎に結構雰囲気が変わる作品で、小ピース集のような具合もある中、演奏スタイルとして決まったものがあって、16番17番とは違った明瞭な輪郭と芯を感じさせる佳演でした。

第29番 ハンマークラヴィーア
ベトソナ全企画千秋楽最後の演奏はバリー・ダグラス。
さっと始まる。ささっと進む。気負いゼロ。余計なジャブジャブ感は皆無。作品の音符だけがそのまま出てくる。いきなりの2分休符。ベトソナ最後の4楽章構成はやっぱりシンフォニックなもので編曲すればすぐにシンフォニーになりそうな気配。
第1主題からベートーヴェンの意識は第3楽章の幾何学模様の前出し的な装い。幾何学メロディー。
バリーの腕の動きは速い。ひとつの音を弾き終えると、次の音となる鍵盤への両腕の移動がものすごく速い。あっという間に次の鍵盤上に到達している。ささっささっと右左に動く腕捌き。あの動きがあればこそ、いともたやすく、大きな表現力を実現できるのだろうね。目まぐるしく変わる主題。ソナタの構造がバリーの腕から透けて見えてくる。主題の切り替えの見事さ。水際立ったきれいな音。構造が巨大伽藍の様相を呈しそのパースペクティヴ感に悶絶。素晴らしい。素晴らしすぎる。
幾何学模様が最後、積分されて積み重なる。興奮の極みですな。

第2楽章のスケルツォはエキスのみ。理想的な体脂肪率。作曲家はこのスケルツォがベトソナフィニッシュとなるのを認識していたのかもしれない。偉大なものは単純なり。
光るバリーの腕捌きは音楽を立体的にする。ジャングルジムを通して先が見えてくる。この構造感。

第3楽章、アンダンテ・ソステヌート。
昨年2016年、ユジャ・ワンの29番を二回聴きました(9/49/7)。あれも別世界でしたけれども、今日のバリーはもう一つの別世界かな。

幾何学模様が機能的に運動している。音のない空白さえ音楽になっているユジャのこの楽章でしたけれども、時間軸が大幅に伸びたバリーの演奏では音が一つのパッセージが済んでもそれが底辺を据えたままで斜め前に動いてきて、また別のフレーズが斜めに動いてきて、それらが新たな構造物のようになり動き出す。抽象的ですね。ま、そうゆうことです。
ベートーヴェン別世界の模索から到達へ。幾何学模様は何層にもなっている。
バリーの音は何層もある。素早く動く両腕はここでも変わらない。ピンポイントでセットアップされた位置から指が垂直に落ちる。響きの強さは何段階でも作れそうだ。
沈殿した灰汁は取り払われ、清らかな音は静謐さを増し、ユニバースの広がりを魅せてくる。身体が宙に浮いていく。宇宙がゆっくりと一回転しているような筆舌に尽くし難い演奏だ。

終楽章は前楽章の夢の世界をひきずったような境目の感じられない序奏のあと、最初の2小節ほどでこれってフーガだよねって極めてよくわかる。なんだか、安堵。
バリーの技には音響美が加わっていく。幾層もあった響きが重なり合って厚みを増し勢いを増していく。凄い、ジャングルジム、分解されて宙に浮いて遠くに果てる。

夢のような世界、凄い演奏でした。感動した!!



夢のような世界、現実に戻してくれたのは、係のオヤジ。潮さんとちょっとしたマイク挨拶をしたバリーに向かって袖口から怒鳴り散らしている。予定時間越えのリサイタルとなったためフィナーレのエンディングに間に合わなくなるからあんまりしゃべらず早くしゃべ終われという感じだと思うが、潮さんが恐がっている。
この見苦しい係オヤジを次までにファイアーしてくれることを望む。日本では国会中継の政治家からテレビドラマの刑事ものまで怒鳴り散らすDNAがあって日常茶飯事とはいえ、全部ぶち壊しそうになったこのオヤジ、見えたのは前席の方たちだけだろうから不幸中の幸いか。オヤジも目を開き、世界を見てけれよ。

それに、このお祭りのタイムチャート。これ自体は問題ないかも知れないですけれども、例えば今回出演した3オーケストラ、高雄市響を除く2オケのモタモタとした登場は、在京にも同じようなオケがあるが、それ以上にひどいもの。だからフィナーレも少しぐらい遅れてもいいんじゃないのと言いたくなる。舞台にナビゲーターがいるからそこを怒鳴るというのは大いなる間違いで、それがいないオケ演奏ならいいのかと。まずはオペレーションの極意を学べ。
運営については色々とあったようですが、バックステージストーリーは好きではありませんのでやめます。見えた話しかしません。

この後味の悪さはありましたけれども、そういった事をはるかに越えたベトソナ全企画、大いに楽しめました。本当にありがとうございました。
おわり


左桟敷席から

 


2335- 舞箏笙、2017.5.5

2017-05-05 16:48:19 | 室内楽

2017年5月5日(金) 1:30-2:20pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン 「悲愴」ショートヴァージョン  5′
  舞、藤間信之輔
  笙、豊剛秋
  二十五弦箏、中井智弥

モンティ チャールダーシュ  6′
  笙、豊剛秋

中井智弥 花のように    7′
二十五弦箏、中井智弥

ベートーヴェン  「悲愴」2017音楽祭ヴァージョン  9′
舞、藤間信之輔
  笙、ピアノ、豊剛秋
  二十五弦箏、中井智弥


ガル祭2017

3人の自由な組み合わせによる4曲。うち2曲は悲愴第2楽章より。悲愴と言えば第2楽章という話か。
今回のお祭りでは悲愴をたくさん聴きました。この日の演奏は2人だけで、その楽器自体、線が細く、メロディーで形を整えていくようなところがありますね。
短い舞台でしたが楽しめました。ただ、トークが長すぎて、またその内容が笑いをとるようなところもあり、どうかなと思いましたね。
このお祭りはクラシック一色ではなかったようで、客種も別世界でした。
おわり

 


2334- 田園、スダーン、OEK、2017.5.5

2017-05-05 16:02:55 | コンサート

2017年5月5日(金) 0:15-1:05pm コンサートホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調 田園 12-12-6+3+8′

ユベール・スダーン 指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢


ガル祭2017

二日前、ダグラスのエンペラーの伴奏をしたときの同オケ、広上の指揮ともども素晴らしい演奏でしたけれども、今日はさっぱり。
長めのハーモニーに汚れが目立つ、濁っている。それとパッセージのおしまいのところが不明瞭。ずっと最後まで不明瞭で、これはどうしたものかと。
指揮者は途中左腕のカフスが飛んでしまったらしく袖口が広がったままの振り。色々と準備万端ではなかったようです。
おわり


2333- 大公、アキコ、レイコ、バリー、2017.5.5

2017-05-05 16:00:39 | 室内楽

2017年5月5日(金) 11:00-11:45am 邦楽ホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調 大公 13-7-13+7′
 ヴァイオリン、アン・アキコ・マイヤーズ
 チェロ、クリスティーナ・レイコ・クーパー
 ピアノ、バリー・ダグラス


ガル祭2017

ビッグなお三方によるヘビー級の演奏となりました。
ステージ左アキコ、右レイコ、真ん中奥にバリー。
チェロのレイコさんが皆さんの息を整えている感じがあります。表情豊かでアイコンタクトも率先して。
ヴァイオリンのアキコさんはひたすら弾きまくる感じで。奥のバリーは慎ましやか、音も弦の邪魔を決してしないレベル。

大きい曲、ピアノと弦がバランスよく滑らかに流れていく。抱擁されるような居心地の良い演奏。
最初はピアノが主導するような形、すぐに溶け込むように弦がメインストリームを作っていく。ピアノの主張は出しゃばらない、弦と同じように弧を描くような歌い口は繊細で時にストイックとさえ思えるバリーのもの。本当に良いアンサンブル。

第1楽章ソナタは巨大、チェロのレイコさんがしなやかにのびのびと歌う。アキコさんのヴァイオリンは時に鋭く刺さる。この2楽器による掛け合いはお見事ですね。バリーがソナタの形式感を保つ。
1楽章がこれだけデカいと次のスケルツォもデカいというか、ベートーヴェンの寸法レベルでのバランスの良さを実感できますね。余裕の2楽章。
次のアンダンテ・カンタービレは第1楽章と同じ規模。3楽器なれど隙間が無い。あるのだろうけれども、呼吸が素晴らしい。音楽がリアルに息づいている。真綿雲のように流れていく音楽。
音楽が呼吸をしつつアタッカでそのまま終楽章へ。突入という感じは無くてフワフワ雲の流れが少し速くなったようだという感じ。デリカシーも終楽章まで同じ香りで持ち越され漂う。生きた演奏。本当に素晴らしい。3つあわせて一つの楽器になった。

ベトソナ全とはまた違った趣きの曲、演奏、楽しめました。
おわり




2332- ベトソナ全曲演奏 第3夜、1,4,19,20,23,30,31,32、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.4

2017-05-04 21:54:46 | リサイタル

2017年5月4日(木) 6:30-10:00pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第3夜

第1番ヘ短調 菊池洋子      5-4-3-5′
第4番変ホ長調 木下由香    6-9-3-7′
第19番ト短調 三浦友理枝    4-4′
第20番ト長調 三浦友理枝    4-4′
第23番ヘ短調 熱情 アンナ・フェドロヴァ  11-7+6′

int

第30番ホ長調 アンナ・フェドロヴァ   5-3-12′
第31番変イ長調 鶴見彩       7-2+11′
第32番ハ短調 竹田理琴乃     10+18′


ガル祭2017
ベトソナ三日目、今日は8曲、全員女性ソリストです。

第1番
作品2のうち昨晩の3番と今日の1番を菊池さんが演奏。
この1番もそのまますぐにシンフォニーに編曲できそう。シンフォニックな作品。
菊池さんの方針は3番と同じような色あい。流されることのない演奏でベートーヴェンの堅実さが良く出ている演奏。菊池さんというとモーツァルトを浮かべてしまうが、これら作品はハイドン的な色彩を感じさせるもの。彼女が現在どれだけハイドンやベートーヴェンあたりに取り組んでいるのかわかりませんが、新境地的なところもあるのだろうか。
手ごたえ十分な演奏、古典から炎が少しずつにじみ出てくる。

第4番
初期の作品は4楽章スタイルで規模の大きな作品群。
木下さんの演奏は耽溺するようなところが無くて約25分ほどでエンド。第2楽章は長いものですけれども、祈りのような、沈んでいく音楽。ここは少し長く感じた。
次に長い終楽章が表情豊かでいい流れでしたね。この楽章のメロディアスな居心地良さ、前楽章も同じように流れるメロディーで、これら両楽章の佇まい鮮やかでした。

第19番
コンチェルト3番で素晴らしい演奏をした三浦さんの出番。
短い曲です。フォーエヴァーに弾いていたいような、聴く方もそんな感じ。心地よい音楽が絶え間なく流れていく。素晴らしく躍動する旋律。
HJリムさんのベトソナCD箱には、beethoven complete piano sonata と書いておきながら19番20番は未収録。ご自身の判断によるものでしょうが、なんとももったいない。三浦さんの演奏を聴くとそういう思いがつのります。素敵な演奏でした。

第20番
これも三浦さんの演奏で。19番と同じように心地よい演奏に癒される。

第23番 熱情
フェドロヴァさんの演奏で。1,2楽章は含むものがあるというか、やや思わせぶりなところがある。ちょっと力んでいるのかもしれない。激しい音楽がゴツゴツと鳴る。
終楽章は余計なことを考えながらの演奏はなかなか難しくて、かえってそれが功を奏したようなところもあり、蛇腹のようにつながり流れる熱情、いい演奏でした。

ここまで5曲。前2晩と同じく短い休憩。

後半はベートーヴェンのピアノ・ソナタ大詰めの3曲。大詰めと言えば29番も入るような気もするし、そうすると28番も足を突っ込んでいそうだし、
色々と楽しみが絶えない。

第30番
前半の最後で熱情を弾いたフェドロヴァさんが登場。
ちょっと重いかな。なんだか最初からダメ押し的なところが見受けられる。第1,2楽章と終楽章変奏曲との切り替えが難しいのか。切り替えはいるけれど違う曲2曲という配列ではないので、そこはもう少し、あと一押し要りましたね。全楽章にわたり一つ筋が通るようなものが欲しいところです。それから、機能的な音符の流れから情緒がにじみ出てくるようなところも欲しい。抽象的で申し訳ありませんが。

第31番
今日の30番を聴いた後で鶴見さんの31番を聴くと、30と31の距離はかなりあるように思えてくる。
なにか途中から始まったような第1楽章、つまり終楽章の気配が濃厚なアトモスフィアを大いに感じさせてくれる出だし。それは自分が持っているイメージ通りのもの。テンポ設定と呼吸が最高。形を崩すことなく高低の動き、くまなくバランスがとれた演奏でした。
終楽章の序奏はフーガが始まらないと序奏だったのかとわからないほど濃厚。機能美に溢れた序奏、序奏後半の嘆きの歌はウェットで短いながら実にしびれる。
フーガの醍醐味を楽しみつつ、嘆きの歌も再度感じつつ、短いコラール風味のパッセージ出現、鶴見さんはゆっくりとメゾピアノのレベルに抑えたもの、息の詰まる緊張感、そして鮮やかな開放へ。お見事!!
ベートーヴェンの内面を照らして魅せてくれました。この終楽章、秀逸な演奏でした。感動した!!

第32番
昨晩25番を弾いた竹田さんが32番を。
第1楽章ヘビーなハ短調、あわてず急がず一つずつの音をクリアに決めていく。正確さは機能美を感じさせる。
対照的な2楽章、20分にとどこうかというスローでスタティックで圧倒的なベートーヴェンでした。持続するインスピレーション。滴るベートーヴェンモノローグが続く。終わりそうで終わらない。ポツポツと音と音の間の空白の静寂が悉く雄弁にきまり尽くす。ものすごい説得力。完全にベートーヴェンの響きを自己の中に感じての演奏と見うけました。鬼気迫る演奏。草葉のベートーヴェンも蓋が開くぐらい喜んでいるに違いない。ベートーヴェンヘヴン。
ベートーヴェンはプレイヤーを試しているのであろうか。聴こえていない作曲家は自作でもはや自演の一体化は出来ない。演奏家がどれだけ作曲家に近づくことが出来るか。竹田さん自己をさらけ出したかのような心情告白モノローグ、作曲家とこの日シンクロしたのではなかったのか。もちろん聴いている聴衆も。
このインパクトはしばらく消えるものではない。とてつもないウルトラ演奏、ありがとうございました。
興奮さめやらぬ。
おわり

 


2331- ベトコン1、横山、広上、高雄市響、2017.5.4

2017-05-04 17:09:04 | コンサート

2331- ベトコン1、横山、広上、高雄市響、2017.5.4

2017年5月4日(木) 4:00-4:50pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番ハ長調  18-11-9′
 ピアノ、横山幸雄

(encore)
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴 第2楽章 5′


広上淳一 指揮 高雄市交響楽団


ガル祭2017
ソン・ヨルムがキャンセル、代打はなんと横山さん、精力的にお祭り対応。

エンペラーと同規模の大曲の仕上がり。偉大なベートーヴェン像、お見事な演奏でした。
昨日、一昨日と聴かせてくれたソロのリサイタルと打って変わって折目を正しく入れてくる。シンフォニックな味わいが満載。
カデンツァはどなたのものか知りませんけれども特筆すべき長さ。バックオケの比較的端正な味わいとはずいぶんと異なっていました。他の独奏部分での正確な妙技も合わせてパーフェクトの一言。
協奏曲できっちりソナタ形式貫くような曲をパーフェクトにこなしたらこのような偉大な演奏になる。ラルゴ楽章も緊張感が継続している。まぁ、両楽章ともデカい。
終楽章になってリズミックな味わいが前面に出てきてピアノもオーケストラも軽快に。流すような感じは無くて地に足がついている。ここまできてようやく明るい曲だったね、の実感はあるもののヘビー級の全体像はあとあとまで印象深いものでした。
このような演奏を可能にしたもう一つの要因は指揮者ですね。見事な指揮でした。ベト7で五月蠅過ぎた太鼓は別の方に変わっていました。これが広上の指示なのかどうかわかりませんが、演奏の方は自明すぎてもう、明白に様変わり。きっちりコントロールされた太鼓。まぁ、これだけではなくて、全パートが指揮者が出すクリアな指示に敏感に反応。正確でバランスのとれた演奏を展開。下手ななんとはいない下手ななんとかがいるだけだ。このセリフの通り、真逆広上、ダンチの棒でした。指揮レベル違い過ぎ。同じオケとは思えないほど豊かなベートーヴェン演奏を繰り広げてくれました。拍手喝采。
付け加えて、独奏者とのコンタクトがやっぱりすごい。歴然とした凄さ。全般にサポート力、決定的に凄い。

巨大な1番、心ゆくまで楽しめました。それとアンコールの悲愴、昨日、横山さんのリサイタルで聴いたばかりですが、巨大なコンチェルトの後、冷静に弾かれていましたね。
素晴らしい演奏会、ありがとうございました。
おわり


2330- ベトコン3、三浦、スダーン、KSB、2017.5.4

2017-05-04 15:01:34 | コンサート

2017年5月4日(木) 1:30-2:20pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン ロンド ハ長調  7′
  ピアノ独奏、三浦友理枝

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番ハ短調  17-11+10′
  ピアノ、三浦友理枝


ユベール・スダーン 指揮 ベルリン・カンマーシンフォニー


ガル祭2017

三浦さんは今年の東京春祭りのベンジャミン特集で一度聴きました。
2300- ベンジャミン・ブリテンの世界、2017.3.26 


ベートーヴェン3番コンチェルト。
長いオケ先出し提示部、煮こごりKSB少し分離し始めたかな。ここらへんは指揮者の作用がありそうだ。

美しいピアノだ。柔らかなタッチ。粒立ちの良い音群もソフトな中に取り込まれていく。そして、カラフルな輝きはピアノを聴く楽しみを無限にさせてくれる。
中間楽章の静謐な表現はさらに素晴らしい。ホールの空気感変わりました。モノローグ風味満載でゆっくりと語られるベートーヴェンもう一つの内面。
三浦さんはプレイしているパートをよく見ている。室内楽的なアンサンブル志向あると見えます。インストゥルメントの束がピアノ自身も含めて重奏になって歌われるときの味わいが絶品。結局、ソロもアンサンブルもオケバック提示部のようなところもそれぞれ相応に対応できていて柔軟、天性のものを感じました。スバラシイ。
色合いはハ短調というよりも、1曲目の独奏ロンドのハ長調の色。3番のイメージがすっかり変わりました。
室内楽的な筆のタッチは伴奏のオーケストラにもプラスに作用しましたね。表現力の大きさがフルオケに伝播、正直なオーケストラというべきか。
いい演奏会でした。ありがとうございました。
おわり


2329- ベト7、ヤン、高雄市響、2017.5.4

2017-05-04 15:00:00 | コンサート

2017年5月4日(木) 0:15-1:05pm コンサートホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン エグモント、序曲  8′

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調  14-8-8-8′

チーチン・ヤン 指揮 高雄市交響楽団


ガル祭2017

昨日のエグモント物語に続き同じコンビで。
エグモント序曲の独特のアクセントについては昨日と同じ感想。
ベト7は太鼓が強すぎる。異常に強すぎる。嬉しそうに楽しそうに強打連発だったので指揮者の意向だろう。LFJのラ・ダンス張りか。
オーケストラの旨味はかき消され味わいも飛んでいく。強打してなにかを消さないといけない状況なのか、そう疑わざるをえない。舞踏の嵐をティンパニの叩きの強調と思っているのかもしれない。
太鼓のないところだけよく聴くと、パッセージのおしまいのところが不明瞭。みなさん頑張っていて、KSBのような煮こごり状態ではなくて線としての鳴りはいいものと思います。
いずれにしましても、全体バランスが良くなくてベートーヴェンの造形美はありませんでした。
おわり


2328- ベトソナ全曲演奏 第2夜、3,7,8,10,11,14,17,24,25、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.3

2017-05-03 23:40:23 | リサイタル

2017年5月3日(水) 6:30-9:45pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第2夜

第3番ハ長調 菊池洋子          12-6-3-5′
第7番ニ長調 木米真理恵         5-8-2+4′
第8番ハ短調 悲愴 米谷昌美      8-5-5′
第10番ト長調 近藤嘉宏          7-6-4′

int

第11番変ロ長調 渡邉康雄       8-7-3-6′
第14番嬰ハ短調 月光 横山幸雄  6-2-5
第17番ニ短調 テンペスト 石本えり子  6-8-5′
第24番嬰へ長調 テレーゼ 山田ゆかり  4-3′
第25番ト長調 竹田理琴乃  5-3-2

ガル祭2017
昨晩の初日は9曲、今日も9曲、男性陣が一人増えて3名、女性6名という布陣。
作品2の3曲のうち、この日は3番からスタート。

第3番
菊池さんはメトロポリタン・エリアでのコンサートによく出ていて、モーツァルトのコンチェルトを何度か聴きました。
今日は30分に迫ろうかという大曲。小菅さんやアリスさんのCDを取り出す機会多いのですが、こうやって生で聴く3番は格別。
シンフォニックで大がかり、第2楽章アダージョの頭は、楕1楽章アレグロのメロディーラインそのままではないのかと思わせてくれる親近性の強いもので、なにやらそういった気配が随所に聴かれる。強い構成力を感じる。この両楽章で言いたいことはあらかた尽くされている感じ。まぁ、だまっていてもフォルムは自然に出来上がるのでその部分はベートーヴェンに任せておいて、といった演奏もありですね。
菊池さんのタッチはみずみずしいものですが決して角張らない。鋭角になることのない響きで、まるで真綿の手袋をしていてそれ越しに鍵盤を押さえているような鳴り。以前聴いたモーツァルトよりも柔らかでやや幅があるような印象。
曲は尻つぼみというわけでもないが収束していく、響きはさらにまろやかになる具合でプレイヤーの存在が徐々に大きくなる、充実の演奏でした。

第7番
昨晩27番を弾いた木米さんが弾く。この曲は20分ほどあり規模が大きく、ものものしい旋律が1,2楽章と続く。ちょっと軽くした3,4楽章が好み。しっかりとしたリズムの中、進むにつれウェットな詩情がさわやかに流れてくる。短い後半楽章のさりげないプレイが魅惑的な演奏でした。素敵でした。

第8番 悲愴。
今日午前、横山さんのリサイタルで聴いたばかり。今度は米谷さんの演奏で。一日に2回も聴ける。ハッピーですな。
横山さんとは別路線。間の取り方が独特、体の動きを見ていないと次の展開への入りがわからなくなるようなところもありますね。緊張感を作り出すための間というわけでもなくて、なんというか、デリカシーな流れと一体化したような具合です。
ひとつのカクテル、作り手によって大いに味わいが異なる。その違いも楽しめる。贅沢の極み。

第10番
近藤さんの出番。さっそうと登場。周りの聴衆からほぉとため息が漏れる。偉大なものは単純である(F)、軽々しさを一瞬たりとも見せない。集中したプレイでした。第1,2楽章のつながりを強く感じさせてくれるのはそのコンセントレーションのたまものですよ。
正確でウィットに富んだ表現、音がきれいに弾む。スバラシイ。

ここまで4曲、あっというまの出来事でした。昨晩と同じく短い休憩。
後半は11番から。

第11番
御大登場。この曲も規模がデカい。このままオケ用に編曲すればシンフォニーになるのではないのか。指揮者の渡邉暁雄のシベリウスなどは殊の外豪快な筆の運びで、見た目と違ったところがあったが、御大は力が抜けていて力まず、きれいな音で、大きな体躯、ピアノを抱え込んでしまいそうな勢いのようにみえるけれども、出てくる音楽はクリアな鳴りのベートーヴェン。進むにつれてフォルムの塊から火花がビビッと出てくる。味わいのある演奏でした。

第14番 月光
横山さんの演奏は昨晩ワルトシュタイン、今日の午前は悲愴、熱情を聴きました。ここで、月光。
楽章の対比感、コントラストがどこまでもよく効いている。楽章毎のメリハリのよさにとどまらず楽章対楽章が呼応するような具合で全体俯瞰が素晴らしくよい。終楽章の過激さはエキセントリックな様相を呈する。そんな中、冷静に見つめるもう一つの目があるような気配。

第17番 テンペスト
昨晩16番を弾いた石本さんが今度はテンペストを。
魅惑的な曲ですが、ニ短調はだいたいやにっこい。ブル9、第九、シュマ4だいたいやにっこい。聴き手の積極的な受け入れる力を求められますね。まぁ、好きですが。
石本さんの演奏は第1,2楽章のつながりを素晴らしく良く感じさせてくれるもの。ほとんど一体化している。終楽章はなにやら別の魅惑的な曲を聴いているような趣きで、2曲聴いた様な聴後感。

第24番
短い序奏が魅惑的な曲。短い序奏とはいえ曲自体短いものなのでバランスとしてはちょうどいい。山田さんにはちょっと物足りないかな、弾き足りない感じに見えました。
主題の曲想変化の妙というよりも、断片的なアクセントとその連鎖のように聴こえてくる。それはそれでお見事なもので印象的でした。

第25番
竹田さんが登場。今度は男の聴衆からほぉとため息がもれる。
シンプルな曲で両端楽章は楽しそうに弾いている。音楽もその通りにリズミックなもの。
中間の短調楽章が物憂げで印象的。ここらへんにも彼女の真価があるのではないか。


ということで、前半4曲、後半5曲。初日に続き今日もみなさんの素晴らしいベートーヴェン、堪能しました。
おわり

 


2327- エンペラー、ダグラス、広上、OEK、2017.5.3

2017-05-03 23:32:14 | コンサート

2017年5月3日(水) 5:15-6:05pm コンサートホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 皇帝 21-8+10′
  ピアノ、バリー・ダグラス

広上淳一 指揮 オーケストラ・アンサンブル・金沢


ガル祭2017より

威風堂々の演奏というよりもむしろ繊細でデリカシーに富むバリーのピアノ。マイペースから始める心地よい雰囲気。とにもかくにもここでこうやって聴ける幸せ。

オケ提示部の演奏をしっかりと見つづけるバリー。ここでイメージをつかんでいそうですね。線がやや細くコンパクトかなと感じる間もなく滴る第2主題、オルゴールのような響きに静寂が訪れる。この空気感、最高ですね。
第1楽章は進むにつれてジワジワと過熱。オケに埋もれないキリッと一筋芯の入ったバリーの妙技に悶絶。響きがホールにさえわたる。
アダージョ楽章のいつくしむようなバリエーション。ストイックなまでに沈み込みつつも淡々とプレイしていく。線の進行が心理的に積分されていってエモーショナルな味わいが、実際の響きとは別なもう一つの肌触りで迫ってくる。ここらあたり音楽を聴く醍醐味ですね。
上昇系の音形と、それに対になるように下降形の進行が、何度も繰り返されるソナタ形式。ピアノもオケも同じ具合に進む。リズミックを越えた激しい運動で、バリーと指揮者の呼吸が合致しているので最高の掛け合い。聴き応えありました。
ビューティフルで気品のあるエンペラー、素晴らしかった。ありがとうございました。

この日は、KSBエロイカ、高雄市響エグモント、そしてOEKエンペラー、3つのオケを一日で聴けた。お祭りのいいところですね。
エンペラーの伴奏をしたOEKが充実の演奏でした。これは指揮者の才覚によるところが大きいと思います。
おわり


2326- エグモント、ヤン、高雄市響、2017.5.3

2017-05-03 23:31:15 | コンサート

2017年5月3日(水) 4:00-4:50pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン エグモントより
響敏也 監修
エグモント物語   8-39′

ソプラノ、山口安紀子
ナレーター、風李一成
チーチン・ヤン 指揮 高雄市交響楽団


ナレーターによる説明付きの公演は以前一度観たことがある。
ソプラノ、キャスリン・バトル
ナレーター、ウェルナー・クレンペラー(オットー息子)
エーリヒ・ラインスドルフ
ニューヨーク・フィル
(ブログ未アップ)

今回の上演は、舞台を暗くして照明による稲妻効果を出させたり、エグモントの絵をしもてサイドに立てる、といった視覚的効果も狙っている。それにベートーヴェン風味のナレーターによる語り。ソプラノの歌は少ないけれども、ナレーターにあわせた感情表現がよくシンクロしている。以前観たものとは視覚の点において異なっていて、なかなかいい上演でした。
指揮者左にナレーター。右にソプラノ。

お初で聴く台湾のオーケストラ。まず、序曲での独特のアクセント、これは指揮者のものなのかどうかわかりませんが、ピリオド風に切っていくストリング、真逆のヘヴィーさで迫るブラス。なんだか、奏法がハイブリッドしている。劇に入っていくと気にならなくなった。
オケサウンドはそこそこの味わい。指揮者より手前に座っているナレーターと指揮者の呼吸が良く合っている。全くずれないぶれないもので相応のリハを積んだものと見えます。それにソプラノも劇の中に没頭しているし、みなさん呼吸の合ったノリの良いもので、劇の付随音楽を越えた充実の公演で大いに楽しめました。ありがとうございました。
おわり

 


2325- エロイカ、ブルンス、KSB、2017.5.3

2017-05-03 23:30:41 | コンサート

2017年5月3日(水) 2:45-3:35pm コンサートホール、石川県立音楽堂

ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調 エロイカ 16-15-6-11′

ユルゲン・ブルンス 指揮 ベルリン・カンマーシンフォニー


ガル祭2017より
初めて聴くオーケストラ、埃っぽくて、煮こごりのようなサウンド。分離がよくない。モノクロ色ですし。
カンマーと銘打っているのでストリングは相応な力かと思ったのだがそんなこともなかった。
初めて聴くコンサートホールですのでホールの特徴もありや、初めて尽くしで、そうでなくてもいまいち、いまに。エロイカを楽しむには至らなかった。
おわり